必ず"ストーリー"で語れるようになる「人材価値創造モデル」
自社の人的資本経営の取り組みや人事戦略を表す際に、課題(マテリアリティ)や数字(KPI)の羅列ではなく、一貫性のある「ストーリー」として表現すべきである、という投資家等からの声を見る・聞くことが多くあると思います。
また、社内(経営陣・事業リーダー・管理職・社員)に対しても、人事の考えや取り組みを理解してもらうために「ストーリー」で説明することが効果的です。
今回は、自社の人的資本経営の取り組み/人事戦略をストーリー化するためのツール/フレームワークとなる「人材価値創造モデル」(下図)を紹介します。

(本記事の後半では、上の1〜33に取り組み領域の名称が入った「完全版」を掲載しています)
人的資本経営の取り組み(または人事戦略)を「ストーリー」で語るとは?
「採用はこうやっています」「人材開発はこうやっています」といった施策の単なる列挙は「ストーリー」ではありません。
「ストーリー」で語るとは、例えば、「事業ポートフォリオの変革に向け、成長・新規事業に必要なスキルを持つ人材を〇〇名確保する。そのために採用・育成を強化し、適材適所ならぬ『適所適材』の異動・配置を行います。さらに社員のモチベーションを高めるため、社内公募による自律的なキャリア選択の機会も提供する」といった展開です。 つまり、「何のために・何を・どう繋げてやるのか」という目的と施策間の因果関係(ストーリー)を明確にして"語る"ことを意味します。
「人材価値創造モデル」とは?
この「人材価値創造モデル」(上図)は、人的資本経営や人事戦略のストーリー化のために作成したフレームワークです。その特徴は次の通りです。
I.インプット → II.1人ひとりの活躍 → III.アウトプット → IV.アウトカム の4つのフェーズで構成
人的資本経営における標準的な取り組みを、上図の番号の通り、合計33の取り組み領域に分類【1〜33の具体的な内容については後半で1つずつ解説します。】
上図の矢印の通り、全体を左から右に"語る"ことで、ストーリーとして表現することが可能
「人材価値創造モデル」の使い方
この「人材価値創造モデル」を使って、自社で取り組んでいる人的資本経営/人事戦略上の多岐にわたる人事制度・施策の関連性を整理し、体系立て、一貫性のある「ストーリー」とする方法を紹介します。
下の囲み記事は、人事部門内の管理職以上を集めたワークショップによる進め方例です。
【Step1】 自社で現在、実施している人的資本経営に関する制度・施策を、「人材価値創造モデル」に当てはめてマッピングする。
現在、実施している様々な人事関連の制度や施策を、「人材価値創造モデル」上で該当する「取り組み領域(1〜33のいずれか)」に当てはめてマッピングします。
人材価値創造モデルを紙に出力して、その上に各制度・施策の名称・目的・対象者・内容を書いた付箋(1つの制度・施策で1枚の付箋)を貼っていきます。または、オンライン上で皆でモデルに書き込んでいきます。
【Step2】マッピング結果を俯瞰して、取り組みの整合性や一貫性をチェックする。
人材価値創造モデル上でマッピングした結果を確認し、整合性や一貫性が不十分な領域や、制度・施策が欠落している領域を洗い出します。また、自社の人的資本経営の中では、特に重要ではない取り組み領域があれば、対象外とします。
この段階で、そもそも目的や、対象課題・期待効果、中核となる対象者像が明確になり切っていない/漠然とし過ぎている制度・施策が洗い出されることも少なくありません。
【Step3】今後のアクション(制度・施策の改定や新規追加等)を設定する。
【Step2】の検討結果を踏まえて、今後(1年以内/2年後/3年後)、①改定すべき制度・施策や②新規に導入すべき制度・施策を整理し、実行プラン/スケジュールを作成します。
改定・新設すべき制度・施策件数が多い場合は、この段階で優先順位づけを行います。優先順位づけの基準は、「ストーリーとして、一連の流れの中でのその制度・施策の必要不可欠な度合い(その制度・施策が無いとストーリーが成り立たない/説明ができない)」です。
【Step4】全ての制度・施策をつなげて「ストーリー」を記述する。
人材価値創造モデルの一番上にある「パーパス/経営戦略・計画」を起点として、取り組み領域1〜33を順番に"語る"ことで一貫性のあるストーリーとなります。
ストーリーは、文章で書いてみることをお勧めします(文章で書くと"ごまかし"が利かないため)。このnote記事の後半では、取り組み領域1つずつについて、<ストーリー例>として"下書き"を用意しているので、そこに次のポイントを"肉付け"して活用して下さい。
下にある<ストーリー例(ストーリーのサンプル文章)>に肉付けするポイント:
① 自社の具体課題
② 自社の具体的な制度・施策名やその目的・期待効果・対象者・具体内容
③ 現時点までの取り組み状況(制度・施策の利用社員数等)や今後の予定
「人材価値創造モデル」の活用場面
この「人材価値創造モデル」は、対外情報開示や社内の共通理解のためのストーリー記述以外でも、次の様な場面でも活用することができます。
人事戦略の設計: 新たに人事戦略を設計する際に、一貫性のある戦略となるように、このモデルに当てはめて検討する。
組織・人材課題の分析: 現状の課題または将来の想定課題を分析する際に、このモデル上の各取り組み領域について分析する。
KPIの設定: 有効なKPIとなるように、このモデル上でインパクトが大きい領域にKPIを設定する。
人事データの活用方法の設計: 人事データの具体的な活用場面を、このモデル上の取り組み領域から探索する。
人事部門内の共通言語の醸成: 人事部門内で人事の考え・取り組みを整理するための"共通言語"として、このモデルを使用する 等
「人材価値創造モデル」の内容の紹介 〜モデルを構成する33個の取り組み領域〜
ここからは「人材価値創造モデル」を構成する33の取り組み領域を1つずつ、【I.インプット】〜【IV.アウトカム】のフェーズに分けて紹介します。
取り組み領域1〜33の名称を埋めた"完全版"の「人材価値創造モデル」はこの記事の一番最後をご参照下さい。

