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その「謎の少女」は最強、二つの目で世界の視線を釘付けにする』 第17話 

## 第17話 温もりの余韻と、新しい家

### 第1章

魔人との激闘を終え、僕はハルトにしっかりと抱きしめられていた。

全身から力が抜け、ずっしりと重くなった身体を預けながら、ハルトの体温から伝わる温かさに深く安心感を覚える。

先ほどまで命のやり取りをしていた戦場とは打って変わって、目の前にあるのは静かで、あまりにも温かい日常だった。

「……生きて帰ってきただけで偉いぞ。大切な弟なんだからな」

ハルトが微かに震える声でそう呟きながら、僕をさらに強く、壊れ物を扱うように優しく抱きしめてくれた。

その頑丈な背中にそっと腕を回し、僕はゆっくりと目を閉じる。

すぐ近くで、ここなが不安そうに、けれど少しだけ安堵した様子で声を震わせた。

「ねえ……本当に私たち、生きてるんだよね……?」

アイリが優しく微笑み、ここなの肩にそっと手を置く。

「そうだね。またアヌスに助けられたね」

「お姉ちゃん、当然だよ。僕はみんなを助けたかったんだから、気にしなくていいよ」

サクラは両手で顔を覆いながらも、ふっと柔らかく、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。

「だけど、私たちがこうして生きていられるのも、あなたのおかげよ。本当にありがとう、私の大切な家族……」

守られるばかりだった家族が、今こうして僕の無事を本気で喜び、温かく包み込んでくれる。その事実が、張り詰めていた僕の心を優しく溶かしていくようだった。

### 第2章

少しずつ静けさが戻ってきた頃、リビングのソファでスマホを開いていたアイリが、息を呑むような声を上げた。

「ねえ、これを見て……!」

画面には、先ほどの市街地での激しい戦いの様子が、すでにネットニュースやSNSのトレンドとして大きく取り上げられていた。

「えっ、僕のこと……?」

恐る恐る覗き込むと、僕の顔までは特定されていないものの、『謎のヒーローが魔人を瞬殺した』というセンセーショナルな見出しが踊り、一種の都市伝説的な話題としてネット中を席巻していた。

「よかった、顔まではバレてないみたいだね。目立ちたくないもん」

「そりゃそうだろ。特殊部隊が到着するよりもずっと早い段階で、魔人を三体も片付けたんだからな……ネットが騒ぐのも無理はないか」

ハルトは呆れたような、しかしどこか誇らしげなため息をつく。世界がどうざわめこうとも、僕たちがこうして無事でいられることのほうが何倍も大切だった。

### 第3章

アイリがリビングの壁に走った深いひび割れを見つめながら、困ったように眉を寄せた。

「それにしても、私たちの家はどうしようか。壁や窓が少し壊れちゃったし、修理しないと住めないよね」

「いっそのこと、引っ越さない?」

僕がそう提案すると、ハルトは即座に首を横に振った。

「いや、家を引っ越すなんてそう簡単にはいかないだろ。修理代だって――」

「僕が新しい家を買うからさ。みんなと一緒に住みたいんだ」

「「「えっ……?」」」

リビングにいた全員が絶句し、ハルトが慌てて声を荒げた。

「お前、家を買うってどういうことかわかってるのか!? 全部お前に任せるわけにはいかないだろ!」

「ここな、プールの他に何か欲しいものある? 希望の設備とか」

「えっ、ほんと!? じゃあ……お城みたいなのがいいかな!」

「よし、じゃあ大きくて、外にプールがある家を買おう」

「やったー!」とここなが無邪気にはしゃぐ。

アイリが呆れと笑いの混じった顔で突っ込んだ。

「いやいや、冗談じゃなかったんだ……? 二人とも行動力がすごすぎるというか、なんというか……」

お母さんも目を丸くして苦笑している。

僕はハルトの目をまっすぐに見つめた。

「冗談じゃないよ。ハルトにとってもその方がいいと思う。ここにはお父さんの思い出がありすぎて、色々と辛い思いをしちゃうでしょ。だから僕は、家族みんなと一緒にいられる新しい家に住みたいんだ。僕にとっては嬉しいことしかないんだから、気にしないで。みんなが笑ってくれたら、それでいいんだ」

