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彼女たちを照らす2つの“光源”——櫻坂46『光源』

“はじまり”の三部作

『死んだふり』では地中から発芽する櫻たちを、『Alter ego』では髪型を変えたことをきっかけにもう一人の自分を発見し、新しい自分に生まれ変わる過程が描かれた。
“はじまり”には、「誕生」「再生」「変化」「成長」といったテーマが込められ、現在の櫻坂の方向性と強くリンクする。14th表題曲『The growing up train』はまさにその象徴だが、そのカップリング曲『光源』は、同じ“はじまり”を描きながら、ある意味アンチテーゼとして四期生に託される。

希望の灯は「僕」の中にある

いつも見てた 夕陽はこんな早く沈むのか?
向き合える時間も足りない

光源

夜道を一人歩く浅井の手から『Cool』のキャラクターたちが踊るスマホが舞い上がり、光源となる。『Cool』は自分を押し殺し「クール=死んだふり」をする主人公の内面を描いているが、この楽曲も『桜月』と「大人になる/大人になりたくない」というアンビバレントな関係にある。それから約3年、ますます同一性・均質性が強く求められる現在において、もはや「エキセントリック」にふるまうことも「不協和音」を鳴らすどころか「大人になりたくない」と思うこともままならない。

若さとは無知なんだ 突っ走れ

The growing up train

何に照らされて 心を遠回りすればいいのだろうかと…

光源

『The growing up train』では何度も孤独のトンネルを抜けて成長していく高揚感があるのに対し、『光源』の主人公たちは、この列車に乗り続けることに消極的で、かといって途中下車してあれこれ体験したいということでもない。『The growing up train』がいう「突っ走れ」は、これまでのグループが積み重ねてきたキャリアと自信があってこそだが、歌詞だけをなぞっていくと彼女たちにはあまりにも急進的すぎる。列車が進むように、時間も否応なしに進んでいく。そこに『Cool』の光が差し込んでくる。彼女たちは時の流れに抗いはじめる。それは『エキセントリック』のようであり『不協和音』のようでもある。

欅坂46 エキセントリック
光源
欅坂46 不協和音
光源

僕は心にぽっかりと穴が空く
その向こうに揺れる
希望の灯よ 消えないで
暗闇も いつしか…

光源

後に出てくる「光がなければ影もできないんだ」の言葉のとおり、光が「僕」の内面を照らすことによって、薄闇のはっきりしない状態だった心にぽっかり穴=影が生まれる。影が強くなることで、「僕」はそこに希望の火が灯っていることを知る。それはまだユラユラとした頼りない灯火だが、この暗闇を抜けた先にこそ希望があるのだ。
光が消えて、道に倒れ込む浅井。空に浮かぶタイトルバックと星々。これまでずっと俯いていた彼女は、頭上に光源があったことに気づく。
それまでのアイドルの概念からはみ出した歌詞やダンスに衝撃を受けて、欅坂に惹かれた人は少なくないと思う。時期もグループもだいぶずれるが、山川が2024年の東京ドームを見てオーディションを受ける決心をしたというエピソードも、人生を変える体験・出会いである。
1コーラス目の流れは、欅坂〜櫻坂初期(5thあたりまで)が光源となり、主人公の内面に濃い影を落とし、深い内省を促すきっかけとなる。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている。
希望の灯=光源は自分の中にこそある。

僕らの灯が「新しい地図」になる

They were on their way home in silence together.
彼らは黙ったまま家路を辿る。

MV冒頭に刻まれた詩句。togetherとあるから一緒に帰ってるのだろうけど、孤独になりたくないだけで、心を通わせているわけではない。
また「silence」という言葉から『静寂の暴力』とも重なる。実際に彼女たちはパフォーマンスするのだが、本MVでも孤独の夜の乗り越えた彼女たちは憔悴しきった表情を朝焼けに浮かび上がらせる。特にアマチュアながら演技経験があるらしい松本、裸足で踊る山田が、すぐにもストーリーが作れそうな質感がある。山川、稲熊は素の状態に近いナチュラルな演技が上手くハマっていると思う。

光源 稲熊ひな
光源 山川宇衣
光源 松本和子
光源 山田桃実

何をしても後悔だけ迫って来る
すぐ自信なくして彷徨う
僕が強くなるにはどうすればいいんだ?

The growing up train

生き甲斐はどこにある?
人生は空振りだらけ
なぜ躓いてばかりなのか?
自己嫌悪 陥るよ

光源

2コーラス目に入って、表題曲/バックス曲で接点が出てくる。
『The growing up train』MVでは、ここで四期生たちがフィーチャーされる場面となり、まさに彼女たちの心を表している。「僕が強くなるためにはどうしたらいい?」という問いに、“The wisdom train”と意味不明な回答しかされないまま大サビに移行していくのだが、この接点をもとに両者を融合させて解釈するのもいいかもしれない。
『The growing up train』のモチーフは銀河鉄道の旅としていいと思う。藤吉たちメンバーが最後に眺めているのは銀河の星々であり、Buddiesのペンライトでもある。

いつの間にか 夜空に数多の星が輝く

光源

四期生たちは合流してすぐにドームで数万のペンライトに迎えられるのだが、それは『Start over!』以降動員記録を上書きしてきた櫻坂が見せてくれた光源だ。
そして夜が明け、『死んだふり』を再現するようなキラキラが舞う中、彼女たちは前に進みながら踊り、初めて笑顔を見せる。先輩たちが見せてくれた光が道標となる。このまま前に向かって突き進むのもいい。
そう思った束の間、彼女たちは振り返り、逆方向に歩き出す。

さっきまではなかった光
一筋の夢が 見えてきた気がして ハッとしてしまった
あの宇宙が何かの可能性かもしれない
もっとこっちへおいでよと 手招きする
新しい未来よ
僕らは地図を見つけた

光源

「僕」ではなく「僕ら」と複数形であり、それは四期生たち自身だ。銀河を思わせるペンライトの星々の光に照らされてできた影の中に、彼女たちは「さっきまではなかった光」を見つける。9人がそれぞれ見つけた灯を繋ぎ合わせれば、それは地図になる。「新しい地図」とは彼女たちが出会い、自分自身の中で見つけた「真実」なのだ。

ラストで振り返り逆の方向へ歩き出すのは、自分自身の希望の灯と地図によって可能性を探す旅だ。ここで“The growing up train”が目標に向かって前進すること、“The wisdom train”が立ち止まり内省することと解釈してみると、「僕」が強くなるためにどうしたらいいか見えてくる。かつて先輩たちは「新せ界」で各々のビジョンを言語化した。そのいくつかは達成され、今後も実現されていくだろう。次は四期生の番だ。

光源 浅井恋乃未

歩き出した浅井の表情にはまだ不安さが残っているし、足取りもちょっとおぼつかない。でも、彼女たちを照らす光源はいつでもそこにあるし、彼女たち自身もいつか「光源」となる。

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