日向石神社と石上神社 (瀬戸内市長船町石上)
1 はじめに
『磯上の古道を歩く』の日向石神社(石上神社)の説明に、「この土地は天王といわれて いる。」とあります。この天王(てんのう)の解読が、日向石神社が石上神社であることを証明 しました。調査内容を先史学と地名学で報告します。




2 『 和気絹』の天皇原
宝永六年(1709)成立の『和気絹』に天皇原が記録されています。崇神天皇の天皇原です。日向石神社鎮座地が天皇であり、長船村の崇神天皇社鎮座地が天皇原です。
一、崇神天皇社。長船村に在り。此辺を天皇原といふ。天皇は人皇十代開化天皇の太子也。
2.1 崇神天皇社の鎮座地
池田家文書の神社明細帳に、靭負神社が寛文九年(1669)に崇神天皇社社地に遷座とあります。つまり、1669 年に崇神天皇社の名前が消され靭負(ユキエ)神社(瀬戸内市長船町長 船 1151)に変わっています。
2.1 .1 日向石神社の祭神 崇神天皇
日向石神社が湯次神社の末社として記録され、祭神が崇神天皇と須佐之男神です。


3 崇神天皇
崇神(すじん)天皇は、第 10 代天皇で学術上、実在可能性のある初めての天皇です。 3~4 世紀初めにかけて実在した大王であり、258 年没説では崇神天皇の治世は、邪馬台国 時代の後半となり、水野正好氏(奈良大学名誉教授)の「崇神天皇は卑弥呼の後継女王で ある台与の摂政」説と西川寿勝氏(大阪府教育委員会)の「崇神天皇は卑弥呼の男弟」説 が知られています。『日本書紀』では、崇神天皇の四道将軍派遣が知られています。
3.1 崇神天皇と石上神宮
祭神の石上大神は、第 10 代崇神天皇7年に現在地、石上布留(ふる)の高庭(たかにわ) に祀られています。素盞嗚尊が八岐大蛇を斬ったときの十握剣が、石上布都魂神社から石上神宮へ遷されたと伝えられています。
伊勢神宮の古名とされる「磯宮(いそのみや)」と「いそのかみ」との関係説があります。
3.2 石上神社と石上神宮
桓武天皇延暦廿四年(805)の造石上神宮が『類聚国史巻三十四 帝王十四 天皇不豫』 に記録されています。石川朝臣吉備人に注目した、石上神社と石上神宮の記録です。


4 石上郷の地名の由来
『吉備之国地理之聞書』の平賀元義氏(1800~1866)の報告は正確です。
「類聚国史に備前国の殻を石上内親王に賜ふといふ事あれども、石上郷は、かの内親王よ り以前の郷名なれば、内親王によれる名にあらず。」
4.1 石上内親王
石上内親王(?~846)が、『類聚国史 巻七十八 賞賜』に記録されています。平城(へい ぜい)天皇の皇女です。大同 5 年(810 年)の記録です。「近江,播磨,備前の穀 800 斛(こく)を賜る。斛とは量器の総称です。現在までの調査で備前との関係を確認できたのは石 上内親王のみです。内親王とは皇族女子称号です。
4.2 石上皇子と石上部皇子
備前国石上郷は、石上皇子(542 年?~没年?)と石上部皇子縁の場所です。石上部皇子は欽明(きんめい)天皇の皇子です。石姫皇女(いしひめのひめみこ)の石を石上の地 名の由来と考えます。欽明天皇の皇后です。敏達天皇の母。同母妹の小石姫皇女・倉稚 綾姫皇女・日影皇女と共に欽明天皇の妃となりました。欽明天皇元年(540)に欽明天皇の皇后 に立てられ、敏達天皇元年(572)、息子敏達天皇の即位と同日に皇太后に立てられています。
4.3 石上麻呂
物部守屋(?~587 年)の時の崇・廃仏闘争により物部一族は滅亡しました。しかし、物部一 族は石上氏として存続する道をたどりました。石上麻呂(640~717 年)は物部氏の居住地であ る石上郷に因み「石上朝臣」と改称しました。
5 まとめ
1669 年に崇神天皇社の名前が消され靭負(ユキエ)神社に変えられました。1669 年とは、池 田綱政公が布都美神社を石上布都魂神社と決定した延宝二年(1674)の 5 年前です。 藩主の池田光政公が、石上神社を日向石神社と名称変更し、吉備国における崇神天皇の記 録を抹消しました。
伴信友氏が引用した『備前国式社考』の著書は、今回の報告内容を知りません。岡崎春樹氏は『吉備に邪馬台国 瀬戸内市の歴史』に、「石上神社は、明治時代の政 策で強制破壊された。と私の妻の父親は、石上神社の氏子で大変嘆き話していた。」と報告 しています。
日向石神社とは、太陽に向かう石上の社の意です。
5 参考文献
① 『磯上の古道を歩く』平成 27 年 4 月 2 日 いそのかみ里山倶楽部
② 『和気絹』高木太亮軒 1709 年「吉備群書集成」
③ 『池田家文書の神社明細帳』
④ 『寸簸乃塵 下巻』土肥経平 「吉備群書集成(二)」昭和 45 年 歴史図書社
⑤ 『石上神宮』 http://www.isonokami.jp/about/
⑥ 『吉備之国地理之聞書』平賀元義 「吉備群書集成(二)」昭和 45 年 歴史図書社
⑦ 『石上麻呂と石上郷(長船町磯上)』平成 28 年 1 月 5 日 丸谷憲二
⑧ 『布都美神社と石上布都魂神社』 平成 28 年 1 月 19 日丸谷憲二
⑨ 『吉備に邪馬台国 瀬戸内市の歴史』岡崎春樹 平成 25 年 12 月
平成 28 年 1 月 20 日 寄稿
