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激写?

ある夜のこと。
標高1,130mのわが家にはエアコンがなく、暑い日だったのでベランダに面した窓を網戸にして開けていました。
山の中だし、ベランダの向こうは自宅の庭で、敷地内は木々の葉が生い茂っているし、そもそもこんな森の中を夜間に通るのは野生動物くらい。
だから、外は暗かったけれどカーテンなんて引かずに、ベランダ沿いの大きな開口部を網戸で全開にして、高原のひんやり夜風を室内へと取り込んでおりました。

リラックスモードのわたしは、Tシャツに着古したユニクロのリラコという出で立ちで、ビールを片手に楽しみにしていた録画番組を再生。
1人掛けソファーにふんぞり返って片足の膝を立てるというだらしのない体勢で、テレビ画面ではクライマックスの面白シーンに入りまして、ニヤニヤしながら画面を凝視していたその時。
網戸の向こうの暗闇で、「カシャッ‼」とカメラの撮影音がしました。

(え! え! 何? 誰⁈)

ギョッとして網戸の奥の暗闇を見つめるわたし。
(マズイ、今ワタシすごく間の抜けた表情してたはず! 超面白いシーンだったから)と狼狽し、恐る恐るベランダ前の窓へ顔を近づけて引き続き網戸越しにそぉ~っと闇の奥を見つめます。

誰かがいる気配はありません。
(フラッシュは光らなかったな。ああでも、こっちが明るいからフラッシュ必要ないか……)と考えながら、今さら遅いけれども一応カーテンを引こうと手を延ばした時、目に入りました。
ベランダの床の上に、ひっくり返ったセミ1匹。
そしてそのセミが、仰向けのまま「カシャッ‼」とさっきと同じ音をさせてジタバタと動いたのです。

セミかー!
シャッター音だと思ったのは、いまわの際のセミが発した音でした。
セミって弱ってくると仰向けになって、死んでるのかなと思うと唐突に羽をばたつかせて「カシャッ‼」って動くんですよね。
それでした。
いやあ、てっきり盗撮されたのかと思っちゃいましたよ。
完全に無防備な状態で、しかも誰にも見られたくないゆるんだ顔をした瞬間だったので。

その後帰宅した夫にその顛末を報告すると、「自意識過剰なんだよ。バカなんじゃない?」と一言。
ハイハイ、スミマセン。その通りでございますよ。
50半ばのただのオバサンの半笑い姿なんか、激写する価値はありませんな。

どこまでも自意識過剰のわたしです。




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