竹が書き、あほうが通して、国滅ぶーー「立法府の総意」の欺瞞
皇室典範改正が、いま国会で急速に動いている。
「旧宮家の男系男子を養子に迎える」という案が、2026年6月にも政府から提出される見通しだ。与野党の約9割が賛成と報じられている。
そして、この流れを後押しするように、産経新聞の論説委員長・榊原智氏はこう書いた。
「立法府の総意」に基づく改正は歴史的・論理的に正しい。
この言葉を聞いて、あなたはどう感じるだろうか。
「立法府の総意」――国会が議論を尽くし、全会一致で合意した、国民の代表による厳粛な意思。そんなイメージが浮かぶかもしれない。
だが、その中身を見れば見るほど、胡散臭さしか浮かんでこない。
本稿では、この「立法府の総意」の欺瞞を暴く。
「立法府の総意」の実態――「密室の総意」
まず、この「総意」の実態を確認しよう。
榊原氏が「立法府の総意」と呼ぶものは、全13党派のうち7党派が賛同したものだ。衆院で約98%、参院で約74%の議席を占める主要政党の合意――つまり、これは全会一致ではない。「多数決で押し切った結果」である。
それを「総意」と呼ぶのは、言葉のマジックに過ぎない。
さらに重要なのは、この「総意」が形成される前に、結論はすでに決まっていたという事実だ。
竹田が書き、麻生が通す――出来レースの設計図
結論の決まり方はこうだ。
竹田恒泰という人物をご存知だろうか。旧皇族の末裔で、男系維持論の急先鋒である。
この竹田氏は、自身のYouTube番組で「(養子案は)私が発案したもの」「法案を書いたのは私」と公言している。しかも、愛子さまを「味噌汁にウンコを一滴入れるようなものだ」と表現した人物だ。
そんな私人が書いた「私案」が、維新の会の党内勉強会で「たたき台」として使われ、やがて自民・維新の連立合意で「第一優先」に格上げされた。
そして、これを国会で押し通したのが麻生太郎である。
麻生氏は「死活的な課題」「今国会で成し遂げなければならん」と繰り返し、党内の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の会長として議論を仕切った。妹の信子妃は三笠宮家に嫁いでおり、麻生氏自身が皇室の姻族である。旧宮家養子案が成立すれば、彼の血縁ネットワークが国家制度として固定化される。
つまり、この構図はこうだ。
「竹田が書き、麻生が通し、議席数で押し切る。」
これを「立法府の総意」と呼ぶ。
「国民の総意」の無視――憲法第一条の形骸化
決定的に重要なのは、この「立法府の総意」が「国民の総意」と真っ向から矛盾していることだ。
日本国憲法第一条はこう定める。
「天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」
つまり、皇室のあり方を最終的に決めるのは、国会の多数決ではなく、国民の総意である。
では、国民の総意はどうなっているか。
各種世論調査では、女性天皇への賛成は7割から9割。愛子さまの即位を支持する声も8割を超える。一方、旧宮家養子案への賛成は47%(毎日新聞2026年3月調査)に留まる。
国民は明確に「女性天皇」を求めている。なのに、立法府は「旧宮家養子案」を第一優先で進めている。
榊原氏は「国民は理解を示すだろう」と楽観的に述べる。しかし、これは国民の意思を「理解を示すだろう」という予測で上書きする行為だ。そこには、主権者たる国民の声を聞く謙虚さは、微塵もない。
「立法府の総意」という言葉が隠すもの
榊原氏の論説を分析すると、「立法府の総意」という言葉が果たしている役割が浮かび上がる。それは「国民的議論の不在」を覆い隠す煙幕である。
「立法府の総意」という言葉には、「これだけ議論を尽くしたのだから、もう文句はあるまい」というニュアンスが込められている。しかし、その実態は「密室で事前に決めたことを、議席数で押し切っただけ」に過ぎない。
私たちが問うべきは、「立法府の総意」という言葉の中身ではない。その言葉が覆い隠そうとしているものだ。
なぜ女性天皇を正面から議論しないのか
なぜ当事者(竹田恒泰)が書いた法案が「たたき台」になるのか
なぜ皇室の姻族(麻生太郎)が議論を仕切るのか
なぜ国民の7〜9割が支持する案ではなく、47%の案が優先されるのか
「密室の総意」という名の欺瞞に抗うために
「立法府の総意」という言葉の正体は、「密室の総意」である。この四文字が、最も正確に実態を言い当てる。
そして、その密室を動かしているのは、竹田恒泰と麻生太郎という、特定の血縁と利害で結ばれた個人である。彼らは「伝統」でも「国体」でもない。私的な利害とイデオロギーを、国家の基本法に刻み込もうとしているに過ぎない。
それを「総意」と呼ぶな。
密室で決めたことを、議席数で押し切ることを、「総意」という言葉で包装するな。
皇室は、竹田のものでも、麻生のものでもない。主権者たる国民のものである。
そして、国民はすでに答えを出している。女性天皇を求めている。愛子さまを求めている。
この声を無視して、「立法府の総意」だけで皇室典範を変えること――それこそが、最も深刻な憲法違反である。
「立法府の総意」、それは「密室の総意」。
「密室の総意」で皇室を乗っ取ろうとする者たちを、私たちは決して許してはならない。
