医学部教授選という「静かな戦場」
外から見ると、教授とは「優れた研究者が自然とたどり着く場所」に見えるかもしれない。
論文を書き、研究費を獲得し、教育に尽力すれば、その先に教授職がある。
しかし、実際の教授選は、それだけでは決まらない。
医学部の教授選は、研究業績、人柄、教育実績、診療実績、マネジメント能力、そして「この講座を10年後、20年後まで任せられる人物か」という総合評価の世界である。
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論文だけでは勝てない
もちろん業績は重要だ。
インパクトファクター、被引用数、研究費、国際共同研究。
どれも客観的な指標であり、教授選では必ず比較される。
しかし、似たような業績を持つ候補者が並ぶことは珍しくない。
そうなると、評価の軸は別の場所へ移る。
「一緒に働きたいか」
「若手を育てられるか」
「病院経営に貢献できるか」
数字では測れない部分が、一気に重みを増す。
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人事は科学ではなく、人間
教授選では、多くの人が候補者を見る。
学長。
病院長。
他科の教授。
外部委員。
それぞれ立場が違う。
ある人は研究を重視し、ある人は臨床を重視する。
教育を重視する人もいれば、大学経営との相性を見る人もいる。
だから「誰が一番優秀か」という単純な勝負にはならない。
「この大学に今必要なのは誰か」
という問いに対する答えを探す場なのである。
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見えない準備が何年も続く
教授選は、公募が始まってから準備するものではない。
その何年も前から始まっている。
学会活動。
共同研究。
後輩育成。
講演。
学内委員会。
他大学との関係。
「あの先生なら任せられる」という信頼は、一朝一夕では作れない。
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最後は「人」が選ばれる
教授になった瞬間から、仕事は研究だけではなくなる。
講座運営。
人事。
予算。
病院との調整。
大学との交渉。
未来の教授候補を育てることまで含めて仕事になる。
つまり教授選で選ばれるのは、「研究者」ではない。
「組織を率いるリーダー」である。
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医学部教授選は、大学の未来を決める選挙
教授が変われば、講座の文化が変わる。
採用方針が変わる。
研究テーマが変わる。
10年後の医療が変わる。
だから教授選は、一人の昇進ではない。
一つの大学の未来を選ぶイベントなのである。
外からは静かに見える。
しかし、その裏側では、多くの人の期待、思惑、信頼、そして長年積み重ねてきた努力が交差している。
医学部教授選とは、表舞台にはあまり現れない、医学界でもっとも静かで、もっとも重い意思決定の一つなのだ。
