見出し画像

事業継続性向上に向けたオフサイトバックアップ戦略 その1

皆様、しばらくご無沙汰致しました。
いろいろありましてオフサイトバックアップ業務は移ることになりました。
また新たな気持ちで続けていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いにします。

序章:オフサイトバックアップの戦略的意義

現代の企業経営において、自然災害、サイバー攻撃、パンデミックといった予期せぬ事態は、事業継続に対する深刻な脅威となっています。このようなリスクに備える上で、オフサイトバックアップは単なるデータ保全の手段を超え、企業のレジリエンス(危機対応能力)を決定づける戦略的な投資と位置付けられています。この文章では、オフサイトバックアップがなぜ不可欠なのかを、上位概念である事業継続計画(BCP)および災害復旧(DR)との関係性から定義し、その多角的な側面を詳細に分析したいと思います。本報告書で提示する主要な検討ポイント、すなわちBCPとDRの関係性、復旧目標の明確化、そして多様なソリューションモデルの比較は、企業の意思決定者が自社のリスクとリソースを正確に評価し、最適なオフサイト戦略を策定するための信頼できる羅針盤となることを目指します。

1.1. BCPとDRの関係性:事業継続計画におけるオフサイトバックアップの位置づけ

オフサイトバックアップの重要性を理解するためには、まずBCPとDRという二つの重要な概念を区別することが不可欠です。BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、緊急事態が発生した際に、中核事業の継続あるいは早期復旧を可能にするための包括的な計画を指します。これは、人命の安全確保、サプライチェーンの維持、業務プロセスの代替手段、そして情報システムの復旧といった、企業活動全体のリソースとプロセスを網羅するものです。

これに対し、DR(Disaster Recovery:災害復旧)は、情報システムに特化した復旧計画です。DRの目的は、災害や障害によって停止したシステムや失われたデータを、可能な限り迅速に復旧させることにあります。つまり、DRは企業全体の事業継続性を確保するBCPの一部として位置づけられることが一般的です。オフサイトバックアップは、このDR対策の根幹をなす要素であり、主となる拠点が被災しても、遠隔地に保管されたデータを用いてシステムを復旧させるための不可欠な手段となります。BCPとDRはそれぞれ異なる役割を持ちますが、両者を連携させることで、企業全体の危機対応能力は大きく向上します。

1.2. 復旧目標の明確化:RTOとRPOの重要性

オフサイトバックアップ戦略を策定する上で、最も重要な指標となるのがRTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)とRPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)です。これらの指標は、単なる技術的数値ではなく、企業の事業継続性に対するビジネス要件を反映するものです。  

  • RTO(目標復旧時間):サービスやシステムが停止してから、許容できる最大復旧時間です。例えば、金融取引システムのように数分でも停止が許されない場合は、RTOは非常に短く設定されます。一方、社内共有ファイルサーバーのように多少の停止が許容される場合は、より長いRTOを設定することが可能です。  

  • RPO(目標復旧時点):障害が発生した際に、どの時点のデータまで復旧させるかという目標値。これは、許容できる最大データ損失量を意味します。頻繁にデータが更新される基幹システムであれば、RPOは限りなくゼロに近づける必要があり、バックアップ頻度を高く設定しなければなりません。  

RTOとRPOの要件は、採用するオフサイトバックアップ方式を直接決定づけます。例えば、RPOの要件が厳格であれば、リアルタイムに近いレプリケーション方式が求められ、そのための高コストなインフラ投資が必要となります。逆に、RPOに余裕がある場合は、非同期バックアップやテープメディアの活用など、コストを抑えたソリューションも選択肢に入ります。したがって、オフサイトバックアップの導入は、まず企業の各業務の重要性を分析し、それぞれのRTOとRPOを明確に定義することから始めるべきです。

1.3. データの冗長性確保:3-2-1バックアップルールの適用

オフサイトバックアップは、単独のソリューションとして機能するものではありません。データ保護の国際的なベストプラクティスとして広く推奨されているのが「3-2-1ルール」です。このルールは、以下の3つの要素から構成されます。  

  • 3:データを3つ持ち、運用データとバックアップデータ2つを用意する。

  • 2:2つの異なる種類のメディア(例:ハードディスクとテープ、またはハードディスクとクラウド)にデータを保管する。これにより、特定の種類のメディアが故障しても、別のメディアからデータを復元できます。  

  • 1:1つのバックアップコピーをオフサイト(遠隔地)に保管する 。これにより、本社や主要なITインフラが被災しても、データの損失を防ぐことが可能になります。

このルールは、単一障害点(SPOF)を排除し、多層的なデータ保護体制を構築する上で極めて有効です。オンサイトのバックアップは日常的なデータ復旧に迅速に対応でき、オフサイトのバックアップは広域災害という大規模なリスクに備えるための「最後の砦」となります。クラウドサービスやテープメディアなど、複数の異なる保存媒体を組み合わせることで、物理的な損傷、サイバー攻撃、人的ミスなど、多様なリスクに対応できる堅牢なバックアップ戦略が実現します。

