御岳「炎」初段 完登
2026年4月、数シーズン打ち続けた御岳の「炎」初段を完登できた。
初段を登ったのは、ワイドも入れれば2年前のダイアナ以来。フェイスだと、湯河原のパイプライン以来で、さらにもう1、2年前のことになる。
人生で2番目か3番目に打ち込んだ課題になっただろうか。
人生で一番打った課題は、ダントツで小川山のエイハブ船長。2021年に登れたが、数百本は打っているはずだ。
エイハブ船長の反省
エイハブ船長を登ったときの反省点として、一つの課題にこだわりすぎると、同じムーブを繰り返すばかりで、登攀力の成長にはあまり繋がらないな、と思った。
すでに完成されたクライマーが高みを目指すうえではそういったアプローチが必要なのかもしれない。ただ、自分は自分のポテンシャルを十分に引き出せているのかと言われたら、そんなことはなく、まだまだ上手くなれると思っているので、まずは上達することを第一にしたい。
特に近年は、ルートやアルパインがメインになっているので、ボルダーはトレーニング要素が強い。だから、あまり一つの課題にこだわりすぎないようにはしていた。
おかげで持久力はついたし、マルチをこなす体力もついて、よりクライミングを楽しめるようになったと思う。
一方で、ルートばかりやっていると、ボルダーの強度がこなせなくなってしまう。
この先、筋力が衰えていくことを考えると、ルートはまだまだ上達できるとしても、ボルダーはもしかしたら数年前が人生におけるピークだった、ということになりかねない。そんな不安もあった。
「炎」という課題
そんな中で可能性を感じたのが、この「炎」だった。
御岳の中でもメジャーな大岩の一つ、ロッキーボルダーをまっすぐに登りあげるラインで、最初にこの岩のこの面を見て登ろうと思ったらここ、という自然なライン。派手なムーブも繊細なムーブもあり、炎という名前も相まってかっこいい。
同じロッキーボルダーにある他の課題と比較すると、さらに下から繋げるサイドワインダーが初段ということもあり、グレーディングは微妙なところがあるが、自分にとっては最高グレードと同等であるのは間違いない。
とはいえ、前述の通り、あまりこだわりすぎないようにしていたので、アプローチも良いし、御岳に行ったら触る課題の一つ、くらいの感覚だった。

よくあるムーブとしては一手目で遠い①のカチをとり②のスローパーを抑えて③のスローパー気味の薄カチをマッチし④のリップ、⑤のビクトリーガバと取っていく。
あとは決めるだけ、からのー
潮目が変わったのは、去年の4月。
やけに体が軽く感じる日があり、この日初めて薄カチをマッチし、リップまで取ることができた。
そこで足が迷子になって落ちてしまったが、次で登れるだろうという感覚だった。しかし、筋力的にはまだ余力があったものの、指が切れて出血してしまったため、完登は次回へ持ち越しとなった。
ここからが長かった。
あとはもう決めるだけ、と思って行くが、カチがマッチできない。秋にも何日か通ったが、同じところで落ち続けた。
そしてこの春。
今シーズンは少雪のため、BCを早々に切り上げ、城ヶ崎ボルダーに行ったりもしていた。コンディション良く、今度こそ決めたい、と挑んだが、やはり同じところで落ちる。
左手の持ち感は悪くない。けれど、どうしても右手を寄せられるような位置に重心を調整できなかった。
違うムーブを試す
これはまた来期以降に持ち越しか。そんな不安がよぎる中、主目的に立ち返ることにした。
せめて成長に繋がるように、違うムーブを試してみよう。
薄カチがマッチできないのは、重心を左に寄せられていないからだと思い、初手の左手で取ったカチに右手を寄せてみることにした。
当初は、そこから薄カチをマッチするつもりだった。
しかしそこでバランスを取ろうとするとフラッギングをしたくなる。フラッギングから足を振って右手を出すことも考えたが、これは遠すぎて取れないと思ったので、足を踏み替えてみた。
すると、その先のガバ気味のスローパーに左足ヒールがかかることがわかった。
このあと、右手を固めて左手でリップを取るのが近そうだったが、それだと落ちたときの体勢が悪い。なので、右手マッチからリップに送ることにした。
完登トライ
その日はトライ数も重ねていて疲れもあったので、日を改めて今度こそ、とフレッシュな状態で挑んだ。
そして、ついに訪れた完登トライ。
リップを取ったあとはヒールを解除して右足を踏むつもりだったが、両手でリップを取ったら、そのまま上がれそうだったので、左足を寄せつつ、左手を伸ばしてビクトリーガバを取った。
別ムーブを探ってからは、数トライで完登することができた。
登った直後は、完登できた嬉しさよりも、ハマらなくて良かった、というホッとした思いのほうが強かった。
それでも、数年ぶりの初段。さらに先日1級を2つ落としたことを考えると、この春は自己ベストと言える成果が出ている。その喜びを、じわじわと感じている。
ボルダーグレードはまだ上げられる、かも?
成果が出たからというのはもちろんあると思うが、それ以上に、自己ベストを目指して本気で打ち込めていること自体が、本当に楽しい。
近年は腰痛があったり、昨年の秋には肩を痛めてしまったりと、コンディションが万全ではない時期もあった。
岩に対する情熱だって、いつまで持ち続けられるかは自分自身にもわからない。だからこそ、この熱がある今を大事にしたい。
グレードへの挑戦はもうちっとだけ続くんじゃ。
