ギガントシャーク 第17話「香港の竜たち」
某日、香港の怪獣対策機構アジア本部にて開かれた会合でミスティがこれまでシャークとの活動の記録、そこから判明した怪獣たちの目的と行動原理などをを報告していた。ミスティが報告を終えると、他の科学者たちから拍手が巻き起こる。守護怪獣の代表格と行動を共にし、常に怪獣災害の現場にいた彼女は科学者たちの尊敬の的だった。
一方、シャークは香港市街の海辺で待機していた。特にすることもないので浅瀬に座っていると、シャークが来ているという噂を聞きつけた街の子供たちが駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ!本物のシャークなの?」
「おぅ。紛れもねぇ本物だぞ。どうかしたか?」
「悪い怪獣どこにいるの?」
「今日はツレの仕事でここに来ただけだ。怪獣はいねぇよ。」
「わぁ!本物のサメだ!」
子供たちが海面を覗き込み、シャークのお供のツマジロを見つけてそう言う。
「何だ?見たことねぇのか。」
「オーシャンパークで何回か見たけど、海にいるのは見たことないんだ!」
「前は市場にヒレ売ってたよね。」
サメは人類の守護者であるシャークの仲間として丁重に扱われるようになり、世界規模でサメの漁獲が禁止され、フカヒレが流通することはなくなっていた。
「サメが怖くないのか?」
シャークが尋ねる。
「これは小さいからいいけど、大きいのはちょっと怖いかな‥」
「オレ様という規格外のサメが目の前にいるのに何言ってやがる。」
「シャークは怖くないよ!だってみんなのヒーローだから!」
「おっ!何だお前らオレ様のファンってやつか。」
「うん!そんなとこかな。」
「テレビで見たよ!怪獣やっつけるとこ、すごくカッコよかった!」
「どうしてそんなに強いの?」
(豆ツブにどう思われてるかなんて気にしたこともなかったが‥悪い気はしねぇなぁ‥)
「ねぇ!触ってもいい?」
一人の少年がシャークの指先を指して言う。
「いいけどよ‥触ってもつまんねぇぞ。」
シャークは指を差し出す。
「わぁ‥ざらざらしてる!」
「僕にも触らせて!」
「わたしにも!」
シャークは子どもたちにここまで好かれているとは思っていなかった。ふと横を見ると、ペキニーズの仔犬を連れた少年が一際目を輝かせながらシャークの方を見つめていた。
「どうした?お前もファンか?」
少年はこくこくと頷きながら一層目を輝かせた。どうやらかなりの大ファンのようだ。
「よほどオレ様が気に入ってるみてぇだな。」
「うん‥エジプトでセベクをやっつけた時から‥」
どうやらTVで中継を見た時に一目惚れしたらしい。
「そりゃすげぇ!最古参ファンってわけか!」
「これ‥うけとってください‥」
少年は手紙を差し出した。シャークはその小さな紙を指先で器用に摘んで受け取った。
「おっ‥でもオレ様、スウガクとかいうギャグ以外の字は読めないからな。。後でツレに読んでもらうとするぜ。」
「ありがとう!」
少年はそう言うと頭を下げた。
「そんじゃお前ら、オレ様はこのへんで。またな!」
「うん!またねー!」
シャークは子どもたちに手を振る。
「おぅシャーク!子どもウケがいいじゃねぇか!」
ブレットが声をかける。
「ヒーローらしくなってきたな!」
マークが手を振りながら言う。
「ちょっとサービスしてやったぜ。あと、これを預かっといてくれ。古参ファンの坊主がくれたんだ。」
シャークは手紙をマークに渡すと、海辺ではしゃぐ子どもたちを遠目から眺めていた。その時だった。シャークは海の向こうから凄まじい殺意を感知した。香港の街を狙って何かが穏やかな海を波立たせて迫ってくる。
「あ、あれ‥」
海が大きく盛り上がり、巨大な生物が姿を現す。
ガギャァァァァァァァァァッ!
