雑記:高市首相が北欧モデルを検討か……?
高市首相が買春行為の法規制に乗り出したらしく、物議を醸している。
高市首相は衆院予算委で、売春の相手方となる買春行為に対する法規制に関し「規制の在り方について、必要な検討を行うことを法相に指示する」と述べた。
正直、これだけの内容では何も分からない。だが、おそらくは以下の塩村氏の質疑を踏まえたものと思われる。
立憲民主党の塩村文夏参院議員が「外国人観光客による買春が横行している」と指摘。「日本は女性の尊厳を守らない国というイメージが国際的に広がりつつある」と訴えたのに対し、首相は「大変重いご指摘として受け止めた」と述べ、今後、検討する考えを明らかにした。
(具体的な質疑は塩村氏のYoutubeチャンネルで確認できる)
私は個人的に塩村氏のことを一定度評価しているのだが、塩村氏に対しては北欧モデル推進派が接近しており、誠に残念ながら塩村氏自身も北欧モデル推進に傾いているように思われる。北欧モデルとは「売春側を処罰せず、買春側を処罰する」法規制方針を指す。
優良部分に「搾取側の詭弁をフランスは見抜き、買う側にも罰則を課して法制化」された内容があるのでプレゼント機能を使いました。
— 塩村あやか🐾参議院議員(東京選挙区) (@shiomura) May 11, 2024
有料記事がプレゼントされました!5月12日 23:37まで全文お読みいただけます。
買春が犯罪になったフランス 猛反発越えめざした「女男平等」の原則:朝日新聞デジタル…
(もっと直接的に言及しているポストがあったと思うが見つけられなかった。フランスは北欧モデルを導入した国家の一つである)
北欧モデルは一見すると「売る側」(主に女性)に優しい政策に見えるが、実際に実施されるとセックスワーカーがより危険な状況に追い込まれると言われている。当たり前だが、「犯罪だと知りながらも女を買いたい」危険な男しか顧客に残らなくなるからだ。その他にも様々な問題が指摘されており、アムネスティ・インターナショナルも「北欧モデルを支持しない」と明確に宣言している。
しかし、こういうのは、当然、意見が別れるものだ。「北欧モデルは効果がある!」と言う人も、「いや、ない!」と言う人もいる。これらの議論のまとめは手嶋氏のnote記事に詳しい。
つまり、今回、塩村氏は「日本の国際的評価の低下」「犯罪グループへの資金流入」という観点から、フリーのセックスワーク(立ちんぼ)の根絶に乗り出していると言える。そして、塩村氏が言う「国際基準に沿った規制導入」とは、おそらく北欧モデルを意図しているのだろう。高市首相の答弁は「北欧モデル導入に前向き」と考えておいた方が良い。
確かに、「犯罪グループへの資金流入」という点は軽視できない。これはおそらく、外国人観光客に立ちんぼを斡旋する過程で、紹介料・斡旋料が発生し、それが反社会的勢力に流れている、という認識であろう。だが、買春側を犯罪化することで、この問題が直ちに解決するかは疑問だ。むしろ犯罪化することにより、さらに「本職」の領分に近付いてしまうのではないかと懸念する。この点をどうすれば解決できるのかは、私にもすぐに答えは出ない。
また、ここからは私としても意見がまとまりきっていないのだが、立ちんぼ(フリーのセックスワーカー)に本当に問題があるのかどうかも難しいラインだと思う。本人たちの自己決定権にも関係するが、店舗に所属するセックスワーカーに比べて、彼女たちの方が「独立している」と言えなくもないのだ。
仮に「プロ意識を持つフリーのセックスワーカー」がいたとすれば、彼女は自身の裁量で健康や安全を管理しつつサービスを提供していることになる。それは仕事の業態がセックスワークであるだけで、尊重されるべき一人の職業人の態度と言うべきだと私は思う。だとすれば「セックスツーリズムによる日本の国際的評価の低下」などは、特定職業に対する職業差別のあらわれに過ぎないので無視するべきであろう。
もっとも、これは理想的な話であって、実際の立ちんぼたちがどこまで自己裁量権を発揮し、プロ意識を持って仕事に当たっているかは分からない。ここがセックスワークを考える上で難しい点であって、実際にはプロ意識を持つ人も、「搾取」状況とみなすべき人もいる。前者がいることも確実なので、全員をひっくるめて後者とみなして「可哀想な人たち」扱いすることには私は強く反対する。だが、後者の人たちを「自己責任」の名の下に放置して良いとも思わない。
北欧モデルは前者の人間も含めて、全てのセックスワーカーを干上がらせる可能性がある。そして、彼らが救われるかは分からない。彼女たちには何らかの「まっとうな仕事」に就くための支援が与えられるのだろうが、それが生活を以前よりも上向かせるのかは微妙なところである。仮に「プロ意識を持ってセックスワークを遂行できる」人であったとしても、「決まった時間に就業して一定の作業を毎日こなす」ことができるかどうかは別問題だ。人間にはどうしても適性というものがある(私も作家としては一定度の業務遂行能力を持つと自負するが、勤め人として定時出勤し、会社の要求に応え続けられるかと言われると、いまいち自信がない)。
*
私は個人的には、北欧モデルには警戒的である。むしろ、セックスワークの非合法化の方が「丸い」のではないかと考えている。しかし、仮に北欧モデルなり非合法化なりを導入するのであっても、まずは手嶋氏の提唱するように基礎調査から始めるべきだと考える。
日本における「売春」とは「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」(なお、性交とは「女性器に男性器を挿入すること」を指す)である。
したがって、性交を伴わない性的サービス(手や口、胸を使う等)は原則として「売春」から外れる上、また性交があったとしても、「性交に対する支払いではなく、好意によるプレゼントである。」「突発的な恋愛感情が生じた具体的な相手との性交であり、不特定の相手ではない。」といった逃げ道が存在する。
むろん、このような認識のもとで、まともな売買春に関する統計データがあるはずもない。セックスワークの当事者は何人いるのか、どういった被害があり、どういった支援を必要としているのか。何もかもが不明である。
ここで急に北欧モデルや非犯罪化モデルを採用しても、前後での比較ができず、結局、当事者を助けたのか余計に苦しめたのか分からないという結果になる。「改正」で事後的に対処しようとしても、その方向性も定まらない。
北欧モデルや非合法化を導入するにしても、その前後でどのように状況が変化したかを確認し、必要に応じて修正や撤廃をすべきであろう(我が国ではこれがほとんど絶望的なのだが……)。「よくわからないけど、やってみよう!」といった軽挙妄動ではなく、まずは信用に足るデータを国が揃えるべきだ。
また、セックスワークに関しては各国が「非犯罪化」「合法化」「北欧モデル」などの様々な方針を試行中である。我が国は基礎調査と合わせて、まだしばらくは様子を見て、各国の顛末を待った方が良いと思われる。
(おまけ)
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
