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カツカレーの呼吸(ショート・ショート)

構成力もある。
画力も高い。
ただし、
彼には大きな欠点があった。


「ねえ、ちょっといいかな?」

私はできるだけ柔らかい口調で、
笑顔を崩さずに尋ねた。

編集者として、
どうしても聞かなくてはならない。

「この『カツカレーの呼吸 壱の型 らっきょう』って、何?」

佐藤くんは
目を輝かせて答えた。

「自分、カツカレーと鬼滅の刃が
大好きなんです!」

その純粋さは、
まぶしいほどだった。
だが、現実は甘くない。

「佐藤くん、それはダメだよ。
カツカレーはいい。
でも鬼滅の刃は……パクリになっちゃう。」

「え?でもこれ、オマージュですよ?
オマージュって知らないんですか?」

「知ってるよ。
もちろん知ってる。
でもね、佐藤くん。
君は今、プロを目指してるんだよね?」

私は言葉を選びながら、
静かに続けた。

「ギャグ漫画ならまだしも、
真剣なバトルものとして描くなら、
『カツカレーの呼吸』はちょっと……
いや、かなり厳しい。」

「じゃあ、『壱の型 ココイチ』の方が
よかったですか?」

「もっとダメだよ!」

思わず声を荒げてしまった。
佐藤くんは目を丸くして、
少し怯えたように言った。

「ちょっと怖いんですけど……
今日、どうしちゃったんですか?」

その無垢さが、逆に胸に刺さる。

「ごめん。でもね、佐藤くん。
私は君に本気で期待してるんだ。
プロの世界は、そんなに甘くない。
“真似した”と見なされたら、
君の漫画家人生が終わることだって
ありえるんだ。」

私はできるだけ冷静に、
噛んで含めるように説明した。

「じゃあ、どうすればいいんですか?
いつもダメ出しばっかりで、
具体的な指示がないんですよね。」

「じゃあ、はっきり言うね。
『◯◯の呼吸』とか『XXXの型』とか、
鬼滅の刃の要素は全部排除してほしい。」

佐藤くんは口を尖らせた。

「僕、言いましたよね。
カツカレーと鬼滅の刃が好きだって。
そしてこれはオマージュだって。」

「言ったね。
そしてそれを聞いた上で、
もう一度言うよ。
鬼滅の刃の要素は、
全部排除してほしい。」

会議室に沈黙が流れた。


佐藤くんは、
しばらく考え込んだあと、
ぽつりと答えた。

「……わかりましたよ。
そこまで言うなら、
取り下げます。」

私は安堵した。

彼はまだ若い。
時間をかけて育てていこう。

「じゃあ、来週までに新しい案を…」

そう言いかけたところで、
佐藤くんはリュックから
別の封筒を取り出した。

「こんなこともあろうかと、
僕、もう1本、準備してたんですよ。」

「すごいじゃないか。
ちょっと見せてよ。」

私は封筒を受け取ると
ワクワクしながら原稿を取り出し、
ページをめくった。


構成力もある。
画力も高い。

私は期待の新人に、
にっこりと微笑んだ。

「佐藤くん、
この『ゴムゴムのカツカレー』っていう
必殺技なんだけどさ……
別のに変えてみようか?」


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お疲れカツカレー チップをいただけるような素敵な雑記が書けたらなぁ~(遠い目)。