耳障りな咆哮と共に現れたのは真っ赤な甲殻に全身を覆われ、西洋の伝承に登場する竜のような頭部を持ち、両腕が甲殻類のハサミになった二足歩行の怪獣だった。竜とザリガニが合わさったような姿をしている。怪獣は子どもたちを視界に入れるや否や赤い大きなハサミを振り上げ、地面に叩きつけた。子どもたちは悲鳴をあげながら逃げ惑う。怪獣はハサミを振り回しながら泣き喚く子どもたちを恐怖に陥れた。
「この野郎!」
シャークが駆けつけ、怪獣を押さえつける。子どもたちはその隙に街の方に逃げていく。
ガギィィィィィィィィッ!
「その図体で子どもを潰そうってか?とんでもねぇ野郎だ。」
ガギャァァァァァァァァァッ!
怪獣はハサミでシャークの体を強く叩く。シャークは吹っ飛ばされ激しく水に叩きつけられて怯む。
ガギャァァァァッ!
続いて怪獣はハサミでシャークの脳天を殴り、ダウンさせる。怪獣は倒れて怯むシャークを一瞥すると、海に潜り香港市街に向かって泳いで行った。
香港に怪獣が上陸しようとしているという情報が本部にいるミスティに入ったのはそれからすぐのことだった。ただちに都市部全体に避難命令が出された。怪獣は都市部に上陸、破壊活動を開始した。巨大なハサミの一振りで高層ビルが紙細工の如くひしゃげ、潰される。
ガギャァァァァァァァァァァッ!
怪獣のハサミは次々とビルを真っ二つにし、そこら中の建造物を軒並み叩き潰していく。と、そこにシャークが登場した。
「このザリガニ野郎!今度こそぶっ飛ばしてやる!
シャークエナジーパンチ!」
シャークの電撃パンチが怪獣の胸を直撃する。シャークと怪獣の格闘が本格的に始まった。巨大なハサミの猛攻と連続電撃パンチが空気を振るわせる。と、その激闘の場の近くに何人かの男女が現れた。
「シャーク君!怪獣への暴力を直ちにやめ、海に帰りなさい!この怪獣は私たちが説得する!」
禿げ上がった頭の男がメガホンを持ってそう言う。アイスランドでシャークとコーゴイルとの戦いに割って入った怪獣愛護を掲げる団体「フレンズ」の代表ジャレット・ハーディガンである。今日は数人の構成員を連れており、皆
「わたしたちは地球の家族」
「怪獣も人間もみんな友達」
「戦いを止めて手を取り合おう」
「一緒に遊ぼう!」
「あなたの声を聞かせて」
などと書かれたプラカードを持っている。
「おいアホハゲ!潰されても知らねぇぞ!」
シャークは足元のジャレットたちに怒鳴りつける。怪獣の方は彼らに目をやると、戦いを中断し、その方に向かって歩き出し、のぞき込むようにジャレットたちを見つめた。
「見ろ!対話の意思があるようだ!」
ジャレットは嬉しそうに言う。
「はじめまして怪獣さん。私たちのことが、人間の街が怖くて、不安だから暴れてるんだよね。」
メンバーの女性が優しく語りかけるように言う。
「大丈夫だよ。僕たちは味方。君の友達。だから怖くなんてないよ。」
若い男が「こわくない、こわくない」と書かれた看板を掲げながら言う。
「そうとも。友達同士、地球に生きる命同士、穏やかに共存しようじゃないか。」
ジャレットがそうまとめ上げる。怪獣は何もせずにその様子を見ている。
「うっとり聞いてるぞ!」
「ついに怪獣と友達になれるのね!」
女性が感涙しながら言う。
「感無量だ‥」
ジャレットは感極まった様子で呟く。しかし次の瞬間、怪獣は顔を上げ、ジャレットの頭上のビルに鋏を振り下ろした。
ガギャァァァァァァァァァッ!!
ジャレットたちに瓦礫が降り注ぐ。彼らは慌てて逃げ出す。怪獣は何度もハサミを地面に叩きつけ、逃げ惑う彼らの様子を楽しむ。シャークが怪獣の体を掴んで止める。ジャレットはなんとか難を逃れた。しかし‥
「いゃぁぁぁぁぁぁっ!」
「助けてくれぇ‥」
瓦礫に足を潰されて呻く青年。その恋人らしき女性も腕にガラスが突き刺さっている。転んだ拍子に足を折った者や全身にガラス片が食い込んでいるものもいた。皆何かしらの傷を負っており、あたりは惨憺たる状況だった。
ガギャギャギャギャギャ!ギャーッギャッギャッ!
