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BYDが本当に狙っているのは、ラッコの5年後かもしれない

BYDのRACCO(ラッコ)を見ていて、最近もう一つ気になっていることがある。この車そのものが何台売れるか、という話ではない。

5年後。2031年くらいまで時間を伸ばして考えると、BYDの日本戦略はかなり面白く見えてくる。
今の日本でBYDを買わない理由はいくつもある。

中国メーカーだから。
近所にディーラーがないから。
整備が心配だから。
中古価格が分からないから。
そもそもEVに乗ったことがないから。

車は数百万円する買い物なので、スペックと値段だけでこの壁を全部壊すのは難しい。

だったら、BYDは時間を使えばいい。

そう考えるとラッコの意味が少し違って見える。
ラッコは、海外で売っている小型EVを日本へ持ってきた車ではない。
日本の軽自動車規格に合わせ、背を高くし、スライドドアまで付けた。

つまりBYDはすでに、
「中国で売れている車を日本でも売る」だけではなく、

「日本で売れそうな車を、日本向けに作る」ところまで来ている。

これが私は結構重要だと思っている。

そして一方で、BYDグループはミニバンを作った経験がないメーカーでもない。むしろ逆だ。

BYDには大型PHEVミニバンの「Xia」があり、プレミアムブランドのDENZAには「D9」がある。
D9は全長5.2メートルを超える大型3列MPVで、2列目に豪華な独立シートを備える。
日本車で言えば、明らかにアルファードやヴェルファイアのような高級ミニバン市場を意識できるクラスだ。

つまり、「BYDは日本向けミニバンを作れるのか」ではない。
もう大型ミニバンは作っている。
では、そのメーカーが日本専用の軽スライドドア車まで作り始めた時、その中間にある市場を本当に放っておくだろうか。私はそこが気になる。

日本のファミリーカー市場には、かなり分かりやすい階段がある。
軽自動車ならN-BOXやスペーシア。
その上にシエンタやフリード。
さらにノア/ヴォクシー、セレナ、ステップワゴン。
そしてアルファード/ヴェルファイア。

今のBYDを見ると、この階段の一番下にはラッコを置いた。
そしてグループとして見れば、一番上にはD9のような大型高級MPVをすでに持っている。
空いているのは真ん中だ。

私はここを5年後までずっと空けておくとは、あまり思えない。

もちろん、現時点でBYDが日本向けのシエンタ級やノア級を発売すると発表しているわけではない。これは完全に私の予想である。

ただ、ラッコ以前なら、「中国メーカーがわざわざ日本専用の5ナンバー級ミニバンなんて作るだろうか」と思ったかもしれない。

でも今は、軽自動車という日本独自規格のために専用車を作ってしまった。しかもスライドドアまで付けた。だったら、その次を考えたくなる。

ここで5年という時間を置いてみる。

2026年。

ラッコが発売される。まだBYDは珍しい。店も少ない。
中国メーカーへの抵抗感もある。

一方で、日産サクラやHonda N-ONE e:など、日本メーカーの軽EVも増えていく。東京都などの高額な補助金によって、新車EVのストックも少しずつ積み上がる。

2027年。
2028年。

BYDの店舗や整備拠点が増えていく。
街でBYDを見る機会も増える。
ラッコも時々走っている。

そして2029年、2030年。

最初に売られた軽EVが中古車市場へ出てくる。
補助金によって大量に新車登録されたEVも、中古車になれば全国へ流れる。
地方の中古車店にサクラがある。N-ONE e:がある。ラッコもある。

そして、「EVが欲しいわけではないけれど、安かったから買った」という人が少しずつ増える。

この人たちは、次に車を買う時にはもうEV初心者ではない。
同時にBYDも、今よりずっと見慣れたメーカーになっているかもしれない。
近所に店がある。街で走っている。知人が乗っている。中古車も売っている。

それだけで、「よく分からない中国メーカー」から、
「一応知っているメーカー」には変わる。

私は、自動車メーカーにとってこの差はかなり大きいと思う。

そして2031年。

ここでBYDの店に、日本向けのスライドドアミニバンが置かれていたらどうだろう。

シエンタやフリードくらいのサイズ。
あるいはノアやセレナくらいのサイズ。

両側スライドドア。
5人から7人乗り。
日本の駐車場で扱いやすい車幅。
完全EVでもいい。
あるいはBYDが得意とするPHEVでもいい。

普段の買い物や送迎なら電気だけで走り、家族旅行ではエンジンも使える。
そして国産車より少し安い。
2026年にそんな車を突然出すのと、5年間ラッコを売った後に出すのでは意味が違う。

今なら、「BYD? 中国車でしょう」で候補から外す人も多い。

でも5年後、「ラッコならよく見る」「近所にもBYDの店がある」
「友人が中古のBYDに乗っている」「もう何年も日本で売っている」
となっていれば、
「一応見に行ってみるか」まで持っていけるかもしれない。

それで十分なのだと思う。
BYDがいきなりトヨタを倒す必要はない。

シエンタを買う人の候補が、シエンタ。フリード。以上。
だったところに、

シエンタ。フリード。BYDのあれも一応見ておこう。

が加わる。

まずはそれでいい。
しかも軽自動車より、シエンタ級やノア級の方が車両価格を上げやすい。
上級グレードや装備も売りやすい。

ラッコが日本市場への入口だとすれば、その先のファミリーカーは収益を取りに行く商品にもできる。
さらに上には、すでにD9のようなアルファード級の大型MPVを作れる技術と商品がある。

そう考えると、BYDの日本市場の商品展開は、
下からラッコ。
上から大型MPV。

その間を埋めていく。
そんな姿にも見えてくる。

もちろん、全部私の勝手な予想だ。
BYDが5年後に日本専用ミニバンを発売する保証などどこにもない。
ただ、私はラッコの今年の販売台数だけを見て「売れた」「売れなかった」と判断するのは少し早いと思っている。

その5年間に、中古EVは増える。EVに乗った経験のある人も増える。
BYDの店舗も増える。BYDという名前にも少しずつ慣れていく。
そしてその頃、すでにアルファード級のミニバンを作れるメーカーが、日本市場のど真ん中にあるシエンタやノア級へ手を伸ばしてきたら。

2026年に撒いたラッコという種の意味は、そこで初めて分かるのかもしれない。

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