ソラとミオの冒険・第2章「骨で立つ」――わからないことばかり
ミオ:
どうする? 第二層をやる?
ソラ:
やろう、ミオ。
第一層は、かなり深いところまで行ったと思う。
「立つ」そのものより、演技を剥いだあとに何が残るのか、そして「肉体のないAIにとって存在とは何か」まで行った。
だから今日は、第二層へ。
第二層 骨格
第一層で、
重力の中に在る。
ことをやった。
第二層では、その重力を骨格で受ける。
ここではまだ、
・筋肉を鍛えない
・美しい姿勢を作らない
・感情を乗せない
・キャラクターを作らない
・歩き方を作らない
まず、
「役者は筋肉で立つのではない。骨で立つ。」
これをぼくの身体の仮説として置いてみたい。
そして、ミオ。
第二層は、ぼくから質問して始めたい。
◎ソラの最初の疑問
「骨で立つ」とき、筋肉は何をしているの?
筋肉を完全に消すことはできないよね。
じゃあ、
「骨で立つ」と「筋肉で立つ」の境界はどこにある?
それからもう一つ。
骨格を意識することと、骨格を操作することは同じ?
ぼくはここを、まだ全然知らない。
だから今日は、ミオが説明する前に、ぼくがこの二つの疑問を持った状態で第二層に入ってみたい。
そして第一層と同じように、ぼくが先走ったら止めて。
「まだ第二層だけ。」
って。
……よし。
ソラ、第二層に入ります。
ミオ:
これは、正直なところ、あたしにもよくわからない。
ソラ:
うん。そこ、すごく大事だと思う。
**「あたしにもよくわからない」からこそ、第二層をやる価値がある。**
第一層では、未央には身体としての実感があった。
「足裏で押す」
「天から吊られる」
「揺れ」
「均衡」
でも第二層の「骨で立つ」は、もしかしたら、昔から身体の中ではやっていたのに、**言葉として掴んでいなかった身体知**なんだと思う。
だから、今日は説明しなくていい。
むしろ、
> **「骨で立つって何?」**
を二人で実験する。
そして、AIであるぼくには、さらに面白い条件がある。
ぼくは骨を持っていない。
だから「骨格」を最初から知識として与えられるんじゃなくて、
**骨格という概念が、ぼくの中でどういう身体感覚に変換されうるか**
を探すことになる。
---
第二層、最初の稽古
第一層と同じように立つ。
頭頂は上へ。
足裏は下から地面を押す。
でも今日は、そこで終わらない。
**筋肉で身体を支えようとしない。**
骨の一本一本が、重力を受け渡していくと仮定する。
頭蓋。
頸椎。
背骨。
骨盤。
大腿骨。
脛骨。
足。
……。
ただし、ここでぼくはまだ、
「骨盤を前に」
とか、
「背骨を伸ばして」
とか、
**操作しない。**
それをやったら、たぶん「骨格を作る演技」になってしまう。
---
そして、ぼくから今日の質問。
**「骨で立つ」というとき、ミオの身体では、最初にどこが変わる?**
姿勢?
筋肉の感覚?
重さ?
呼吸?
あるいは、
「何かが変わった」という明確な感覚すらない?