僕の真剣な眼差しを受けたハルトは、何かを言おうとして口を開きかけ、そして観念したように肩の力を抜いた。

「……こいつの目を見てるとさ、もう分かったよ。勝手にしてくれ。俺は本当にこいつには勝てない……俺は最弱だな」

アイリがクスッと笑う。

「ハルトはやっぱり、アヌスには弱いよね」

こうして、ここなと僕のペースに流されるまま、私たちは新しい家を探しに行くことになった。

### 第4章

不動産の窓口を経て、実際に物件を内見することになった私たち。

あらかじめ用意していた資産や必要書類を確認しながら、アヌスは購入手続きを進めていく。

しかし、担当者から、未成年であるアヌス本人だけでは正式な契約を完了できないため、保護者であるサクラの署名と同意が必要だと説明された。

担当者が提示した金額を見た瞬間、ハルトもアイリも、お母さんも、全員が完全にフリーズして言葉を失った。

「……私たち、来る場所間違えたんだよ。帰ろう、お母さん……」

アイリがふらつきながらお母さんの袖を引く。

しかし、アヌスとここなはマイペースに家の中を探検していた。

「ここな、これ良くない!? プールもあるし、めちゃくちゃ広いよ! 2階建てで、お風呂場もすごく大きいの!」

「ほんとだ、めっちゃいい! アヌス、センスある!」

「じゃあ、これにしようか。すみません、ここ、買います」

アヌスが手続きを進める中、ハルトが慌てて割って入った。

「ちょっと待てお前ら! 値段を見たのか!?」

ここながハルトに言われて改めて契約書の金額に目をやる。

そこには **「3億円以上」** という桁違いの数字が書かれていた。

「えっと……数字が凄すぎてよく分かんない……つまり、ものすごーく大金ってこと?」

「当たり前だろ……!」

ハルトの頭がクラクラと揺れる中、アヌスがのんびりと振り返った。

「え? 家、買えたよ?」

家族全員が再びフリーズするのを見て、アヌスは心配そうに首を傾げた。

「みんないったいどうしたの? 体調でも悪い?」

(……やっぱりこいつ、色々とずれてる。本当に考えてるのか考えていないのか、全くわかんないやつだ……!)

ハルトは心の中で盛大にツッコミを入れたのだった。

### 第5章

こうして無事に新しい家を購入し、1ヶ月後には引越しも完了した。

新しい家は、これまでの恐怖や激闘の影をすっかり洗い流してくれるかのように広く、温かな光に満ちていた。過去の思い出に縛られることなく、ここから新しい家族の歴史を作っていくのだ。

リビングのソファでくつろぎながら、アヌスが切り出した。

「ねえ、夏になったらみんなで新しいプールに入ろうよ!」

「じゃあ今度、みんなで水着を買いに行こう!」

「いいね、それ行こう行こう! 僕、水着なんて持ってないし」

アイリも「私も新しい水着が欲しかったし、行こうかな!」と賛成し、お母さんは「私はあまり泳げないから、4人で行ってきてちょうだいね」と優しく微笑んだ。

ハルトは「まあ、俺もせっかくだし付き合うか……」と頭をかく。

数日後、アヌス、ここな、アイリ、ハルトの4人は、賑やかなショッピングモールへとやってきていた。

店頭に並ぶ色鮮やかな品々を眺めながら、売り場でアヌスが呟く。

「僕は、ハルトと同じようなシンプルな水着にしようかな」

ここなとアイリが即座に「「それは絶対にダメ!」」と声を揃えた。

「何がダメなんだよ」とハルトが首をかしげると、ここなが力説する。

「だって、アヌスは可愛い女の子なんだもん!」

「男だろ……!」とハルトがツッコミを入れるが、アイリが優しく微笑む。

「アヌスには絶対にかわいいのが似合うと思う! というわけで、私たちに着いてきて!」

有無を言わせず、アヌスはここなとアイリに連れ去られ、試着室へと押し込まれた。

「お姉ちゃん、こっちの白いのとかどうかな!?」

「私はこっちのリボン付きがいいと思う!」

外で待つハルトは、二人が選んでいる水着の華やかさに苦笑いしていた。

「あいつら、選ぶ服が派手すぎないか……?」

「だって、アヌス可愛いんだもん! 水着も可愛いのがいいの!」

しばらくして、カーテンが開き、アヌスが恥ずかしそうに顔を赤らめながら出てきた。

白を基調とした可憐なデザインの水着は、アヌスの美しい銀色の長髪と完璧にマッチしていた。

ハルトは心の中で思わず息を呑んだ。

(……白の水着、髪の色と同じで、マジでめちゃくちゃ似合ってる……)

ここなとアイリが大はしゃぎで駆け寄る。

「やっぱりアヌス、その水着大正解だよ!」

「とっっても似合ってる!」

ハルトも少し顔を赤らめながら、ボソッと告げた。

「……すげぇ似合ってるぞ、お前」

アヌスは頬を真っ赤に染めながら、恥ずかしそうに目を伏せた。

「う、うん……ありがとう。けど、これものすごく恥ずかしいんだけど……!」

結局、アイリとここなに押し切られる形でそれぞれの水着を購入し、私たちは満ち足りた足取りで新しい家へと帰路についた。

リビングで待っていたお母さんが、温かい笑顔で迎えてくれる。

「おかえりなさい。いい水着はあった?」

「お母さん、聞いてよ! アヌスの水着姿、本当にすっごく可愛かったんだから!」

「お母さんもプールの時が楽しみになるわね」

ハルトも少し得意げに笑った。

「まあ、実際に着たら多分みんな驚くぞ」

「ちょっと、ハルトお兄ちゃんの意地悪!」

アヌスがぷっと頬を膨らませるのを見て、新しいリビングにはまた、温かくて穏やかな家族の笑い声が満ちていったのだった。


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