TOPIK問題を開いた瞬間、私は自分の実力を思い知った。
試験開始の音が鳴る。
その瞬間、教室の空気が一変した。
深呼吸をして、私はリスニングに集中した。
TOPIKのリスニングは、前半は比較的やさしく、後半になるにつれて一気に難しくなる。
だからこそ、最初の問題は絶対に落としたくなかった。
「これだけは間違えられない。」
その気持ちが強すぎたのか、聞き取れたはずの問題まで不安になる。
「これで合ってるよね?」
そう迷っている間にも、音声は待ってくれない。
頭の中ではまだ一つ前の問題を考えている。
でも現実では、もう次の問題が始まっている。
焦る。
聞き逃す。
また焦る。
その繰り返しだった。
後半になる頃には、会話に出てくる単語がまるで別の言語のように聞こえた。
「え…今、何て言った?」
聞いたことのない単語ばかり。
いつの間にか、「解こう」ではなく、「早く終わってほしい」と思っている自分がいた。
リスニングが終わり、今度は筆記。
51番、52番。
ここは何とか埋めることができた。
でも53番を見た瞬間、手が止まった。
当時の私は、「作文は捨てる」と決めていた。
だから書き方も、型も知らない。
問題を読んでも、何を書けばいいのか全く分からなかった。
潔く諦めた。
今思えば、その潔さはいらなかったのかもしれない。
そして最後は読解。
「読解は自分のペースで読めるから大丈夫。」
根拠のない自信だけはあった。
前半は何とか読み進められた。
でもページをめくるたびに、知らない単語が増えていく。
文章を読んでいるはずなのに、頭には何も入ってこない。
気づけば韓国語ではなく、記号を眺めているような感覚だった。
「私、本当に韓国語を勉強してきたんだよね?」
そんな言葉が、ふと頭をよぎった。
試験終了の合図が鳴った瞬間、張り詰めていた糸が切れた。
正直、3級にも届いていないかもしれない。
それが一番最初に思ったことだった。
でも、不思議だった。
悔しいはずなのに、絶望はしていなかった。
むしろ心の中には、別の感情が芽生えていた。
「次は、もっと解けるようになりたい。」
韓国に来る前の私なら、きっと「向いていない」と決めつけて終わっていたと思う。
でも、この日の私は違った。
できなかった問題が、次の目標になっていた。
帰宅して韓国人の友達に試験のことを話すと、笑いながらこう言われた。
「なんだかんだ言って、5級は取れてるんじゃない?」
もちろん私は首を横に振った。
「いや、絶対無理。」そう答えた。
その日は韓国人の友達が、
「試験お疲れさま!」
と、サムギョプサルをご馳走してくれた。
「いや、全然できてないのに。」
そう笑う私に、
「試験が終わったことがお祝い。」
と言って、ビールまで頼んでくれた。
結果なんてまだ分からない。
それでも「お疲れさま」と言ってくれる人がいる。
その時間が、何より嬉しかった。
勉強も、学校生活も、韓国での毎日も。
気づけば少しずつ、この国での生活が楽しくなっていた。
そして数週間後、TOPIKの結果が発表された。
恐る恐る画面を開く。
正直、3級も危ないと思っていた。
だから表示された数字を見た瞬間、思わず声が出た。
「え、4級取れてるやん。」
嬉しいというより、驚きの方が大きかった。
もちろん目標には届いていない。
でも、「全然できなかった」と思っていた私にも、ちゃんと積み重ねたものはあったんだ。
そう思えた、初めてのTOPIK。
この経験が、数か月後に「6級を本気で目指そう」と決意するきっかけになることを、この時の私はまだ知らなかった。

