私とスコーンの話
私が初めてスコーンを食べたのは、24歳くらいの頃だったと思います。
それまで私は、スコーンという存在すら知りませんでした。
どうして知ったのかというと、お菓子を作ってみたくて買った一冊の本がきっかけです。
ケーキのようにクリームを作ったり、チョコレートを湯煎したりする工程がなく、「これなら私にも作れそう」と思ったのがスコーンでした。
でも実際に作ってみると、意外と面倒。
しかも、そのレシピにはサワークリームが入っていて、わざわざスーパーまで買いに行かなければ作れませんでした。
それでも焼き上がったスコーンは、本当に美味しかったんです。
今となってはどんな味だったのか思い出せません。でも、その時に私の中で
「スコーン=美味しい」
というイメージができあがりました。
それから何年かして、鹿児島県知覧町にある、イギリスの二階建てバスがあるカフェへ行きました。
もちろん注文したのは、紅茶とスコーン。
あの時の雰囲気も含めて、とても幸せな時間だったことを覚えています。
その後も横浜元町のカフェや、デパートに期間限定で出店する有名店など、スコーンを見つけるたびに買っていました。
でも、不思議なことに、だんだん「美味しい」と思えなくなってきたんです。
粉っぽくて、バターの香りもあまり感じない。
たくさんの人が並んで買う人気店なのに、私の好きなスコーンとは少し違いました。
「だったら、自分の好きなスコーンを作ろう。」
そう思って試作を始めました。
私が好きなのは、表面がゴリッと香ばしく焼けていて、噛んだ瞬間にバターの香りが広がるスコーン。
中はしっとりしていて、水分がなくても美味しく食べられるようなもの。
そんな理想のスコーンを目指して、何度も焼きました。
ところが、家庭用のオーブンレンジでは、どうしても思うような食感になりません。
そこで目をつけたのが、ガーネットオーブンでした。
家庭にもギリギリ置けるくらいの業務用電気オーブンです。
当時の私は、スコーン専門店か、スコーンが主役のカフェをやりたいと思っていました。
だから旦那さんに一生懸命プレゼンをして、購入をお願いしました。
今でも、そのガーネットは私の大切な相棒です。
同じレシピなのに、焼き上がりはまるで別物。
理想だった「ゴリゴリ」の食感になった時は、本当に嬉しくて、何度も焼いては食べていました。
でも、人って贅沢ですね。
今度は、
「もう少ししっとりしていたら、もっと好きかもしれない。」
そう思うようになりました。
ある日、家にあったマスカルポーネをなんとなく加えて焼いてみました。
すると…
「何これ!」
思わず声が出るくらい美味しかったんです。
外は香ばしく、中はしっとり。
まさに私が探していたスコーンでした。
この記事を書きながら思い出したのですが、私が初めて作ったスコーンにもサワークリームが入っていました。
もしかしたら、マスカルポーネはあの時と同じような役割をしてくれたのかもしれません。
理由はわからないけれど、あの日からこのマスカルポーネ入りスコーンは、私の定番になりました。
少し大げさかもしれませんが、私の中では
「どこのお店よりも好きなスコーン」
です。
カフェを開いていた頃は、おやつとしてたくさん焼いていました。
今はもう、あの頃のように大量に焼くことはありません。
それでも、ときどき家族のために焼くスコーンは、やっぱり特別です。
24歳の頃、一冊のお菓子の本から始まったスコーンとの付き合い。
気がつけば、私の人生のそばには、いつもスコーンがありました。
これからもきっと、家族と一緒に食べるためのスコーンを、焼き続けていくんだろうなと思います。
そして、いつの日か、私の秘伝のスコーンの^^レッスンもできたら良いなぁと思っています。
レシピは、完成形ではなく始まり。
私も誰かのレシピから始めて、少しずつ「私の好き」を見つけてきました。
だから教室でも、レシピはそのまま作って終わりではありません。
「私はこんなふうに作ってみたよ。」
「こっちの方が家族が喜んでくれたよ。」
そんな一皿が生まれたら、ぜひ教えてください。
私は、そんな話を聞く時間が大好きなんです。
小さなキッチンで料理教室をやっています。
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