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【秋ピリカ応募】パー子先生


パー子先生は、大きい体をしていた。毎年、クラス替え後の自己紹介のとき、先生は必ず、「食べることと、みんなが大好きです」と包み込むように微笑んだ。
その中学校では、欠席者がいたりして給食が余るとき、ジャンケンで勝った者がその余り物を食べていいというルールがあった。
パー子先生ももちろん、「余り物ジャンケン」に毎回参戦したが、一度も勝ち取れなかった。
先生は、ジャンケンでパーしか出さず、みんなもそれを知っていた。

パー子先生のクラスの「チョキ太郎」は、ケンカやトラブルは日常茶飯事、胸ポケットに必ずハサミを常備している正統派のヤンキーだった。
ある日、チョキ太郎のグループと隣町の学校のヤンキーグループが衝突した。パー子先生の中学校が、抗争の舞台になった。
駆けつけた警察官に取り押さえられ、チョキ太郎は汚い言葉を撒き散らして暴れていた。
不意に、パー子先生の大きなシルエットが彼を覆い隠したかと思うと、次の瞬間、彼は先生に抱きしめられていた。
チョキ太郎は抵抗をやめ、先生にしがみついて幼児みたいに号泣した。
チョキがパーに負けた。生徒たちはそうささやいた。

チョキ太郎のグループに、1学年上のヤンキー「グー助」がいた。噂によると、彼の両親も祖父母もヤンキーだったらしい。華麗なる一族出身のグー助自身は、いつも岩のように難しい顔をしていた。
グー助も、もちろんその抗争にいた。警察の手を逃れ、体育館に逃げ込んだ彼の前に立ちはだかったのは、パー子先生だった。先生は、グー助の前年度の担任だった。
走り込んでくるグー助を、パー子先生はその大きな体で包み込み、彼の手のナイフによって倒れた。
パー子先生はそれから1ヶ月の入院を経て、学校に戻ってきた。
「破れたとこをくっつけたから、もう大丈夫よ」
パー子先生の笑顔は変わっていなかった。

パー子先生復帰後のある日、グー助がふらっと学校に現れた。
「戻ってきたのね」
パー子先生は再び、グー助を抱きしめようとした。グー助は戻ってきたのではなく、更生施設を脱走してきたのだった。
グー助の手には、ライターがあった。パー子先生の体に、紙のように鮮やかに火がついた。
「今度は焦げちゃった。補強してもらわなきゃ」
救急車で運ばれる寸前、先生はそう言って微笑んだ。

しばらくして、グー助は、入院しているパー子先生の病室に現れた。ベッドで微笑むパー子先生に近づき、おずおずと右手を差し出した。先生がグー助の震える手を包み込むように握った瞬間、グー助は断末魔の叫びを上げた。先生はかまわず彼を抱き寄せ、デパートの包装紙のようにぴったり包み込み、彼の薄いTシャツの背中を何度もその手で力強く擦って微笑んだ。
「グーに負けるわけにはいかないのよ」
包帯に巻かれた先生の両手と、そこに貼り付けられた紙やすりが、赤黒くどろどろに濡れていた。

(1,158文字)

#秋ピリカ応募




初めての「ピリカグランプリ」、楽しませていただいています!

こちらの企画を見つけたのは偶然でした。
紙。
難しいテーマでした。
紙。木からパルプを経てつくられるペラペラのアレかぁ。
しかしアレはペラペラながら、我々日本人の生活にはなくてはならないものです。
衣食住、全てに何らかの紙が関わっている。だからこそ、紙というものがかえって見えにくくなっているのかもしれません。

そこから何日も考えて考えて、手が動き始め、書き上がったのがこれでした。


25年前にデパートでバイトしてたとき、大小様々な箱をあんなにキレイに包装できていたのに、今はもうその片鱗もなく……悲しい。

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