と、ここまでが教科書的な文章なのですが

実は、バックアップの3-2-1ルールというのは「ランサムウェア」というサイバー攻撃が爆発的に増える前(そもそもまだなかったころ?)にピーター・クローグさんという写真家が提唱したものなんですね。そのころはランサムウェア対策というのもまだ一般的ではありませんでしたし、クラウドの利用もいまほど当たり前ではありませんでした。つまり、もう早くもバックアップの3-2-1ルールというのは古くなりつつあるんです。ですので、このルールは拡張版がいろいろ出ています。一番メジャーなのはVeeam社が提唱している「バックアップの3-2-1-1-0ルール」でしょう。

3:バックアップは合計3つ以上

  • 元データ + バックアップ2コピー以上

  • 1つ壊れても、他で復旧できる状態を作る

2:2種類以上の異なる媒体に保存

  • 2:2種類以上の異なる媒体に保存

  • 例:

    • 内蔵HDD / SSD

    • NAS

    • テープ

    • クラウドストレージ

  • 同じ種類の媒体だけだと、同時故障のリスクがある

1:1つはオフサイトに保管

  • 災害・盗難・火災対策

  • 例:

    • クラウド

    • 別拠点のNAS

    • データセンター

1:1つはイミュータブル(変更・削除不可)

  • ランサムウェア対策の核心

  • 管理者権限でも削除できない、または一定期間ロックされる

例:

  • WORM対応ストレージ

  • S3 Object Lock

  • バックアップ専用アカウントでのクラウド保存

  • オフラインテープ

0:バックアップの復旧エラーはゼロ

  • バックアップは「復元できて初めて意味がある

  • 定期的な検証が必須

具体策:

  • 自動バックアップ検証

  • 定期的なリストアテスト

  • チェックサム検証

  • DR(災害復旧)訓練

なぜ 3-2-1 だけでは不十分なのか?

  • 管理者権限を奪われると 全バックアップ削除

  • クラウド同期型は 暗号化データがそのまま同期

  • バックアップの 壊れたまま放置 が多い

→ それを防ぐために 「1(イミュータブル)」と「0(検証)」 が追加された


企業・個人での適用例

企業

  • オンプレNAS

  • クラウド(S3 Object Lock)

  • オフラインテープ

  • 月次復旧テスト

個人

  • PC本体

  • 外付けHDD

  • クラウド(世代管理+削除保護)

  • 半年に1回リストア確認


まとめ(超要約)

3-2-1-1-0 ルール =
多重化 + 多様化 + 地理分散 + 改ざん防止 + 復旧検証

ということで非常に厳重ですが、日常の運用をするにはちょっと重すぎるという弱点があります。

バックアップの4-2-1ルールのご提案

というわけで弊社がおすすめしておりますのが「バックアップの4-2-1ルール」です。

まずクラウドなのですが、ネット環境があればいつでもどこからでも利用できる利便性の高さから、もうクラウドが日常業務に組み込まれているといった会社様も多いことと思います。しかし、これでは「バックアップ」という役目を果たしません。というわけで、日用のクラウドの他に、バックアップ専用クラウドを別にご利用いただきます。バックアップ専用クラウドには特定の場所・特定のユーザーからしかアクセスできないもの、データが変更できないもの、データが一方通行なもの(データダイオード)など、バックアップに適した仕様のものが存在します。

とは言え、クラウドストレージはガードが破られてしまう可能性を完全に0にすることはできません。というわけで、御社内でひとつバックアップを保管していただきます。クラウドの弱点に対応できるほか、シーン的にはクラウドからの復旧も使えるけれども通信速度を考えたらこのバックアップからの復旧の方が速い、という事態も考えられます。

そしてもうひとつのバックアップ、これを弊社でお預かり致します。御社で遠隔地にデータセンターを建設されるよりは確実に安くつきます。リストアテストや世代管理も、オプションとして承っております。

一緒にデータを守りましょう

というわけですので、バックアップにもいろいろな考え方があります。まずは「何を守るのか」ということを一緒に考えていきましょう。そして「どう守るのか」を具体化していきましょう。弊社は極力お客様のバックアップスキームに沿う形でサービスを実行していくことを目的としております。お気軽にご相談下さい。

というわけで、第2期は基本3000文字/回ぐらいにしておこうと思ったんですがいきなり4000文字を超えてしまいました。
明日に続きますね。
目次にリンク張っておきますので過去記事もぜひご覧下さい。

他の記事もよろしければご覧ください。
なお、弊社の業務をご紹介するちゃんとしたWebサイトは現在本当に頑張って作成作業中です。今しばらくお待ちください。
今日もありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集