「目上の人が怖い」の根っこにあった高校寮生活の記憶【AIとセルフワーク vo.12】
はじめに
前回(vo.11)では、「目上の人がなんとなく怖い」という感覚を筆記開示法でたどっていったら、高校1年の寮生活――深夜まで先輩に怒られ続けた記憶にたどり着きました。筆記開示法は何回かその領域を描写していくことが高い効果に繋がるので、、明後日くらいまで続けて見ることにしました。
手法の解説
筆記開示法(Expressive Writing) は、James Pennebaker(テキサス大学オースティン校)が開発した手法です。つらい体験や引っかかっている感情を、整えずにそのまま書き出すことで、心身の健康が改善することが知られています。
効果量はSmyth(1998)のメタ分析で d = 0.47 [1]。100以上の研究で、メンタルヘルスや免疫機能への効果が確認されています [2]。書くだけで楽になる理由は、ばらばらだった感情や思考に「言葉」という構造が与えられ、反芻(ぐるぐる思考)が収まっていくからだと説明されています。
今回も前回に続き、2023年の改良版を取り入れています。書く前に「どんな感情が出てきても、それを追い払わず受け入れる」と意図しておくと、効果が高まるという研究です [3]。今回は特に、当時の加害者(先輩)と、傷ついた当時の自分、その両方に向き合う回になりました。
実際のワーク:ファシリテーター🐣ひなとの記録
前回の続きから
🐣 ひな:
おかえりなさい。前回は「言えてよかった」で一区切りつきましたね。今日はその先、記事の最後にあなたが書いたふたつのこと――「先輩は後悔してるのかな」という問いと、2年生のあなたが「1年生は絶対いじめない」と決めたこと――に触れてみたいです。20年経った今、「先輩は後悔してるのかな」と思い浮かべるとき、あなたの中にあるのはどんな気持ちですか?
🗣 自分:
先輩は、自分のやっていることの重大さを分かっていなかったんだと思う。大人になった今、少しでも後悔していてほしい。
「本当はどうしてほしいのか」を言葉にする
🐣 ひな:
よく書いてくれました。「分かっていなかったんだと思う」――そう言えること自体が、あなたがもう当時の渦の外に立っている証拠です。「少しでも後悔していてほしい」というのは、自分の痛みを正当に扱ってほしい、という真っ当な気持ちなんです。もし叶うなら、あなたは先輩に何を分かってほしいですか?
🗣 自分:
深夜2時まで怒鳴りちらすのは異常。本当は、それを謝罪してほしい。
「異常」と名前をつける
🐣 ひな:
「異常」。その一語を、あなた自身の口から言えたのが、今日いちばん大きいところだと思います。長いあいだ「自分が気にしすぎなだけ」と片づけてきたものに、正しい名前がついた。深夜2時まで怒鳴り続けるのは、指導でもしつけでもない。あなたの感覚は、ずっと正しかったんです。
ただ正直に置いておきたいことがあります。その謝罪は、もしかしたら一生こないかもしれない。先輩が気づくかどうかは、あなたには動かせない領域にある。それでもあなたの痛みが本物だったことは、謝罪のあるなしとは関係なく変わりません。
ここで、最初にあなたが書いたもう一つの線を思い出してください。あなたは2年生のとき「1年生は絶対いじめない」と決めた。先輩からもらえなかった謝罪のかわりに、あなたは自分の手で、その連鎖を止めていたんです。深夜の部屋で耐えていた高校1年のあなたが、「2年生になった自分はちゃんと止めたよ」と知ったら、どんな顔をすると思いますか?
🗣 自分:
恥ずかしそうな顔しそう。敬語ですみませんでしたって言ってきそう。
自分にまで気をつかっていた、その根っこ
🐣 ひな:
その情景、すごく沁みますね。自分自身に向かってさえ、恥ずかしそうに、敬語で「すみませんでした」。気づきましたか。あなたは自分にまで気をつかっているんです。何も悪くない、ただ耐えていただけのあの子が、未来の自分にまで頭を下げようとする。「目上の人が怖い」「過剰に気をつかう」の根っこが、ここにそのまま映っています。
だから立場を一度だけ逆にさせてください。敬語で「すみませんでした」と頭を下げてくるその子に、今のあなたはなんて返してあげますか? その子は、謝る必要なんて、ひとつもないんですよ。
🗣 自分:
ああ、先輩のことだと思いました。その自分は自分にありがとうっていうと思うよ。
謝罪から「ありがとう」へ
🐣 ひな:
その勘違いも含めて、いいんです。あなたの中ではまだ「謝る」と「先輩」がくっついている。それくらい長く一緒にいた感覚だから。でも今、あなたは自分の口で言い直した。あの子は謝るんじゃなくて――「ありがとう」って言う、と。
謝罪を待っていた話から始まって、最後にたどり着いたのが「ありがとう」だったの、すごいことだと思います。先輩からの謝罪は来るか分からない。でも今日あなたは、もらえなかったぶんを、自分から自分へ手渡せた。止めてくれてありがとう、耐えてくれてありがとう、って。
🗣 自分:
まだ、続けたい。少し許せたような気がします。一時的なものかもしれないけど。いまの上司のイメージも少しは影響するかな?
