✨ 1話『黒いタイタンフレーム』
神話か、現実か? 人類存亡をかけた戦記SF『ロキとオーディン ~戦いのいくすえは~』
暗闇に紛れて、三機のタイタンフレームが夜空を滑るように飛行していた。
レーダーに映らない高度。
風が装甲を叩く音だけが、密やかに響く。
「本当に……新型がテストされてるんですかね」
一人が、通信を絞った声で言う。
「そうなると、不利になるな」
もう一人が応じた。
リーダーが短く言う。
「それを確かめるのが、我々の任務だ」
三機は速度を落とし、地上へと降下した。
敵基地が近い。
ここからは歩兵の仕事だ。
リウ・ベイ少佐は機体を降り、闇に紛れて基地へ侵入した。
目的はただ一つ──
ロキ側が開発中と噂される“新型タイタンフレーム”の実在確認。
格納庫の奥で、それは静かに眠っていた。
黒い装甲。
光を吸い込むような質感。
旧型とは明らかに違う、異様な存在感。
「……これが、黒い新型か」
カメラに収めた瞬間、警報が鳴った。
旧型のユミルが動き出す。
リウ・ベイ少佐は即座に撤退し、自分の機体へ戻った。
三機のダグは、オーディン軍の虎の子。
ロキ側の旧型とは、性能が一段違う。
旧型が手間取っている間に──
黒い新型、ウートガルザ・ロキがゆっくりと起動した。
「厄介なことになりましたね」
部下が言う。
「能力を見極めて撤退する」
リウ・ベイ少佐は冷静に返した。
こうして、
オーディンの三機と、ロキの黒い新型の初遭遇戦が始まった。
✨ その戦いを、遠くから見つめる影があった。
フレイアである。
側近のチョウ・ユウと共に、丘の上から戦場を見下ろしていた。
「どちらにもつく気はないわ。どうなるかを見ているだけ」
黒い新型がぎこちなく動く。
その姿を見ながら、フレイアは静かに目を細めた。
「私が気にしているのは、あの黒い機体じゃない。
あれに“いずれ乗ることになる”坊やの方よ。
ヘルメスに導かれた子が、どこまで行くのか……それだけ」
チョウ・ユウが小さく笑う。
「フレイア様らしいご興味です」
フレイアは空を見上げた。
「ウラヌスは、見ているだけ。
それでいいの」
✨ 世界は、闇に沈んでいた。
アマテラスは岩戸に隠れ、
アポロンは職場放棄し、
太陽光は特殊なガスに遮られた。
統合政府は強権を発動したが、
反発は大きく、反乱軍オーディンが結成された。
フレイアにとっては、どちらも決定的ではない。
正当性がどちらにあるのか──
まだ判断できない。
✨ 戦場では──
オーディンの三機は、黒い新型と本格的に交戦することなく、
その動き・反応速度・武装の傾向を見極めていた。
黒い新型のパイロットは、まだ不慣れ。
しかし、その潜在能力は明らかだった。
頃合いを見て、リウ・ベイ少佐が言う。
「撤退する。十分だ」
三機のタイタンフレームは、闇へと消えていった。
