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人生おしまいの日、恋人じゃないきみに頼みたいこと。

12月ってやはりまとめのシーズンであって。

この1年のまとめもそうだけど。

わたしじしんのまとめみたいなことも

ちらちら考えてしまう。

家族をあらたに作ってこなかった

ということは自然におひとりさまになる

わけだけど。

じぶんがそうなるときのことって、

あまりに深遠すぎて想像がつかない。

この間無性に読み返したい小説があって

読んでいた。

わたしの大好きな作家絲山秋子さん。

『沖で待つ』はまさに、じぶんがおひとりさまに

なった後ってどうなるんだろうって

想っていたときに読んでいた短編だった。

なぜかこれだけは文芸誌の切り抜きで

ずっと持っている。

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及川さん(私)と同期の太っちゃん。

住宅設備機器メーカーに就職したふたり。

恋愛じゃないし、友情だけど。

男女とか性とか、なにも感じないぐらいの

風通しのいい関係。

入社以来はじめての配属地が福岡である

というきっかけがあって、知り合ったふたり。

なにかと助け合って生きている。

太っちゃんがインフルエンザで40度近い

熱を出した時も、現場まで及川は彼を

乗っけて現場まで急ぐ。

その時の及川のモノローグがいい。

仕事のことだったら、そいつのために何だってやる。
同期ってそんなものじゃないかと思っていました。

及川の言葉がそこにあった。

同期という世界をわたしはよく知らないけど。

その小説に描かれた及川と太っちゃんの

関係にちょっと憧れがある。

わたしがはじめて務めた会社は同期

という感覚からは遠い環境だったので、

その感覚はよくわからない。

主人公の及川と太っちゃんたちの

ふたりという単位、それも信頼という

名でつながっているふたりってとても最強

だなって思った。

仕事の同期って、たいていライバルに

なるだろうに、その中で友達をみつけるって

そして信頼でつながることのできる人を

みつけられるって、わたしにとっては

とても神秘だ。

そして出来事はなにもかもが時に

唐突にやってくる。

太っちゃんは巻き添えにあい死んでしまう。

まだ元気だった時に太っちゃんは

互いの秘密について「協約むすぼうぜ」と

及川を誘う。

秘密ってなんの?

って思っていたら

先に死んだ方が相手のパソコンのHDD破壊するのさ。

太っちゃんが自信満々に言う。

及川は、まあいいよとその誘いに乗りながらも

データをごみ箱にいれるぐらいじゃ

データって残ってるしねって太っちゃんに

説得される。

そして何より及川を選んだのは、ぜったい

自分のパソコンの中身を知らないまま破棄

してくれていると信じていたからだった。

遺産データのソフトについても太っちゃんは

怪しんでいて。

じゃあどうするかっていうと。

ハードディスクってパソコンの中の

お弁当箱みたいなもの、それがたぶん

真空になってるから、それ傷つけておけば

たぶんパソコンは立ち上がらないだろう

という算段で。

真空を破るために太っちゃんが及川に

送ってきたのが星型ドライバーだった。

密閉されたパッケージを開けたら当然空気が
入るだろう。シュッていうかパコっていうか
わからないけれど、それってすごくよくないか?

星型っていうところ、+とか-じゃなくて星って

いうところが絶妙だなって思う。

そして異様に真空を信じている太っちゃんの

無邪気さが好きだ。

無邪気な人ほど早く死んでしまうのか

どうかわからないけれど。

協約が果たされる日がやってきて及川は

太っちゃんの一人で住んでいた部屋に

向かう。

実際は、太っちゃんのいう真空は

存在しなかったけれど。

HDDの中には銀色の円盤が入っていた。

それをみた時の及川のモノローグ。

これが死なんだ。と思いました。
すべてを拒否するように眩しかったからです。

小説って、文字って凄いなって思った。

文字しかそこにはないのに、静けさを

感じていた。

銀のディスクの中にはおびただしい言葉も

映像もいかがわしい画像も音楽もすべて

つまっていたはずなのに、最後は

静けさしかつれてこないのかと。

そして及川はすべての約束を果たした後で

ひょんなことにこんな太っちゃんの詩に出会う。

俺は沖で待つ。小さな船でおまえがやって
来るのを
俺は大船だ
なにも怖くないぞ。

やっちまいました。

すごいさらされている。

あんなに秘密のつまってるパソコンを

処分してくれって用意周到だったのに。

奥さんへの愛の詩を書いた手書きの

ノートはぬかったのかそのままだったので、

後日奥さんにみつかってしまう。

お別れの会で及川もそれをみてしまう。

そういう抜けてるところが愛すべき存在

だったんだろうなって追想する。

わたしの好きな太っちゃんのエピソード。

お客さんへの納品をなんとしても

間に合わそうと寒い日に和風便器を

ぶらさげて福岡一の繁華街を走っていた

太っちゃんが目に浮かぶ。

目撃していたかのように目に浮かぶ。

読み終えてわたしもこんなに日々noteを

書いているから秘密もないような

ものだけど。

人生でたったひとりでいいから及川にとっての

太っちゃんのような誰かに出会えれば

いいんんだよなって、すんと静かな心で

そんなことを思っていた。

かくすほどの こともないんだけど ひみつがある
そんなきがして そのことが 思いだせない だけなんだけど 


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ゼロの紙 /歌人 いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