【読書感想】宮部みゆき『火車』あらすじと感想 | 借金こわい、マジこわい。
※ブログからのリライト記事になります。
スカスカの本棚から「火車」を手に取るまで
ある日、パソコンのメンテナンスで突然二日間の強制休養が決定。
「せっかくだし、本でも読むか」と久々に本棚を覗いてみたら…まあスッカスカ。
度重なる引っ越しのたびにブックオフへ持って行ってしまった小説たち。脳みその容量と比例して、棚もスカスカになっておりました。スカスカ具合、ちょっと笑えるくらい。
そんな中、ぽつんと残っていた一冊が、宮部みゆきさんの『火車』。
宮部作品は一時期ハマって買い集めていたけれど、その多くを手放してしまった今、この一冊だけは手放せなかった…そのくらい強烈なインパクトのある物語です。
初読時の「ページをめくる手が止まらない」感覚は今も鮮烈に覚えています。
今回数年ぶりに再読して、結末を知っていてもやっぱり引き込まれた…でも二日では読み切れず、無念のタイムアップ。
あらすじ(ネタバレあり)
脚を負傷し、職務から離れて療養中の刑事・本間俊介。
そんな彼のもとに、遠縁にあたる男・栗坂和也が訪ねてきます。
相談内容は、婚約者・関根彰子の行方を探してほしいというもの。
カードを作ろうとした際、彼女に「自己破産歴」があったことが判明。そのことを問いただした翌日に、彼女は何の説明もなく失踪してしまったというのです。
最初はあまり気が進まなかった本間ですが、家とリハビリの繰り返しに飽きていたこともあり、「大きな成果は期待しないように」とクギを刺したうえで依頼を引き受けます。
調査を進めていくうちに、彼女の職歴がすべて嘘であること、そして驚くべき事実——「彼女は“本物の関根彰子”ではない」という衝撃の展開へ。
いったい本物の彰子はどこへ?
なぜ他人が彼女の名を名乗っているのか?
刑事としての本能と、個人的な好奇心に突き動かされ、本間は「ニセ彰子」の素性を追い始めます。
感想:手に汗握る「アハ体験型」ミステリ
小さな違和感が次第に大きな謎を呼び、やがて全貌が明かされていく構成は、読者に何度も「おおっ!」というアハ体験を与えてくれます。
偽の彰子と本物の接点、ふたりの過去にある共通の凄惨さ、なぜ成り代わりが起きたのか——
少しずつパズルが埋まっていく快感は、まさにミステリの醍醐味。
宮部さんの筆致はいつもながら人物造形が丁寧で、登場人物たちは「こういう人、いるいる」と思わせてくれるリアリティがあります。
個人的に印象に残ったのは、主人公・本間の周囲の人々。
家政夫の井坂さん、同僚刑事の碇さん、息子の智くん、彰子の幼なじみで重要な手がかりを持つ“タモッちゃん”など、誰もが身近にいそうな人物ばかり。
むしろ本間がいちばん印象が薄くて、再読中はずっと若かりし日の三田村邦彦さんで脳内再生していました(笑)
クレジット破産のリアルと“情報ガバガバ時代”
本作が発表されたのは1992年。
描かれている時代背景は1980年代、つまり“石器時代”……とまでは言わないけれど、今とはまったく違う「個人情報のゆるさ」に驚かされます。
ニセ彰子が勤めていた会社の社長さんなんて、刑事と名乗っていない本間に、本人の履歴書をホイホイ渡しちゃうんですから。悪気はないけど情報管理の意識が低すぎる!
こういう善人に見える“お人好し系危険人物”って、実際にもいそうでゾッとします。
読後に残る、リアルすぎる「恐怖」
『火車』の背景には、昭和50年代のサラ金パニックと、その後のクレジット破産の社会問題があります。
見栄を張るために借金し、首が回らなくなる。
利息の雪だるま式増加、催促の嵐、社会的な信用の崩壊——
「こんな地獄、絶対に味わいたくない」と心から思わされました。
自分の金銭感覚を律するのに、この作品と『闇金ウシジマくん』はほんとうに役立ちます。
見栄や欲望に流されず、身の丈に合った生活をすることの大切さを改めて実感。
まとめ:犯人が出てこないからこそ面白い!
『火車』は直木賞候補にもなった作品ですが、最終的には「犯人が最後まで出てこないのがよくない」という理由で受賞を逃しています。
……バカバカッ!そこが面白いところなんだよ!!
とはいえ、山本周五郎賞は受賞しており、その後何度もドラマ化されている名作です。
ただし、ドラマ版は尺の都合で省略されている部分も多く、やっぱり小説でじっくり読むのが一番。
読み応えは抜群です。未読の方は、ぜひ。
※Amazonのアソシエイトとして、カプリは適格販売により収入を得ています。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!