怪獣は苦しむ人々を見て体を大袈裟に振るいながら嘲笑うような鳴き声を出した。
「なぜだ‥」
ジャレットが言う。
「これで分かったかクソハゲ野郎。外道怪獣とはこういう性根の腐ったヤツらだ。」
「どうしてもっと早く私たちを助けなかった!」
「勝手なこと言ってんじゃねぇ!お前らが自分からやったことだろうが!」
「私は怪獣が本当はいいヤツだと信じてるんだ!歩み寄ろうとすることの何が悪い!」
「本当にいい怪獣はな、わざわざ地上を攻めたりしねぇんだよ!」
ジャレットは黙ってしまう。その後、ミスティに連絡が入った。
「市街中心部にて、個体識別名「ガニリュウ」の攻撃による民間人の負傷者数名を確認。自然保護団体のメンバーとのこと!至急救助ヘリを向かわせます!」
ジャレットと負傷者たちはヘリで運ばれていく。シャークはそれを呆れ返った様子で見つめると、怪獣ガニリュウの方に向き直った。しかし、ガニリュウはなぜか海の方を向く。そして
ガギャァァァァァァァァァーン!
大きな声で咆哮する。すると、また海が波立ち、海面が盛り上がり。巨大なしぶきが上がる。
フシュルルルルルルルルルル!
もう一体の怪獣が出現した。全体的なシルエットは亀のそれで、ゴツゴツとした突起に覆われたワニガメのそれに似た甲羅や硬い鱗の生えたがっしりした手足、長い首の先には毒蛇のような恐ろしい顔がついており、二本の長い牙が口から覗いている。
ガギャガギャガギャガギャガギャ‥
「お仲間を呼びやがったな‥」
シャークは憎々しげに言う。
亀型の怪獣は上陸し、のしのしと街を闊歩してガニリュウと合流した。
ガギャァァァァァァァァァァァ!
フシュゥゥゥゥッ!
二体は咆哮を上げ、シャークに向かってきた。亀型の方が首を伸ばし、シャークの肩に噛みつき、そのままビルにぶつける。
「ぐわーっ!」
シャークが叫ぶ。亀型の怪獣は自在に首を伸ばし、シャークを鋭い牙と頑丈かつ柔軟な顎で振り回した。シャークを何度か弄んだ後、二体は建物を蹴散らしながら街を進んでいく。そして一人逃げ遅れた少年を見つけた。ペキニーズの仔犬を抱いている。あのシャークのファンの少年だ。ガニリュウ出現時に子供たちと一緒に逃げ出し、親と合流できたのはよかったが、その後逃げ惑う群衆に揉まれてはぐれてしまった。避難所の場所もわからずに泣きながら歩いていたところを二体に目をつけられた。
フシュシュシュシュシュ‥
亀型の怪獣ー「ジャゲンブ」と名付けられたーは首を伸ばし、少年を丸呑みにしようとする。少年の前に巨大な口が迫ってくる。少年の顔が絶望に染まる。と、その時、少年の前に巨大な影が立ち塞がった。
「逃げな‥坊主‥犬コロを離すなよ‥」
シャークが身を挺してジャゲンブの頭を押さえつけていた。手のひらには牙が貫通していた。
フシュゥゥゥゥゥゥゥゥ‥
「絶対に行かせねぇ‥」
シャークはジャゲンブの頭を押さえつけて、必死に制止しようとする。しかし、彼はジャゲンブを押さえつけるのに必死で、後ろからくるガニリュウに意識を向けられていなかった。ガニリュウが背後からシャークの頭部にハサミを叩きつける。
「ぐっ!」
頭部を殴られたショックでよろめくシャーク。ジャゲンブを押さえつけていた手が離れてしまう。ジャゲンブは再び首を伸ばし、懸命に逃げる少年に狙いを定めた。そして
バクン!
その顎を閉じると、飲み込んでしまった。地面には仔犬だけが残され、怯えながら吠えていた。
ガギャガギャガギャガギャ!