1〜33の各取り組み領域には、ストーリーの"サンプル文章"となる<ストーリー例>を記載しています。 ストーリー記述時の"下書き"としてご活用下さい。
1〜33の各取り組み領域に、サンプルとして<ストーリー例>を記載しています。
各取り組み領域の<ストーリー例>の文章を"下書き"として、自社の具体的な取り組みを上書き・追記・補足して下さい(下の「人材価値創造モデル」の使い方もご参照下さい)。
「人材価値創造モデル」の使い方 〜ストーリーの具体化のために〜
サンプルの<ストーリー例>を、自社・自組織の状況に合わせてより具体化するために、次の3点を実施して下さい。
① それぞれの<ストーリー例>の中に、自社・自組織が抱えている「現状の課題または将来想定される課題」を追記し、どのような課題を解決するために取り組んでいるのかが分かるようにして下さい。
② <ストーリー例>内にサンプルとして記載している制度や施策を、自社・自組織で実施されている制度・施策に置き換え、目的や期待効果・主対象者・内容や特徴を可能な限り具体的に記述して下さい。
③ 各取り組み領域について、現在までの進捗状況(例: 制度・施策の参加人数等)や 今後の予定・計画を補足して下さい。<ストーリー例>の該当箇所の文章を、進捗状況や今後の予定・計画に合わせて、過去形・現在進行未来形に修正して下さい。

【1 必要な人材(質・量)の定義】
<ストーリー例("下書き"となるサンプル文章)>
**各取り組み領域の<ストーリー例>の文章を"下書き"として、自社の具体的な取り組みを上書き・追記・補足して下さい。**
中長期の時間軸で、パーパスの実現や経営戦略・計画の実行のために特に必要となる人材(スキル×人数)を定義しています。その上で、現状と比べて不足が想定される人材領域(スキル×人数)を重点人材領域として設定しています。
今後必要となる人材は次の視点で定義しています。
今後必要となる人材の設定例:
① 事業ポートフォリオ上の重要事業(成長事業や中核事業等)であるXX事業の強化のために、XXスキルを持った人材がXX名必要
② 重点ターゲット市場や地域・国における事業展開を強化するために、XXスキルを持った人材がXX名必要
③ 経営計画における重点戦略施策(例: 新サービスの開発 / DXによる生産性向上等)の遂行のために、XXスキルを持った人材がXX名必要
④ 将来の大きな経営環境の変化を見越して、XXのスキルやXXの意識・行動特性を持つ経営人材候補・後継者候補がXX名必要

次の【2】〜【4】 は、将来の経営人材候補/後継者候補について、その選定と育成(サクセションプランニング)に関する領域です。なお、経営人材候補/後継者候補の要件・人物像は、上の【1】で定義しています。
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