【連載】~昭和アイドルオタク列伝~ 第17回:時代を変えた怪物― モーニング娘。と、人生最大のアイドル沼 ―
僕のアイドルオタク人生の中で、最も熱を上げたアイドルは誰か。
そう聞かれたら、迷わず答える。
モーニング娘。
キャンディーズでも松田聖子でもおニャン子でもない。
人生で一番、お金を使い、時間を使い、そして深くハマったアイドルグループだった。
出会いはテレビ東京の『ASAYAN』。
しかも途中からではない。初回から観ていた。
1997年の「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」。
平家みちよが優勝するところもリアルタイムで観ていた。
そして、そこから始まったもうひとつの物語。
落選した5人――
中澤裕子、石黒彩、飯田圭織、安倍なつみ、福田明日香。
普通ならここで終わる。
だが、つんく♂は彼女たちにとんでもない課題を課した。
「CD『愛の種』を5日間で5万枚手売りできたらメジャーデビュー」

今思えばかなり過酷な企画だ。
でも当時の僕は、毎週固唾を飲んで見守っていた。
「本当に売れるのか?」
「本当にデビューできるのか?」
気がつけば、もうこの頃にはファンになっていた。
ただのアイドルではなかった。
ゼロから這い上がる物語だった。
そしてメジャーデビュー。
ここから僕の沼が本格化する。
学生時代の“好き”とは違い、この頃の僕はすでに大人だった。
つまり――
財力がある。
これはオタクにとって危険である。
発売されるCDは全部買った。
本当に全部だ。
シングルは当然。アルバムも全部。
さらにDVD。
ライブ映像だけではない。
舞台や演劇ものにまで手を出していた記憶がある。
完全にハロプロ経済圏の住人だった。
モーニング娘。の面白さは、最初の5人で完成ではなかったことだ。
卒業があり、新メンバー加入がある。
グループが生き物のように変化していく。
今では当たり前になったこのスタイルも、当時はかなり新鮮だった。
その象徴が、後藤真希の加入。

テレビで初めて見た瞬間の印象は今でも鮮明だ。
「13歳とは思えない」
金髪。
大人びた顔立ち。
圧倒的な存在感。
こんな子が入ってくるのか、と本気で驚いた。
モーニング娘。というグループが、一段上のステージへ進んだ瞬間だったと思う。
そして、その後。
第4期メンバーとして**吉澤ひとみ(よっすぃー)**が加入する。

ここで僕の推しが決まった。
ボーイッシュでカッコいいのに可愛さもある。
あの独特の存在感にすっかりやられた。
……とはいえ、正直なところ箱推しだったのだけれど。
印象に残っている出来事はいくつもある。
その中でも忘れられないのが、『LOVEマシーン』誕生前夜だ。
1999年夏。
後藤真希が加入し、モーニング娘。がアイドルとして大ブレイクする直前。
ASAYANで、つんく♂プロデュースによる新曲『LOVEマシーン』のデモテープを、ナインティナインがスタジオで試聴する場面があった。
僕はそれもリアルタイムで観ていた。
曲を聴いた直後、ナインティナインが
「これは絶対売れる!」
「今までにないタイプ!」
と大興奮していたのを覚えている。
そして僕も思った。
“これは来る”
予感は的中した。
『LOVEマシーン』は社会現象レベルの大ヒット。

モーニング娘。は一気にスターダムへ駆け上がった。
でも僕にとって不思議だったのは、その爆発そのものよりも、
『愛の種』を手売りしていたあの5人を知っていることだった。
あの頃、必死にCDを売っていた彼女たちが、国民的アイドルになる。
それをリアルタイムで見届けている。
ファンとして、本当に信じられない気分だった。
もうひとつ忘れられないのが、中澤裕子の卒業。
初代リーダーの卒業は特別だった。
テレビでも特集がたくさん組まれていて、それをVHSに録画して保存していた記憶がある。
今のように配信もアーカイブもない時代。
「録って残す」ことそのものが愛情表現だった。
ライブにもよく行った。
ただ、そこにはちょっと“大人の事情”があった。
妻への口実として、子どもを連れて行っていた。
もちろん子どもも楽しんでいた……はずである。
でも本音を言えば、行きたかったのは僕だ。
家庭を持ちながらも、なんとか現場へ行く。
あの頃のオタクの知恵である。
ライブで一番テンションが上がった曲は、やっぱり**『LOVEマシーン』。**
あのディスコ調のイントロが流れた瞬間、会場の空気が変わる。
確実に盛り上がる。
「これぞモーニング娘。」という最強のライブ曲だった。
ちなみに、一番好きな曲は意外かもしれない。
『どうにかして土曜日』。
1998年発売の1stアルバム『ファーストタイム』に収録されたアルバム曲だ。

シングルですらない。
でも、この曲が好きだった。
実はこの曲、デビュー曲候補だったが、最終的に『モーニングコーヒー』が選ばれたというエピソードがある。
もしこちらがデビュー曲だったら、モーニング娘。の歴史は少し違っていたかもしれない。
そんな“if”まで想像してしまう。
そして、この曲と双璧をなすくらい好きだったのが、メロン記念日の**『かわいい彼』。**

もう完全にモーニング娘。だけではない。
ハロプロ全体にどっぷり浸かっていた。
あの曲の歌詞がとにかく好きで、当時は何度も何度も聴いていた記憶がある。
モーニング娘。だけでは終わらなかった。
ミニモニ。
タンポポ。
プッチモニ。
ごまっとう。
メロン記念日。
さらに中澤裕子のソロ。
そして太陽とシスコムーン(後のT&Cボンバー)。
もう「どこまで追うんだ」というレベルである。
「ここまで来たか」と思ったエピソードもある。
友人に「ベスト! モーニング娘。1を聴きたい」と頼まれた時のこと。

当時はまだカセットテープに録音する文化があった。
録音するだけなら普通だ。
問題はその後。
僕はインデックス紙を、『ベスト! モーニング娘。1』風にプリンターで凝って作り込んでいた。
もはや“聴く”だけではない。
“作る側”に回っていた。
オタクの愛情表現が進化した瞬間だった。
今振り返ると、モーニング娘。は現代アイドル文化の原型だったと思う。
成長物語。
推しメン文化。
卒業。
新メンバー加入。
ユニット展開。
ライブの一体感。
全部ある。
今のアイドル文化の基本フォーマットは、ここで完成していた気がする。
僕にとってモーニング娘。は、単なる“好きだったアイドル”ではない。
人生最大のアイドル沼。
あれほど熱を上げ、あれほどお金を使い、あれほど本気になった存在は、もう現れないかもしれない。
でも、だからこそ思う。
あの時代にリアルタイムでハマれて、本当に幸せだった。
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