#毎週ショートショートnote 告りびと(マナブの場合)
「俺、やっぱだめ、船で行くわ」
マナブはタラップにつかまりながらカエデに情けなさそうな顔を向けた。
「何を今さら、サクラとユウキの結婚式は明日よ、間に合うわけないじゃん」
マナブとカエデは福岡空港発、那覇空港行きのタラップにいた。
当時テレビで流行っていたドラマ、男女七人夏物語のように、男の子四人、女の子三人で楽しく高校生活を送っていた仲間。その中の二人が五年後、めでたく結婚する事になり結婚式会場はオーシャンビューの沖縄のホテル、新婚旅行を兼ねてるらしいが付き合わされる『俺は高所恐怖症なんだよ!』と口には出さないものの命懸けで飛行機に乗る羽目になった。
カエデはすでにタンクトップとホットパンツの出で立ち、この際だから沖縄を満喫する気満々でいる。
「マナブ、顔青いよ、少しの辛抱よ目をつむってなさい」
マナブは静かに目を閉じて息までも止めてしまいそう、いよいよ離陸、機体が上昇するに連れ
「ヒィ、アァー」と声が漏れる。
カエデは呆れ顔で
「もう大丈夫だから、目を開けたら」
その時である、機体がガクンと落ちた
そして二度目の衝撃、機内は騒然とした、マナブは頭を抱えて震えている。
「言わないことじゃないだろう、だから飛行機、嫌だったんだ、この海に突っ込んで死んじゃうのかな俺たち」
「大丈夫だって」とカエデは言いながら内心不安を隠せないでいた。
するとマナブが震える声で
「俺、死ぬ前にカエデに言いっとくわ、会った時から好きだったんだ、今も変わらない、これ俺の最初で最後の遺言」
カエデは目を見開いて
「何もこんな時に、馬鹿!」
「御免、最後までビビりで」
程なくして機長からのアナウンスが流れた
「皆様、大変ご心配をお掛けしました。乱気流に入り機体を降下させた際に機体が不安定となりましたが今は安定して飛行しております。シートベルトを外して
おくつろぎください」
乗客もほっとした顔を向けた。
カエデはマナブに向かって
「マナブ、さっきの言葉に嘘はない?」
「はっ、はい神に誓って」
カエデはちらとマナブを見て
「マナブ、私が付いてないとダメだもんね」
「よぉーし、サクラからのブーケトス
マナブに投げてやって、て言っとくわ」
「えっ、俺が…、ブーケキャチ…、」
「次は、私達よ覚悟はいい!」
マナブは顔を輝かせて
「はい、宜しくお願いします」
「モォ~、どっちが花嫁よ」
那覇空港に飛行機は着陸し
マナブはタラップを降りながら小さくガッツポーズをした。
初恋は実のらない、のではなくチャッカリ実ったのでありました。
お終い
#毎週ショートショートnote
#告りびと
#初恋 アンソロジー
こちらの作品、初恋アンソロジーにお願いします。
楽しい企画を有難う御座います。
