砂糖の苦味、ファッションの憂鬱:プライマーク親会社の眠れない日々
英国で生活していて、その名を聞かない日はない巨大企業Associated British Foods(ABF)。
激安ファッションの代名詞「Primark(プライマーク)」から、スーパーに並ぶ砂糖「British Sugar」、食パンの「Kingsmill」まで、英国人の衣食を支えるFTSE 100のコングロマリットです。しかし今、この巨大帝国の足元が揺らいでいます。
The Timesが報じた最新の業績ニュースは、ファッションと食品という全く異なる二つの事業を抱える難しさを浮き彫りにしました。特に、伝統的な「砂糖ビジネス」の不振が、グループ全体の戦略に暗い影を落としています。
砂糖の苦味、ファッションの憂鬱:ABFを襲う複合的な逆風
Primarkを擁する複合企業ABFが、またしても大きな損失のニュースです。同社の悩みの種である砂糖事業の収益が、予想以上に悪化したことが明らかになったのです。
ABFの発表によると、1月3日までの16週間における砂糖部門の名目収益は4.3%減の6億7500万ポンドとなりました。これは、今月初めに示されていた「2%減」という予測の倍以上の落ち込みです。為替変動の影響を除いたベースで見ても、収益は6.9%減となり、これも以前の見積もり(5%減)を下回る結果となりました。
この苦境の背景には、ヨーロッパにおける砂糖価格の慢性的な低迷があります。この影響で同部門の赤字は過去1年でさらに拡大し、2025年の営業損失は実に2億500万ポンドに達しました。原材料となるてんさいの記録的な豊作、ウクライナ産のてんさいへの関税撤廃による流入など要因は複数ありますが、事態を重く見たABFは、国内の関連施設閉鎖やスペインでの砂糖生産ネットワークの再編に着手しています。
Primarkスピンオフ計画への懸念
この砂糖事業における深刻な問題は、グループが目指すディスカウント衣料チェーン「Primark」の分離独立(スピンオフ)計画にとって、大きな頭痛の種となりかねません。
Primark自体の足元も盤石とは言えません。クリスマスを含む重要な「ゴールデン・クオーター」の取引状況は今月初めにすでに公表されていますが、消費者心理の冷え込みを背景に、既存店売上高は2.7%減少という厳しい結果でした。
グループ全体の1月までの16週間の収益は68億ポンドで前年並みでしたが、これも会社が期待していた「1%成長」には届きませんでした。内訳を見ると、小売部門(Primark)の収益は4.2%増の35億ポンド、食料品部門は前年並みの14億ポンドとなっています。
市場は「安堵」の反応
それでも、ロンドン市場の反応は意外なものでした。昨晩のABFの株価は1.3%上昇して取引を終えたのです。これは、投資家たちが「これ以上のネガティブサプライズがなかった」ことに安堵のため息をついたためでしょう。今月初めに出された利益警告では、株価が1日で14%も急落し、大株主である億万長者のウェストン家の保有資産価値が12億ポンド以上も吹き飛ぶという事態が起きていました。
Primarkのスピンオフ構想は、長年にわたる「食品ブランド群の中にファッションブランドがあることの是非」を問う声に応える形で、昨年11月に発表されたばかりです。しかし、Primarkは昨年Paul Marchantが去って以来、最高経営責任者(CEO)が空席のままです。
グループ収益の約半分を稼ぎ出すこの激安衣料チェーンですが、売上の減少はABF全体にさらなる負担をかけています。他の部門がその穴を埋めるのに苦労しているからです。特にヨーロッパとアメリカの店舗では、客足の減少と消費者心理の低迷が顕著に表れています。
ABFのジョージ・ウェストンCEOは以前、分離には最大18ヶ月かかる可能性があり、食品とファッションの両方をロンドンで別々に上場させる計画になるだろうと述べていました。
今回の発表を受け、Shore CapitalのアナリストはABFの投資判断を「ホールド」に引き下げました。「ヨーロッパにおけるPrimarkの取引パターンや、米国食品事業の要素について、より完全な洞察が得られるのを待つ」としています。
ロンドンのオックスフォード・ストリートにあるPrimarkの旗艦店は、いつ行っても青い紙袋を抱えた買い物客で溢れかえっています。その熱気からは想像もつかないほど、経営の舞台裏では複雑な方程式が解かれようとしているのですね。
伝統的な砂糖ビジネスの構造的な不振と、成長エンジンであるはずのファッションビジネスの減速。この二重苦の中で、果たして「スピンオフ」という大手術はスムーズに進むのでしょうか。シティの投資家たちは、ウェストン家の次の一手を固唾を飲んで見守っています。
一言コメント
最近日本でも展開されているZARAやH&Mのようなファストファッションブランドよりさらに一段低い価格帯を狙うのがこのPrimarkです。しかしながら、そのデザイン性は一定の水準を確保しており倹約志向のビジネスマンや次々とサイズが変わる子供服需要などを取り込み成長しています。
特徴的な青色の紙袋もインパクトがあり、手軽なイギリス土産として良いかもしれませんね。
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