ゼロ距離でパフォーマンスが語りかける——櫻坂46 5th YEAR ANNIVERSARY LIVE
# こっそりタイトルの誤植を修正
生きるとは変わること。生成変化するグループ。
どんなトンネル抜けても
また近づく 孤独の時間だ
初日は5周年を特別な会場で迎えられた高揚感・多幸感があふれるライブだった。2日目はその余韻はありつつ、すでに昨日は過去となり、そこに留まることができない寂しさも生まれる。この幸せも永遠ではない。夢を叶えるために、最高地点と思えた国立競技場すら通過駅として、成長の列車は進んでいく。特に2日目は二期生がめっちゃ泣いてて、改めてこの歌詞が刺さってくる。「これからも進んでいこう」と「行かなくちゃいけないのかな」の激しいジレンマと、達成感、ワクワク感、孤独感‥‥さまざまな感情がごちゃまぜになった涙なのかなと思う。両日ほぼ同じセットリストだからこそ、感情の変化がわかるような気がする。メンバーにとってもBuddiesにとっても忘れられないライブ、というよりドキュメンタリーの現場に立ち会った気分だ。
「私たちにはたくさん夢がある」と松田はいう。夢を追うことは孤独な道程だ。だからこそ、より多くのBuddiesの力が必要になる。「ずっと一緒」「幸せにする」とか如何にもアイドルらしい幻想だけど、それを口にすることで推進力としてきた。
櫻坂は当初から楽曲・MVでもライブでも時間、時計をモチーフにしたものが多いが、それは「生きるとは変わること」の具現化である。改名からこれまでの試行錯誤の過程であり、メンバーたちの成長・加齢の軌跡でもある。従来のアイドルグループで「世代交代」とかあるのはブランドイメージの保持の意味合いが大きいが、櫻坂にそれは当てはまるだろうか? 今回、二期生センター楽曲『Start over!』『承認欲求』『何歳の頃に戻りたいのか?』と三期生センター楽曲『自業自得』『Make or Break』『Un Happy Birthday構文』はいい対比になっている。ライブで一瞬で沸点に達するインパクトは前者に分があるけど、センターとしての求心力や資質は三期生も負けていない。村山・谷口も含めてストーリー性のある舞台表現により可能性がある、ような気もする。
かつて小池は、三期生が入ってきたことで櫻坂の色が明確になってきたといいつつ、「頂点がないグループ」とこれからも成長・変化を続けるグループであることも示唆した。
生きるとは変わること
静的にポジションを差し替える「世代交代」でなく、常に動的に「生成変化」すること。
欅坂の遺伝子はしっかり刻み込まれているのである。
もちろん「世代交代」にも新陳代謝の要素があるけど、例えば『君はハニーデュー』『クリフハンガー』を観ると入れ替えのギャップがセンターの孤立感を生んでいると思う。
ゼロ距離でパフォーマンスが語りかける。
本編MCは最初の挨拶がわりの1回のみ。櫻坂のここぞというライブではこれがデフォルトになっていくのだろう。BACKSLIVE!!ではリハ中の裏話なんか聞けたりして、それはそれで楽しいのだけど、彼女たちのパフォーマンスはMC以上に雄弁だ。2025年のドーム公演では全体の構成に圧倒された感が強かったけど、今回は曲単位で思いが伝わってくる。1万ぐらいのキャパでも国立競技場でも、彼女たちの視線はきちんと客席に届いているように見えるのは不思議だ。二期・三期はもちろん、四期生もすでにそう感じる。視線とか顔の角度とかのアドバイスがあるのだろうか。配信映像を観ても感じる櫻坂の最大の魅力だと思う。
四期生のフラッグパフォーマンスは、欅共和国2017を彷彿とさせる。他にも欅坂オマージュがあったのかもしれない。
初日の『マモリビト』で発せられた「私たちなりの花を咲かせる」は、偽らざる四期生の心境だろう。藤吉がライブ前のいくつかのインタビューで、二期・三期と四期の歩んできた歴史・経験の差を気にかける発言があったけど、それは四期生たちも身に沁みて感じている。2023〜2024年の櫻坂はこれ以上ない成長曲線を描いた。現時点で四期生たちに同じものを望むのは酷だ。でも、国立競技場という宇宙に輝く数多のペンライトの星々に照らされ、彼女たちは自分たちのスタートラインを設定する。
いつの間にか 夜空に数多の星が輝く
さっきまではなかった光
あの宇宙が何かの可能性かもしれない
もっとこっちへおいでよと 手招きする
新しい地図よ
僕らは地図を見つけた
『光源』のパフォーマンスを経て、2日目のスピーチは櫻坂のメンバーとして櫻の木を大きくしていく決意表明へと変わる。ここでもライブを通して時間の流れを意識させる演出となっている。
それにしてもモニターに松本が映るたびにハッとさせられてしまう。感情表現に長けているというか、表情のバリエーションが豊かだ。目黒もすごく舞台映えする。四期生はどんどん変わっていく。6月のライブが楽しみ。
さまざまなサプライズ発表がされた今回のライブで、あえて一番を挙げるなら2日目『静寂の暴力』のオルゴール演出のドッキリだ。ブレイク後の暗転から再びセンターステージに照明がつくと山下を中心にメンバーが手をつなぎ輪を描いている。観た時、ここで演出変えてきたかとその意味を考えていたのだが、ライブ後の生配信で山下へのサプライズだったことが明かされる。今回のライブを期別で見ると、みんな上気した表情を見せていた二期生、既存曲への参加が目立つ四期生がメインで、三期生は一列下がったところでライブを支える役回りだったと思う。そんな中、自分たちの曲でのちょっとしたイタズラは三期生の絆の強さと、安定感・頼もしさを思わせる。「マモリビト」の大役を後輩に託し「これから私たちがグループを牽引していく」という見えないマニフェストがここにある。
11人揃った『静寂の暴力』は2024年の東京ドーム以来となる。これは強調しておくべきポイントだろう。
『キスが苦い』『ドライフルーツ』はガラリと印象が変わった。ライブでベース・ドラムが強調されたせいか、90年代あたりの雰囲気をアレンジしたロック曲になった。パフォーマンスも従来の振り付けと違って、国外も意識したものになってると思う(そして、アジアツアーの発表があったわけだ)。
多分、つづく。