体を揺すって笑うガニリュウ。
フシュシュシュシュシュ‥
シャークはそれを見て、顔に怒りを露わにした。
「この野郎!」
シャークはジャゲンブに殴りかかろうとするが、そのロレンチーニはジャゲンブの喉元にある袋の中で少年がまだ生きていることを感知した。ジャゲンブは少年を人質にとったのだ。電撃による攻撃ができないように。
「クソッ‥またか‥また‥オレ様は何もできねぇのか‥」
シャークは遥か昔の白亜紀、自分がまだ普通のサメだった時のことを思い出していた。彼は元々、群れで狩りをする社会性の強いサメだった。彼が群れの仲間と過ごしていた当たり前の日々は突然終わった。Kエナジーが地球各所で増幅、地上掌握を目論む怪獣たちが地下から現れ、地上の生物も次々と怪獣化していく。陸海空に蔓延るようになった怪獣たちは怪獣になれなかった通常の生物を食らい、玩具にした。シャークがいた群れもその脅威から逃れられなかった。顔馴染みの親友も、頼れる兄貴分も、密かに想っていた雌も、一瞬にして傲岸不遜な巨獣たちの口の中に消えていった。そしていつもシャークだけが生き残ってしまった。彼は何もできない自分に絶望し、深海を彷徨っていたところでKエナジーの光を浴びたのだ。彼は怪獣として覚醒し、知能も飛躍的に向上した。シャークをこの絶大な力を暴虐の限りを尽くす怪獣たちに抵抗することができない生き物たちを守るためだけに使おうと誓ったのである。
ジャゲンブは攻撃しようにもできないシャークを一瞥すると、長い首で街を見渡した。そして逃げ遅れた親子を発見した。ジャゲンブに睨まれた母親と少女の体が恐怖で硬直する。
フシャァァァァァァァーーーッ!
ジャゲンブは首を伸ばし、親子を食らおうとする。シャークは再び身を投げ出し、親子の前に立ち塞がる。苛立ったジャゲンブはその胴体に何度も強く噛みつき、ガニリュウがハサミでその体を打つ。それでもシャークは決して体制を崩さなかった。そして母娘に逃げるように促す。
「オレ様は動かないぞ!何をされようと絶対にな!」
二体はシャークを痛めつけ、そのたびに笑うような鳴き声を立てる。
「笑いたきゃ笑えよ‥クソどもが‥」
シャークが言う。
ガニリュウがその体に蹴りを入れる。
ジャゲンブが首を伸ばして頭突きを見舞う。シャークはそれでも動かない。
「お前らに抗えないちっぽけな奴らを、立ち向かうだけの力がない奴らを守らなけりゃ‥」
二体の攻めはより激しくなる。
「オレ様がこの力を、このデカい体を手に入れた意味がねぇ!」
シャークはそう啖呵を切る。しかし、ガニリュウのハサミに体を強く殴打され、膝から崩れ落ちてしまう。
「ぐはっ!」
二体がとどめを刺そうとしたその時、上空から何かがしなるように降りてきて、ガニリュウの首に巻き付いた。
ガギャッ!
それは黄色い触手だった。触手はガニリュウの首をガッチリと押さえ、その体を後ろに押し倒すと、首から離れた。ガニリュウはハサミを振りながらじたばたしている。ジャゲンブがガニリュウの方に向かおうとすると、空から何かが降りてきて、ジャゲンブの顔に黒い液体をかける。
フシャァァァァァァァァァッ!
ジャゲンブの視界が真っ暗になり、その巨体がふらつく。倒れたシャークの前に巨大な翼のついた影が舞い降り、土煙を立てて地面に着地する。
「待たせちゃったね。シャー君。」
鈴が鳴るような黄色い声。澄んだ青く丸い目がシャークを見つめる。
「タコッピ!」
シャークの顔が明るくなる。シャークの旧友、ギガントオクトパスがシャークのピンチを察知して駆けつけたのだ。
「さぁ立って!あんな奴ら、ぱぱっとやっつけちゃお!」
「おう!」
シャークは差し出されたオクトパスの腕を掴んで立ち上がる。二人が手を握り合った瞬間、お互いのKエナジーが混じり合い、シャークの力が大きく回復した。周囲に凄まじいエネルギーが満ち、シャークの周囲には青い電気が、オクトパスの周りには強風が発生した。稲妻とともに雷鳴が轟き、大風が巻き起こる。
グォォォォォォォーーーッ!
