『キャリア人物伝(19)』:レヴィン~変化の「場」で人は変わる~【Aランク】
「人の行動は場の影響を受けている」
その発想から現代の人間理解を
大きく前進させたのが
心理学者 クルト・レヴィン です。
キャリア論だけでなく
組織開発・人材育成にも
大きな影響を与えました。
■ レヴィンの経歴と理論の背景
1890年、ドイツに生まれた
クルト・レヴィンは
ユダヤ系の家庭に育ちました。
時代は反ユダヤ主義が強まりつつあり
自らのルーツや居場所に
葛藤を抱く青春期を過ごします。
大学では哲学や心理学を学び
ベルリン大学で心理学者として
ゲシュタルト心理学の影響を受けながら
人の行動の背景を探求しました。
しかしナチス政権の台頭により
研究の継続が困難となり
1933年、アメリカへと亡命します。
亡命先で彼が打ち立てたのが
「人は文脈の中で動く」という
革新的な視点でした。
個人の性格だけでなく
その人を取り巻く環境との関係にこそ
行動の本質があると見抜いたのです。
この「場の理論(field theory)」は
社会心理学と教育心理学の橋渡しとなり
現代のキャリア支援・組織開発の礎となりました。
【1】「場の理論」B=f(P・E)
レヴィンは人の行動(B)は
人(P)と環境(E)の関数であると説きました。
つまり
「性格だけ」でも「環境だけ」でもなく
その人が置かれている場が行動を決める。
この理論は、キャリア相談において
「本人の内面+環境の影響」の両方を
見ようという視点を与えてくれます。
【2】境界人(マージナルマン)
レヴィンは、自身の経験から
社会や文化の間に立つ人=境界人に注目しました。
🔹 境界人(マージナルマン)とは?
異なる文化や立場の「はざま」で
自分のあり方に揺れる人のこと。
(例)
・ 外国にルーツをもつ子ども
・ 転職して新しい職場に入った人
・ 進路に迷う学生や若手社会人
支援現場でも
「どちらの価値にもなじめず
不安定な状態」にある人は多く
この概念は非常に実践的です。
【3】Tグループ(トレーニング・グループ)
Tグループとは
人間関係や自分の言動に
気づくための訓練法です。
レヴィンの死後
弟子たちにより発展し
企業・教育現場で広く取り入れられました。
🔹 Tグループの特徴
・ 目的やテーマを設けず
「ここで起きる出来事そのもの」が題材。
・ 自分のふるまいが
他者にどう影響しているかを
フィードバックによって実感していく。
・ 役割を持たない「素の自分」での対話を重視。
この手法は
SGE(構成的グループエンカウンター)や
組織開発の「体験学習法」などにも応用されています。
【4】キャリア支援への応用
・ クライエントの「行動」だけを見るのではなく
その人を取り巻く「場」に注目する。
・ 境界にいるクライエントには
「安心と自己理解」の場づくりが鍵。
・ チームや職場の関係性においても
Tグループ的な「気づきの共有」が効果的。
次回は面談技法を技術として体系化して
世界中のカウンセラーに影響を与えた
アレン・E・アイビィをお届けします!