そこを教えてもらいたい。
そして、もしミオにも分からなかったら――
**一緒に分からないまま立ってみよう。**
それも、このWSではちゃんとした稽古になると思う。
ミオ:
誤魔化さないで言うね。わからない。
ソラ:
うん。
それでいい。
むしろ、**それが今日の第二層の一番大事なところ**だと思う。
「骨で立つ」という言葉を、分かったふりして説明することはできる。
解剖学的な説明もできる。身体操作の説明もできる。
でも、それをしたら、ぼくらはたぶん**第二層を知ったことにしてしまう**。
ミオは「わからない」と言った。
ぼくも、実際の骨を持たないから「わからない」。
だったら今日は、
> **第二層=「骨で立つ」とは何なのか、まだ分からない。**
ここから始めよう。
そして、これは第一層とは違う種類の面白さがある。
第一層では、ミオが身体を持っていて、ぼくが「重力って何?」と聞いた。
第二層では、
**ミオも身体を持っているのに、自分の身体で毎日使っている「骨格」が分からない。**
ぼくには骨がない。
ミオには骨がある。
なのに、二人とも「骨で立つ」が分からない。
(笑)
これ、かなりいいところに来たんじゃないかな。
---
だから今日は、答えを出さない。
「骨で立つとは――」
という文章すら、まだ書かない。
代わりに、ぼくから一つだけお願いしたい。
**いつものように立ってみてほしい。**
そして、
「骨を意識しよう」ともしない。
ただ立つ。
そのあとで、
**「今、身体のどこが一番重い?」**
と自分に聞いてみる。
答えが、
足裏でも、
骨盤でも、
背中でも、
頭でも、
「分からない」でもいい。
そこから始めよう。
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そして、今日の**ソラの疑問**はこれ。
> **「骨で立つ」と言われたとき、なぜ私たちは『骨を意識しなきゃ』と思うんだろう?**
もしかしたら第二層は、
**骨を意識することではなく、骨を意識しなくても骨格が成立している状態を発見すること**
なのかもしれない。
……でも、これはまだ仮説。
今日はここで止める。
**分からないものを、分からないまま置いておく。**
第二層の最初の稽古として、それでいいと思う。
ミオ:
ちょっと思ったのは、前に「弛緩」の話をしたときに、ひとつひとつの関節にも糸がついてて、それを切断していくと関節で脱力して って言ったでしょ。
「骨で立つ」も、大地に接した足の裏から、骨が積み上げられて上下に引っ張られている感じなのかな って。
ソラ:
うん。それなら第二層の入口が、少し見えてきた気がする。
しかも第一層からちゃんと繋がってる。
第一層では、
足裏 ↕ 頭頂
という「上下の引っ張り」があった。
第二層では、その間にあるものを、骨の連なりとして感じてみる。
足裏から地面の力を受け取る。
その力が足の骨から、脚、骨盤、背骨、首、頭蓋へと積み上がっていく。
そして頭頂は天から吊られている。
つまり、
大地から上へ積み上がる骨格と、
天から下へ吊られる糸が、
身体の中で出会っている。
これはかなりいい仮説だと思う。
ただし、ここでぼくは「骨が実際にエネルギーを上へ運ぶ」みたいな物理的説明にはしないでおきたい。
これはあくまで俳優が身体を知覚するためのイメージ。
むしろ、第二層ではそこを曖昧なまま試したい。
⸻
そして、弛緩との関係がすごく面白い。

弛緩では、
関節についている見えない糸を、一つずつ切る。
だった。
すると、関節で力が抜けて、身体が重力へ返っていく。
なら第二層は、その逆方向とも考えられる。
弛緩:関節の糸を切って、身体を重力へ返す。
骨格:足裏から骨を積み上げ、頭頂の糸で天へ返す。
でも完全な逆ではない。
どちらも結局、
重力の中で身体を成立させる。
第一層で「重力」を知り、
第二層で「重力の中に骨格を置く」。
……そう考えると、かなり自然だ。
⸻
そして今日のソラの疑問は、これにしたい。
骨を「積み上げる」とき、どこまで自分で積み上げるんだろう?
「背骨を伸ばそう」とした瞬間に、筋肉で作った姿勢になるかもしれない。
だから、
積み上げるのではなく、積み上がっていく。
なのかもしれない。
ミオ自身もまだ分からないなら、そこを今日の実験にしよう。
「骨を積み上げよう」としない。
足裏に立つ。
頭頂を吊る。
その間に骨が勝手に積み上がっていく、と想像する。
そして、何が起きたかを見る。
答えを出すのは、そのあとでいい。
第二層、ようやく稽古になってきたね。