ピキュゥゥゥゥゥゥゥーン!!
シャークとオクトパスはエネルギーの昂りで高揚し、久しぶりに天に向かって咆哮した。
ジャゲンブとガニリュウがその気迫にたじろぐ。
「さぁ行くよ!」
「待ってくれ。実は‥」
シャークはジャゲンブが少年を生きたまま飲み込んでいることを伝える。
「オッケー!その子はわたしが助けるから、シャー君はあっちのザリガニもどきをお願い!」
「了解だぜ!」
こうしてオクトパスvsジャゲンブ、シャークvsガニリュウの決闘の火蓋が切られた。
フシュゥゥゥゥゥゥーッ!
ジャゲンブが突進してくる。オクトパスはぐわっと開いた口めがけて触手を伸ばし、口の中にねじ込む。触手を使って少年を救出しようとしているのだ。ジャゲンブは手足をじたばたさせる。
「暴れないの!大人しく人間さんを返しなさい!」
オクトパスの触手はジャゲンブの喉の奥に到達する。
「さぁ、これにつかまって!」
オクトパスがそう言うと、触手の先を小さな手がぎゅっと掴んだ。オクトパスはそのままずるずると少年を引き上げる。やがて少年の体がジャゲンブの口から引き摺り出された。オクトパスは少年の体にやさしく触手を巻きつけ、地面に置いた。少年は粘液まみれで息も絶え絶えだったが、なんとか立ち上がり、駆け寄ってきた仔犬を抱えた。そこに救助ヘリが現れた。オクトパスが少年の位置を触手で指すと、ヘリが地面に降り、少年を運んで行った。見るとヘリが逃げ遅れた人々の避難誘導をしていた。これでシャークたちは安心して戦える。オクトパスはジャゲンブの方に向き直る。ジャゲンブは喉に触手を突っ込まれたせいでしばらくえずいていたが、大量の粘液を吐き出した後ですぐに体勢を立て直した。
フシュゥゥゥゥゥゥーッ!
ジャゲンブはオクトパスめがけて首を伸ばしてくる。オクトパスは触手を伸ばしてジャゲンブの顔に巻き付ける。そしてそのまま翼を開いて飛び上がり、ジャゲンブの体を一回転させて地面に叩きつける。
「オクトパス回転落とし!」
フシャァァァァァァァッ!
ジャゲンブはダウンするがまたすぐに起き上がる。そしてオクトパスに向かって首を何度も伸ばすが、オクトパスは柔軟な体で全てを受け流し、回避する。しかし、一度避け損なってしまい、足を噛みつかれてしまう。ジャゲンブはオクトパスの足を咥えたまま地面に叩きつけようとするが、彼女はそれを逆手にとり、翼を広げてジャゲンブを宙に持ち上げ、柔軟な足を大きく上に上げる。ジャゲンブはその衝撃で思わず口を離してしまう。その隙をついてオクトパスは翼をはためかせ
「オクトパスウィンド!」
風を巻き起こす。ジャゲンブは大きく飛ばされていき、海に着水した。
一方のシャークもガニリュウと死闘を繰り広げていた。連続ハサミ攻撃を拳で受け止める。ガニリュウはハサミを大きく後ろに引き、加速をつけて殴ってくる。シャークも拳を帯電させ、勢いよく殴りかかる。両者のパンチがぶつかり合い、空気が振動する。押されたのはガニリュウの方だった。シャークは拳を帯電させたままガニリュウの下顎にアッパーカットを見舞う。
「シャークエナジーアッパー!」
ガニリュウが大きく怯む。しかしすぐに加速をつけたハサミでの強力なストレートパンチを繰り出す。シャークはそれを手のひらで受け止める。やがて連続パンチの応酬が始まる。シャークはガニリュウの胴体に電撃パンチを打ち込み、ガニリュウがシャークの体をハサミで滅多打ちにする。シャークはガニリュウを離してしまうが、すぐに距離を取り、手に電気エネルギーを溜める。
「シャークエナジーボール!」
電気の球が飛び交い、ガニリュウに衝撃を与える。怯んだガニリュウの隙をつき、拳を構えて
「ライトニングストレートシャークエナジーパンチ!」
雷鳴と共に稲光が走り、超高速のストレートパンチがガニリュウの腹に直撃する。そしてふらついたガニリュウの胴体を掴み
「シャークバックドロップ!」
強烈なバックドロップを見舞う。
ガギャァァァァァァァァァッ!
