記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【映画感想】『ムード・インディゴ~うたかたの日々』| ビターなラブ・ファンタジー

※Amazonのアソシエイトとして、カプリは適格販売で収入を得ています。


2013年公開。

『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー監督が、ロマン・デュリスとオドレイ・トトゥを主演に迎え、幻想的な映像美で描いたラブストーリーです。

原作はボリス・ヴィアンの小説『うたかたの日々』。現実と空想が溶け合うような独特の世界観の中で、恋と喪失、そして人生の儚さが描かれます。

共演はオマール・シー。



あらすじ

裕福な青年コランは、一度も働いたことがないまま、使用人兼料理人のニコラと気ままな生活を送っていた。

ある日、友人シックから恋をしたという報告を受ける。相手は現代思想家パルトルを通じて知り合ったアリーズという女性で、実はニコラの姪だった。

恋人がいないのは自分だけだと焦ったコランは、ニコラの紹介で開かれた犬の誕生日パーティーへ参加する。

そこで出会ったのが、美しく穏やかな女性クロエだった。

最初は緊張してうまく話せなかったものの、一緒にダンスを踊ったことで急速に距離が縮まり、やがて二人は恋人同士になる。

半年後、コランはクロエにプロポーズし、二人は幸せな新婚生活を始めた。

一方、シックはコランから結婚資金として大金を受け取るが、そのお金を恋人との将来ではなく、崇拝するパルトルの講演会や書籍につぎ込んでしまう。

そんな矢先、クロエが突然胸の痛みを訴え、原因不明の病で倒れてしまう。

医師が下した診断は、肺に睡蓮の花が咲くという奇病だった。

治療には大量の花が必要だと言われ、コランは愛する妻を救うため、生まれて初めて働くことを決意する。

しかし慣れない重労働と高額な治療費に追われ、裕福だった生活は少しずつ崩れていくのだった。



感想

緊張して失敗するくらいが、人間らしくていい

パーティーでクロエに一目惚れしたコランは、勇気を出して話しかけます。

「デューク・エリントンに『クロエ』という曲がある」と話題を振りますが反応はいまひとつ。

諦めて帰ろうとしたものの背中を押され、もう一度挑戦します。

ところが今度は緊張しすぎて、お菓子を頬張ったままむせ返り、借りたハンカチで慌てて口元を押さえます。

さらにシャンパンでもまた咳き込んでしまう始末。

決して格好いい出会いではありません。

でも、初対面の相手を前に緊張するのは誰でも同じです。

良く見せようとすればするほど空回りしてしまうこともあります。

そんなときは無理に取り繕うより、「実はすごく緊張しています」と素直に伝えてしまうほうが、かえって場の空気が和らぐこともあります。

完璧である必要はありません。

少しくらい失敗したほうが、人間らしさが伝わるのかもしれませんね。

愛する人のために初めて努力を知ったコラン

クロエの病気が判明してから、コランの人生は一変します。

それまで働いたことも苦労したこともなかった彼が、妻を救うためだけに必死で働き始めるのです。

毎日枯れてしまう大量の花を買い続けるため、家財を売り、慣れない仕事に耐え、空いた時間はすべて看病に費やします。

罵倒されても働き続ける姿には、前半の裕福でお気楽だった青年の面影はありません。

介護は本当に大変です。

介護する側も、される側も、精神的にも肉体的にも疲れ果ててしまいます。

「生きてほしい」という思いと、「少しだけ自分の時間がほしい」という気持ちは、決して矛盾するものではありません。

だからこそ、一人だけで抱え込まず、周囲の人や支援機関の力を借りることも大切です。

それでも、大切な誰かのためにここまで頑張れる相手と巡り会えたこと自体は、とても幸せなことなのではないでしょうか。

恋人でも家族でも、あるいはペットでも、「この人を守りたい」と思える存在は、人生そのものを支える大きな力になります。

大切なものの優先順位を間違えない

対照的なのがシックです。

コランから受け取った結婚資金を、恋人との生活ではなく、パルトル関連の本や講演会につぎ込み続けます。

その結果、破産し、恋人アリーズとの関係も破綻してしまいました。

誰かを夢中で応援する「推し活」自体は素敵なことです。

好きなアーティストや俳優、アニメやゲームのキャラクターに元気をもらう人もたくさんいます。

ですが、生活を壊してまでのめり込んでしまえば、自分だけでなく身近な人まで不幸にしてしまいます。

趣味は人生を豊かにしてくれるもの。

だからこそ、自分の生活や大切な人との関係を犠牲にしない範囲で楽しみたいものです。

可愛らしい映像とは裏腹に、切なく苦い物語

前半はカラフルで遊び心にあふれていた世界が、物語が進むにつれて少しずつ色を失い、暗く沈んでいきます。

家は狭くなり、家具は痩せ細り、幸せだった世界そのものが主人公たちの心を映し出すように変化していく演出は圧巻でした。

それでもクロエは、かつてこんな言葉を口にします。

「二人でいられるなら何度でもやり直せる。成功するための時間は一生ある。」

その願いは叶いませんでした。

しかしコランは、クロエと過ごした日々を胸に抱きながら、きっとまた前を向いて歩き出すのでしょう。

可愛らしいファンタジーを想像して観ると、その切ない結末に驚かされます。

それでも、この美しくも儚い世界観は、一度観たら忘れられない魅力にあふれています。ぜひ映像美にも注目してほしい作品です。


いいなと思ったら応援しよう!

カプリ よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!

この記事が参加している募集