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輸液必要性?反応性?忍容性?って困る人のためのnote〜輸液をする時、スマートに考える3ステップ〜


はじめに

夜中の当直、ナースから一報。

「先生、血圧80台です」

このとき、反射的に「ソルラクト全開で」と言ってしまう研修医、
後期研修医、めちゃくちゃ多いです。

私もそうでした。

でも、ちょっと待ってください。

その輸液、本当に必要ですか?

入れたとして、心拍出量は上がりますか?

そもそも、その患者さん、輸液に耐えられますか?

この3つの問いに即答できないなら、
その輸液はギャンブルです。

当たれば血圧が上がる、外れれば肺鬱血で挿管。
そんな運任せの臨床はそろそろ卒業しましょう。

今回お話しするのは、
輸液を判断するときに必ず通すべき3つのフィルター。

  • 輸液必要性

  • 輸液反応性

  • 輸液忍容性

この3つを順番に確認するクセをつけるだけで、
当直中の輸液オーダーが激変します。

以下、参考文献です。



輸液必要性 〜そもそも、この人に輸液は必要か?〜

まず1つ目のフィルター、輸液必要性。

読んで字のごとく、輸液が必要な人かどうか、という話です。

簡単に言うと、輸液をすることでその人の循環動態が改善する状態のこと。

イメージしやすいのは血管内脱水。

細胞外液を補充することで前負荷が保たれ、
心拍出量が増えて、循環が改善する。

これが輸液必要性がある状態の典型です。

具体的にはこんなケース。

  • 腎前性AKIのように、循環血漿量の不足で臓器障害が出ている

  • 敗血症性ショックのように、血管内volumeが足りなくてショック

  • 嘔吐・下痢・出血などで明らかな血管内脱水が示唆される

逆に、循環血漿量が足りているのに「血圧が低いから」という理由だけで輸液を入れる、これは必要性のない輸液です。

そもそも輸液必要性がない人に対しては、相対的に輸液の適応は下がります。

当たり前のようですが、現場ではこの大前提がスルーされがち。

血圧が低いことと輸液が必要かどうかは、イコールではない。

この感覚をまず持ってください。

輸液反応性 〜輸液して、心拍出量は上がるのか?〜

2つ目のフィルター、輸液反応性。

これは必要性とは全く別の話。

輸液をしたときに、
心拍出量が体として反応して上がるかどうか、という概念です。

なぜこれが大事なのか。

そもそも輸液の目的は、
前負荷を増やして心拍出量を上げること。これに尽きます。

ということは、輸液をしても心拍出量が上がらないなら、
輸液する意味がない。

「この人、必要性はある。脱水もあるし、AKIも出てる」

ここまでは判断できたとして、次に問うべきは

「じゃあ、輸液したらこの人の心拍出量、本当に上がりますか?」

ここで反応性がなさそう、つまり輸液しても心拍出量が上がらないと判断したら、漫然と輸液を続けない。これが大事です。

代わりに何をするか。

これは状況次第で、強心薬の併用を検討したり、
そもそもの病態を見直したり、という話になってきます。

ただ、反応性の評価自体に限界があるので、
1回の評価で「反応性なし」と決めつけず、
何度か評価し直すのが基本スタンスです。

要するに、必要性と反応性はセットで考える。

  • 必要性あり+反応性あり → 輸液GO

  • 必要性あり+反応性なし → 漫然と輸液を続けず、他の手段や病態の見直しを

  • 必要性なし → そもそも輸液しない

輸液忍容性 〜その体は、輸液に耐えられるのか?〜

3つ目のフィルター、輸液忍容性。

これは少しレベルアップした概念で、
輸液をすることで害が出るかどうか、という話。

輸液の害とは何か。基本的にはうっ血の害です。

ここで一番ありがちな誤解を先に潰しておきます。

「下腿浮腫があるから忍容性なし」
「SpO2が低いから忍容性なし」

これはさすがに、短絡的です。

低酸素血症の原因は肺うっ血だけじゃないですし、
見た目の浮腫は慢性的な低栄養や静脈還流障害でもいくらでも作れます。

たとえば、肺水腫の既往がある人でも、低灌流がガッツリ前面に出ている状態であれば、少量の負荷をかけて反応を見ることは検討対象になり得る。

「肺に水がある=輸液禁止」と機械的に判断するのは違うんです。

では、忍容性は何で評価するのか。

見るべきは静脈圧負荷と臓器うっ血の客観指標です。

⭐️ 忍容性の評価軸

  • IVC径(下大静脈の拡張・呼吸性変動の消失)

  • VExUSグレード(門脈・肝静脈・腎静脈波形による全身うっ血評価)

  • CVP(12〜15 mmHgを超えると右心系の負荷が高い)

これらが「もうこれ以上、静脈側に水を入れたら全身がうっ血する」というサインを出していたら、忍容性なしと判断する。

逆に、見た目の浮腫があってもIVCが虚脱していて、VExUSもキレイなら、輸液を入れる余地は残されている可能性がある。

必要性がある。反応性もある。でも、客観指標で忍容性なし。

このときは輸液を止める。これが上級者の判断です。

「見た目」ではなく「静脈系の圧負荷」で判断する。

ここが3つ目のフィルターを使いこなす上での肝になります。

3ステップを実臨床でどう回すか

整理しましょう。

輸液をするかどうかは、この順番で確認します。

⭐️ 輸液判断の3ステップ

  1. 必要性:そもそも輸液が必要か?

  2. 反応性:輸液して心拍出量は上がるか?

  3. 忍容性:輸液に耐えられる体か?

順番が大事です。

まず必要性があるかを確認する。循環が保たれていない、臓器障害が出ている。そういう人に輸液を考える。

次に、反応性があるかを確認する。輸液して、ちゃんと心拍出量が上がって、循環を改善させてくれるのか。

最後に、最終確認として忍容性。輸液をすることに耐えられる人なのか。

この3つが全て揃って、はじめて輸液GOです。

「血圧低い → 輸液」ではなく

「血圧低い → 必要性チェック → 反応性チェック → 忍容性チェック → 輸液」

この一手間が、患者さんを肺水腫から救います。

おわりに

輸液は薬です。

ソルラクトもラクテックも、点滴台に吊るすときは「薬を投与する」という意識を持ってください。

血圧が下がったら反射的に細胞外液、という思考停止が一番危ない。

必要性、反応性、忍容性。

この3つのフィルターを通す習慣がつくと、当直中の判断スピードと精度が一気に上がります。研修医のうちにこの感覚を体に染み込ませておくと、後期研修以降の集中治療系のローテで圧倒的に楽になりますよ。


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