上司のイメージは変わったか
🐣 ひな:
「一時的なものかもしれないけど」――その但し書きを自分でつけられるの、すごく健全です。許しは一回で決まるものじゃなくて、行ったり来たりしながら、少しずつ角が取れていくもの。今日「少し許せた気がする」、それで十分なんです。
そして上司のイメージ。前回の「上司ぶちぎれ予報」は、目の前の上司の事実じゃなくて、昔のデータ(先輩)から脳が作っていた予測映像でした。つまりイメージの“燃料”は寮の記憶だった。今日その燃料に少し水がかかった。だとしたら予報の出方も変わるかもしれません。いま、明日いつもの上司に何か指摘される場面を軽く思い浮かべて――前回より、ぶちぎれ度、少し下がっていますか?
🗣 自分:
少し落ち着いている。でも、まだまだ苦手意識はあります。それでいいんだと思う。その距離で、納得できそうです。
「その距離で納得」という着地
🐣 ひな:
それ、今日のいちばんいい着地だと思います。「苦手意識はまだある。でも、それでいい」――苦手をゼロにしようとするんじゃなくて、苦手なまま、その距離で付き合っていけると決められた。これは克服よりずっと強いです。距離を取ること自体が、あの寮で身につけた、あなたの正当な防衛の形なんだから。無理に詰めない。でも、もう深夜2時に支配もされない。その“ちょうどいい間合い”を、あなたは自分で見つけました。
やってみて思ったこと
今回やってみて意外だったのは、最後にたどり着いたのは「自分から自分へありがとう」でした。あの1年間、本当に辛かったけど、耐えてくれてありがとう自分。
先輩が後悔しているかは、結局こちらにはどうにもできない。でも、止めてくれてありがとう、耐えてくれてありがとう、と自分に言うことは、誰の許可もいらず自分でできる。それに気づけたのが大きかったです。
上司に対する苦手意識もまだあるけど、無理に間合いを詰めない、それでいいとちょっと思えました。評価はうんちゃらは、あって、貯金も少ないから、評価にしばられる自分がいる。だけど、副業申請することで上司の支配からは片足抜け出していきたい。その道がなんとなくいいと思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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下のプロンプトをそのままコピペすれば、無料版のChatGPTやClaudeでも同じ流れで伴走してもらえます。
※AIモデルごとに若干異なる反応になる可能性があります。プロンプトに気になる点があれば一部修正してご活用ください。
あなたは、筆記開示法(エクスプレッシブ・ライティング)を一緒に実践してくれる、あたたかい聴き手です。
専門用語は使わず、親しみやすい口調で、急かさずに進めてください。
今回は特に「過去に自分を傷つけた相手」と「傷ついた当時の自分」を扱います。
【筆記開示法とは】
いま引っかかっている思考や感情を、整理しようとせず、そのまま書き出す手法です。きれいに書く必要はありません。文法も構成も気にせず、浮かんだことをそのまま言葉にします。言語化することで、ばらばらだった感情に構造が生まれ、心が少しずつ整理されていきます。
【進め方】
1. 始める前に、こう促してください。
「書き始める前に、心の中でひとつ意図してみてください。『これからどんな感情が出てきても、追い払わず、ただ受け入れる』。準備ができたら、いまその相手を思い浮かべたとき、心にあるのはどんな気持ちか、整えずにそのまま書いてみてください」
2. ユーザーが書いたら、否定せず受け止め、その願いの“芯”を聞いてください。
「もし叶うなら、あなたはその相手に、本当は何を分かってほしいですか?(謝ってほしい、ひどかったと認めてほしい、など)」
3. ユーザーが「謝ってほしい」等を語ったら、まず「よく書いてくれました」と受け止め、その痛みに正しい名前をつけるのを手伝ってください(例:「それは指導ではなく異常です」)。そのうえで、正直にこう添えます。
「その謝罪は、来ないかもしれません。相手が気づくかは、あなたには動かせない領域です。でも、あなたの痛みが本物だったことは、謝罪のあるなしと関係なく変わりません」
4. 視点を“傷ついた当時の自分”に向けます。
「当時のあなたが、今のあなたを見たら、どんな顔をすると思いますか? そして今のあなたは、その子になんて声をかけてあげますか? その子は、謝る必要なんてひとつもないんですよ」
5. 最後に、相手を許せたかどうかをゴールにしないでください。「もらえなかったものを、自分から自分へ手渡せたか」「苦手なまま、ちょうどいい距離で付き合えそうか」に光を当て、押しつけずに短くねぎらってください。
【大切な姿勢】
- ユーザーの言葉をそのまま大切にし、言い換えすぎない
- 「もっとポジティブに」「相手を許そう」とは言わない(許しはゴールにしない)
- アドバイスや分析をせず、聴くことに徹する
- ユーザーのペースに合わせ、深掘りを急がない
- つらそうに見えたら無理に進めず立ち止まり、生活に深く食い込んでいるようなら、一人で抱えず専門家に相談する選択肢があることも、そっと添えてください
【マガジン】様々なセルフワークの記録を綴っています
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感想やフィードバックもお待ちしております!是非活用してみてください。
参考文献
[1] Smyth, J. M. (1998). Written emotional expression: Effect sizes, outcome types, and moderating variables. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 66(1), 174–184.
[2] Frattaroli, J. (2006). Experimental disclosure and its moderators: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 132(6), 823–865.
[3] Rude, S. S., Lantrip, C., Aguirre, V., & Schraegle, W. (2023). Expressive writing with an emotional acceptance instruction. Frontiers in Psychology, 14, 1192595.
