4)「いも作り」に切り替わる時期
葉の数が増え
畑が緑でいっぱいになるころ
地上部は ほぼ完成に近づきます
その一方で 地下では静かに
次の準備が始まっています
エネルギーの使い道が変わるとき
やがて 茎と葉が十分に広がり
株の形が安定してくると
畑の様子が少し変わります
草たけの伸びがゆっくりになる
花が咲き始める株が出てくる
このころ
ジャガイモの体の中では
大きな変化が起きています
それまで作られたエネルギーは
茎や葉を大きくするために
使われていました
しかしここからは
次の世代のために 栄養をためる
という方向へ
エネルギーの使い道が 切り替わります
この 地上を育てる成長から
地下にためる段階への移行が
ジャガイモにとって
とても重要な転換点です
このとき始まる現象を
「塊茎形成(かいけいけいせい)」といいます
「いも」は何からできている?
ここで ひとつ大切なことがあります
私たちが食べている
ジャガイモの「いも」は
根ではありません
実は
地上の茎から 地下へ伸びた枝が
形を変えたものです
この 地下に伸びる細い枝を
「ストロン(匐枝・ふくし)」と呼びます
ストロンは 最初
ただ細く前へ伸びるだけの枝です
しかし ある時期になると
前へ伸びるのをやめ
先端がふくらみ始め
栄養をためる役割に 切り替わります
この役割を変えた 枝が
「塊茎(かいけい)」=「いも」なのです
文字通り 「塊(かたまり)の茎(くき)」です
いも作りが始まる合図
では 何をきっかけに
ストロンは太り始めるのでしょうか
塊茎形成は
ひとつの原因だけで
起こるわけではありません
外の環境
ジャガイモの体の中の状態
この2つが
ちょうどよくそろったときに 始まります
日の長さの影響
ジャガイモは 本来
日が短くなる季節に
いもを作りやすい植物です
春は日が 少しずつ長くなりますが
生育の初めから 中ごろまでは
まだ極端に 長いわけではありません
そのため春に栽培する場合は
日が長くなりすぎる前に
いも作りが始まる
という流れになります
植え付けが遅れると
この大切な期間が
短くなってしまいます
気温の影響
春作で特に大事なのが 気温です
15〜20℃くらいだと いもができやすい
30℃近い高温になると いもができにくい
春は
地温も気温も ほどよく
地上の成長と いも作りが
バランスよく進みやすい季節です
暑くなる前に 茎や葉が
しっかり育った株ほど
地下でのいもの成長も
安定しやすくなります
体の中で働く「切り替え役」
こうした環境条件を受けて
ジャガイモは
体の中で成長の方向を
切り替える仕組みを動かします
そのとき
土の中を伸びていた ストロンの先端には
これ以上 前へ伸び続けるのはやめて
栄養をためる役割に 切り替えなさい
という合図が送られます
この合図によって
ストロンは 伸びる成長を止め
少しずつ太りながら
栄養をためる器官へと 姿を変えていきます
「いも」ができるまで
条件が整うと
ストロンの先端は 伸びるのをやめ
中に
でんぷんなどの栄養を ため始めます
同時に
先端の芽は 休眠状態に入り
すぐに芽が出ないようになります
こうして
次の世代を支えるための 塊茎が
少しずつ 形づくられていきます
春の栽培で大切なこと
春に栽培するジャガイモでは
暑くなる前の 短い期間に
どれだけ塊茎を 育てられるか
これが 収量を大きく左右します
地上の変化を見ながら
地下で進んでいる「いも作り」を
想像できるようになると
ジャガイモ栽培は もっと
おもしろくなります