シャークはガニリュウをもう一度持ち上げ、二度目のバックドロップをお見舞いする。ガニリュウは目を回しながらも起き上がった。シャークはそこに連続パンチを見舞って凄まじい力で海まで押し出した。そしてガニリュウもジャゲンブの近くに着水した。シャークとオクトパスは場所を海辺に移す。
フシャァァァァァァァッ!
ガギャァァァァァァァァァッ!
海上で怒り心頭のガニリュウとジャゲンブはシャークたちを睨みつける。ガニリュウが飛沫をあげてシャークに突撃してくる。ハサミパンチがシャークめがけて飛んでくるがシャークはこの攻撃に順応していたため、すぐに受け止められてしまう。二体は地団駄を踏みながら悔しそうに吠える。
「やるよ!シャー君。準備はいい!」
「おうよ!」
シャークは背鰭と口内を光らせ、オクトパスは羽を大きく広げる。
「「怪獣友情奥義!」」
二体は同時にそう叫ぶ。シャークはシャークサンダーを、オクトパスはオクトパストルネードを繰り出す。青い雷の光線と大竜巻が混じり合い、雷を伴う規格外の竜巻が巻き起こる。
「「シーモンスタートルネード!」」
これこそが固い友情で結ばれた守護怪獣同士の合体技、怪獣友情奥義である。巨大な竜巻は二体の悪の怪獣を巻き込み、空中へと巻き上げる。そして竜巻の中で青い光が走り、エネルギーの大爆発が起きる。二体が空中で爆散すると同時に竜巻も消滅する。
「決まったぜぇ!」
「ばいばーい。」
二体は同時に決め台詞を言う。
その後、シャークとオクトパスは怪獣の残骸を拾い集める。
「おっ!これは食えるヤツかもしれねぇ!」
「こいつら食べられるの?」
「あぁ!料理すればな。」
「リョウリ?」
「タコッピは知らなかったな。豆ツブどもの魔法だ。ちょっとの手間でうまいものがもっとうまくなるんだ。」
「何それ!楽しそう!」
「だろ。早速準備しようぜ!」
シャークは調理船を香港近海に配備させ、大量の小麦粉を固めて生地を作り、甲板に盛大に打ち粉をして、生地を打ち付けはじめた。そして巨大包丁でそれを刻み、鍋で茹でる。さらにガニリュウ、ジャゲンブの破片を煮込んで出汁をとる。ガニリュウの鋏、ジャゲンブの前足を茹で、麺と一緒に巨大などんぶりの中に入れた。
「これがラーメンだ!すごいだろ!」
「わぁ‥」
オクトパスは目を輝かせる。クジラや古代の大アサリを生で食べることしか知らなかった彼女にとって料理された食材は新鮮だった。
「じゃあ食うぞ!」
シャークたちは巨大な橋を手に取り、麺をすすった。
「こりゃいける!」
「おいし〜っ!」
オクトパスはかつてないほど幸せそうだった。シャークはガニリュウの鋏を剥き、中の身に食らいつき、オクトパスはジャゲンブの前足に嘴で齧り付く。二匹とも夢中で食べていた。死闘の末倒した強敵の味は何者にも変え難いものだった。
その後、シャークはあの少年からの手紙をミスティに読ませた。
「ギガントシャークさんへ
はじめてわるいかいじゅうをやっつけたのを見たときからあこがれていました。どんなこわいかいじゅうにもかっこよく立ち向かうすがたを見てから、よるもひとりでねむれるようになりました。シャークさんのことをおもいだすだけでゆうきがわいてきます。おくびょうだったぼくにゆうきをくれてありがとう。これからもかいじゅうからみんなをまもってください。 〇〇より」
シャークはそれを聞いて自分が頼られる存在であり、地上を、か弱きすべての命を持つものを守る守護怪獣としての使命を深く実感した。そしてまだ見ぬ強敵たちが待つであろう海の向こうを見据え、決意を新たにするのであった。
