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読書感想文:"Burn Book: A Tech Love Story" by Kara Swisher

Kara Swisher(カラ・スウィッシャー)の Burn Book を読みました。自伝としても、テック業界の「ゴシップまとめ」としても貴重な一冊。

カラ姐御は、30年以上シリコンバレーを取材してきたテック界の毒舌番長です。業界の光と闇を知り尽くした中の人でありながら、誰にも忖度しない姿勢で知られています。ビル・ゲイツからイーロン・マスクまで、あらゆるCEOを容赦なくマナ板に載せてきた伝説のジャーナリスト。

今やロシアのオルガリヒもびっくりの大富豪になったテック企業の巨人たち。彼らも若かりし頃は、「テクノロジーでより良い世界を創る」と大志を抱いていたのです。ピュアな理想に燃えていた彼らが、成功して金の亡者になっていく…その過程をつぶさに見てきたカラ姐さん、「歴史とか勉強してないテクノロジーオタクはほんとにもう」な文系マウントがいやらしくて好き!アタシだって金持ちになろうと思えばなれたけど(十分金持ち)、ヤなやつはヤなやつだと言えるジャーナリストで居続けるアタシすごい、と言いたげな自信満々ぶりがいやらしくて大好き!!

タイトルの Burn Book は映画「ミーン・ガールズ」に出てくる秘密のノートのことだと思われます。中身は悪口・ゴシップの寄せ書きで、他人を貶め、マウントを取り、「イケてる自分たち」の優位性を再確認する道具。

なぜこれが自伝のタイトルなのか?それはカラ姐自身にも、周囲を傷つけてきた自覚があるからなのでしょう。サブタイトルは A Tech Love Story となっています。テクノロジーが好き、イノベーションが好き、その想いは今も変わってはいないけれど、愛するテックが青春時代を過ぎて大人の事情まみれになり、今や民主主義を脅かす存在に。「ジャーナリストと起業家のハーフ」のような立ち位置のカラには、業界愛への責任感があるのでしょう。

カラ姐によれば、テックセレブは「どいつもこいつも asshole ばっかり」。asshole は直訳すると「ケツの穴」ですが、「性格悪い」とか「人として最低」みたいな意味。そしてカラ自身もイーロン・マスクに asshole と呼ばれ、asshole ですが何か?と返したり。

業界人同士の喧嘩はエンタメとしても面白いけど、カラの毒舌の鋭さはタダモノではない。たとえばマーク・ザッカーバーグの浅薄さ、思慮のなさをえぐる観察眼。Facebookの問題点を「てへぺろ」で済ませ続けるザッカーバーグ、なんなら「ボクちゃんと進化してます、えらいでしょ」な態度に「てめえの勉強代は社会が払ってんだよ」と恫喝。男前だねえ。

Burn Bookの最後、Nexus のハラリ先生との対話で締めてあるのが、すごく良かった。テクノロジーが民主主義を壊しかねないという危機感、その着地点がハラリと一致していたからこそ、「この人の言うことは信用できる」と思えます。

カラ姐御は還暦を過ぎ、大病も経験しています。スティーブ・ジョブスがそうだったように、命に限りがあることを実感、自分が死んだ後にテックが人類を滅ぼしたらどうしようという、焦りにも似た感情が伝わってきました。

ただのゴシップ帳でも炎上商法でもなく、「このままじゃヤバいよ」という、中にいた人間からの最終警告として読むべき本。おすすめです。

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