見出し画像

チャイコフスキー"唯一の5楽章の交響曲"〜交響曲第3番 ニ長調 作品29番と、 バレエ『ダイヤモンド』〜ジョージ・バランシン振付「ジュエルズ」より

チャイコフスキーの交響曲第3番 ニ長調『ポーランド』は、完成された番号付交響曲全6曲の中で唯一、長調で始まる作品。さらに、全5楽章構成という、ちょっと珍しい交響曲でもあります。

……とはいえ、正直に言うと、バレエ好きの私は長い間、第一楽章を飛ばして聴いていました。
というのも、ジョージ・バランシン振付のバレエ《ジュエルズ》の第3幕『ダイヤモンド』で使われているのが、この交響曲の第2〜第5楽章だからです。

だから私にとってこの曲は、「交響曲」というより、バレエ『ダイヤモンド』の音楽として親しんできた作品でした。

*********

そこで今回は、バレエ『ダイヤモンド』をご紹介したいと思います。

この作品は、1967年にニューヨーク・シティー・バレエ団によって初演された三部作バレエ《ジュエルズ》(Jewels)の第3幕目に演じられるものです。

《ジュエルズ》は、「エメラルド」「ルビー」「ダイヤモンド」という3つの宝石をテーマにした作品で、それぞれ異なる音楽や舞踊スタイルによって構成されています。

『ダイヤモンド』は、ジョージ・バランシンがロシア・バレエへのオマージュとして振付けた作品だと言われています。19世紀ロシア帝室バレエの、あの優雅で華やかな世界観を、20世紀によみがえらせたような作品とも言えるでしょう。

バランシンは1904年、ロシア、サンクトペテルブルクに生まれました。ジョージア系(グルジア人)の家庭出身です。ロシア帝室バレエ学校で学び、マリインスキー劇場(当時の帝室劇場)でダンサーとして活躍します。その後1924年にロシアを離れてヨーロッパへ亡命し、のちにアメリカへ渡ってアメリカン・バレエの礎を築きました。

そうした経験から、『ダイヤモンド』には、彼を育てたロシア・バレエへの深い愛情や、失われた時代への郷愁が自然とにじみ出ているのが見ている私たちに伝わってきます。そして、振付には、マリウス・プティパに代表されるクラシック・バレエへの敬意が、随所に感じられます。

ここで重要になるのが、チャイコフスキーの交響曲第3番です。
『ダイヤモンド』では第2楽章から第5楽章が使用されており、第1楽章は用いられていません。

では、なぜ第1楽章が省かれているのでしょうか。

私が思うに、『ダイヤモンド』は三部作バレエ《ジュエルズ》の最後を飾る作品であるため、いわば“始まり”としての第一楽章を必要としなかったのではないでしょうか。

さらに、第2楽章の静かに始まる雰囲気には、バランシン自身が若き日の記憶へと静かに立ち返っていくような感覚があります。そのため、《ダイヤモンド》の世界へ入っていく導入として、とても印象的に感じられます。

*********

バレエ『ダイヤモンド』〜ジョージ・バランシン振付「ジュエルズ」より ボリショイ・バレエ団"

”Jewels - Diamond" by George Balancine: The Bolshoi Ballet
<リーディング・カップル> セミョン・チュージン/オルガ・スミルノワ

*********

チャイコフスキーの交響曲第3番 第3楽章の曲で「パ・ド・ドゥ」

チャイコフスキーの交響曲第3番の第3楽章にのって踊られるパ・ド・ドゥは、とても印象的な場面です。この曲と踊りが重なるこの場面は、見るたびに胸がキュンと締めつけられるような美しさがあります。

1977年:スザンヌ・ファレルとピーター・マーティンス(Suzanne Farrell and Peter Martins)

(バランシンは、スザンヌ・ファレルを、初演のオリジナルキャストとして『ダイヤモンド』を振り付けました)

*********

『ダイヤモンド』プリンシパル・バレリーナのソロ

マリアネラ・ヌニェス(Marianela Nuñez)


最後のフィナーレが圧巻

交響曲第3番の副題である《ポーランド》は、最終楽章(第5楽章)の主題にポーランドの舞曲である「ポロネーズ」のリズムが用いられていることからきています。

宝石をテーマにしているだけあって、衣装もなんともゴージャスで、見ているだけでため息が出ます。

ちなみに《ダイヤモンド》では、白いタイツに白いトウシューズが使われていて、その純白の美しさが作品の気品をさらに際立たせています。

*********

チャイコフスキーの交響曲第3番に関しては、こちらの詳しい解説を参考にさせて頂きました。

*********

最後にいくつかおまけ動画を。

NYCBのテレサ・ライクレンが語る、バランシン《ダイヤモンド》「パ・ド・ドゥ」の魅力 ― “Anatomy of a Dance”

*********

《ダイヤモンド》の有名なパ・ド・ドゥを、初演ダンサーであるスザンヌ・ファレルから始まり、2024年のエヴァ・セルゲエンコワまで、世界各国の著名なダンサーたちを取りまとめたこのような動画もありました。

*********


《ダイヤモンド》のソロ:世界各国の著名なダンサーたちを取りまとめた動画 ー ザハロワ、ロパートキナ、ヌニェス、スミルノワ、コウロスキー、スミルノワ、ホレワ、マカテリ、ソモワ、ミアーンズ、永久メイなど


いいなと思ったら応援しよう!