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「ミニトマト」という名のミニトマト?

私がよく行くホームセンターの園芸コーナーに野菜苗が入荷するのは、火曜日と金曜日です。

同じ貸し農園の利用者の中には、入荷日の開店前から並ぶ人もいます。そこまでの気合いはありませんが、先週の金曜日に空き時間ができたので足を運んでみました。

いつもは駐輪場になっているスペースがまるごと野菜苗コーナーになっていてびっくり。家庭菜園への関心がそれほど高まっているということでしょうか。

キュウリ、ナス、ピーマン、ミニトマト。
並んだ苗を一本ずつ手に取りながら、タグに書かれた品種名を確かめていきます。

そのとき、78円の値札がついたミニトマトの苗を見て、思わず二度見してしまいました。

タグにはこう書かれていました。

「品種名:ミニトマト」

ミニトマトは品種の名前ではなく、果実の大きさによる分類のはず。これだとペットショップの販売札に「犬種:小型犬」とだけ書かれているようなものです。

ちょうど家庭菜園でも品種にこだわってみようかと思い始めていた矢先のこと。隣県の苗屋の名前とともに記された「品種名:ミニトマト」という表記に、小さなもやもやを抱えたまま家に帰りました。

調べてみると、なかなか興味深い世界が広がっていました。

そもそもトマトは、果実の大きさによって三種類に分類されます。150グラム以上の大玉トマトには「桃太郎」、40〜150グラム程度の中玉トマトには「フルティカ」といった固有の品種名があります。
ミニトマトの世界にも「アイコ」「千果(ちか)」「純あま」など、きちんとした名前を持つ品種が数多く存在します。

ブランド力のある品種はその名前自体が売りになるため、必ず大きく品種名が打ち出されます。
では、あの苗はいったい何者なのでしょうか。

答えは「並苗(なみなえ)」と呼ばれる普及種でした。特定のブランド名を持たないため、品種名の代わりに「ミニトマト」とだけ記されているのです。

ジェネリック医薬品に似た仕組みってことでしょうか。

「アイコ」のような有名品種を名乗って販売するには、種苗メーカーへのロイヤリティや専用ラベルのコストがかかります。
しかし、かつて一世を風靡した品種も、特許や独占権の期間が過ぎれば一般的な種として安価に流通し始めます。

つまり「中身はかつてのスター品種」でありながら、名前を出さないことでコストを抑え、78円という価格を実現しているケースが多いといいます。
いわば、無印良品のトマト版です。

さらに驚いたのは、こうした並苗の多くがF1(雑種第一代)と呼ばれる交配種だという事実です。
異なる性質を持つ親同士を掛け合わせることで生まれる「雑種強勢」という現象により、親よりも成長が早く、丈夫で収穫量も多くなります。

加えてF1品種は均一性に優れており、どの苗を植えてもほぼ同じ形・同じ味・同じ時期に実がなるよう設計されています。
「はずれがない」という安定感が、大量生産・大量販売を支えているのです。安かろう悪かろうどころか、非常に高度な種苗技術の結晶でした。

300円以上するブランド苗との違いは、「とがった個性」があるかどうか、という一点に尽きます。

ブランド苗は「スイーツ並みの甘さ」「ほぼ無酸味」「さくらんぼのような薄皮」といった際立った特徴を売りにします。
対して並苗は、酸味と甘みのバランスが良く、皮の厚さも標準的な「誰にでも好まれる味」に設計されています。

個性では一歩譲っても、総合力では決して引けを取りません。
特定の病気への強さは特化型ほどではないものの、一般的な病気には幅広く対応し、収穫量も安定しています。ベテランの農家がコストを計算しながらあえて並苗を選ぶのはそういうことなのですね。

栽培の面でも、並苗は初心者の味方です。

水やりは「土が乾いたらたっぷりと」という基本を守るだけでよく、高糖度系品種のような繊細な水分管理は必要ありません。

環境への適応力が高く、多少の管理ミスがあっても「それなりに育つ」タフさを持っています。
万が一枯らしてしまっても、78円なら気軽に再挑戦できます。

ただし並苗は、多くのミニトマトと同様に「無限伸長型」——つまり、成長に終わりがないタイプです。放っておくと2メートル以上に育つため、わき芽かきをしながら一本仕立てにする管理だけはしっかり行う必要があります。

あのタグの裏には、日本の気候に最もよく適した育てやすさと、失敗しにくい安定感が詰まっていました。

名前を隠した優等生って頼もしいな、なんて思いながら、次にホームセンターに行ったら「品種名:ミニトマト」のミニトマトを買おうと心に決めました。​​​​​​​​​​​​​​​​

あ、今日は火曜日だ。


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