次男10歳の誕生日に寄せて
次男は3月27日という年度末に産まれてきた。非常に暖かな日の午後であった。長男の時と違って私は出産時には立ち会えなかった。ちょうど春期講習で昼過ぎから授業だったからである。
翌日に実際に抱いて驚いた。長男より明らかに大きい。長男は予定日の4週間前に2500gで突然産まれた。それに対して次男は予定日通りに3500gで産まれた。私も妻も3000gに満たないサイズで産まれ現在もSサイズの平均より小さい人種である。次男はそんな家庭に規格外の大きさで一員となった。
一歳を迎える頃から次男は長男とは別の人間なのだということが明確になり始めた。とにかくマイペースでゆっくりしている。長男はハイハイや歩き始めるとどこまでも行くような行動が頻繁に見られたが、次男はとにかくゆっくりしていた。そして親の近くを決して離れない。とても甘えん坊であった。長男は9カ月の時に保育園に入園した。次男はそれが1歳ちょうどになった。この3カ月の差も非常に大きかったようで、母親への密着度が違った。少しでも見えなくなると大声で泣いた。そして今でも基本は「ママ、ママ」である。
彼に悲劇が襲ったのは1歳半の頃だった。突然ひきつけを起こして救急車で搬送された。そのときに「てんかん」と診断された。5歳の時の1月と小学校1年生の最後の日にも発作を起こしている。これらは卒園式の直前と誕生日を目前にした修了式の日だったので、この時期は「何ともなければよいが」と特に身構えてしまう。まあそれでも服薬を続けながらこの3年間は何事もなく乗り切れそうだ。今年度はラーケーションを1日利用しただけで皆勤であった。
大きくなってもマイペースでのんびりしているのは変わらない。そして何かにハマると非常に深くそれに没頭する。嫌いなものはとことん遠ざける。好き嫌いの少ないウチの家庭の中では唯一の偏食マンである。まあそれでも少しずつ食べられるものが増えてきた。後は魚介類を克服してほしい(食べず嫌いに思えて仕方がない)。そうすれば海鮮系の食事にもっと気兼ねなく行けるのに、、と思う。
長男はまあ保育園の時からリーダー的な役割も任され、学業にしろ運動にしろまあまあ想定通りの活躍を見せてくれた。しかし次男はなかなか厳しい。テストになっても気が向くときとそうでないときの差が激しい。集団行動があまり好きではなく一人遊びが好きなので長男に続いて野球をさせるのは諦めた。彼の様子を見ていると外野を守らせようものなら「暑い」と勝手に休んでしまいそうだからだ。反対に水泳にはハマったようで淡々と毎週通っている。ただクラブに通う日を増やすのは絶対に嫌だそうだ。まあ「ガムシャラに」とか「限界まで頑張る」というタイプではない。若干物足りなさも否定できないがこれが次男の特性なのだろう。全く気質の異なる2人の男児が生まれたことに私は感謝している。次男との接し方の中で学習塾の生徒に対しても引き出しが増えたのは間違いない。
次男は基本的にずっとゲームをしているかアニメを見ていたい人である。ゼルダの冒険は攻略サイトなどを何も見ずに時間をかけてクリアした。長男は途中で投げ出したので対照的だった。急に昨年の今頃にワンピースにハマりそれ以降毎日2話ずつ視聴している。最近「第740話まで来た」と話していたので、本当に毎日毎日ルーティンを崩さずに見続けてきた。感心なのは一回しか見ていないのにストーリーを正確に覚えていることだ。とまあこんな感じで特性の強さが感じられる子なのである。
実は今月の初めに母の検査があった。母は5年ほど前から認知症を患い、最近では私の名前が出てこなかったり、長男と次男の名前を反対に呼ぶことも増えるような所まで症状が進んでいる。2月の終わりに急に意識を失って緊急搬送されたがすぐに意識が戻り簡単な検査と点滴だけで家に帰った。しかしその時に「気になる所がある」と医者から言われての検査だった。この日は平日だったがたまたま次男は学校行事の代休だった。彼を連れて病院にいった。予定よりも長く待った。せっかくの平日の休みだったのに彼は病院でずっと神妙にしていた。いつもなら「暇で耐えられない」というようなことをすぐにこぼすのだが、とにかくいい子にしていた。
次に検査の結果の発表が先週にあった。この日もたまたま次男は上級生の卒業式で休みだった。医者からの診断は「ガン」で来月の手術と入院が決まった。覚悟はしていたが帰りの運転で私は涙がこぼれそうになった。妹も同じ心境だったように思う。途中でスーパーによって買い物をした。次男はずっと母から離れずに着いてくれた。段差や階段はすかさず手を引いてくれた。そして家に帰ってきたときは母が脱いだ靴を脇に寄せて揃えていた。これらの行動は普段の彼が最も苦手にしているものである。母の病気の-が次男の優しさの+で埋め合わされた。特に私はそんな教育をしていないのに彼の中に弱いものを助ける心が育っていたのだ。いつもは家でも一番年下で学年でも最も後に産まれた子なので弟気質しか発揮しないのだが、実はそんな部分があったのだとこちらでも目頭が熱くなった。
次男は許容範囲や興味の範囲が狭いが、その代わりに深いのだと認識している。そんな彼の生きる道を一緒に探していきたいなと彼が10歳を迎えた日にぼんやりと考えているのだ。
