「デザインの複数案」にもう迷わない。Webデザイン歴20年のプロが実践する、1発採用を勝ち取る「戦略的複数案」の作り方
「デザインの複数案を作ってください」
実務の現場で、必ずと言っていいほど直面するリクエストです。
しかし、この「複数案」という言葉の本当の意味を、正しく理解できているデザイナーは驚くほど少ないのが現状です。例えば、
メイン案の「色違い」を出す
メイン案の「写真」を差し替える
メイン案の「フォント」だけ変えてみる
もし、あなたがこれらを「複数案」として提出しているなら、それは「案」ではなく、ただの「バリエーション(間違い探し)」です。
本当の複数案とは、見た目の違いではなく「設計の違い」です。
この記事では、なぜ初心者が「バリエーション」の罠にハマってしまうのか、そして業界歴20年のプロが実務で行っている「戦略的な複数案」の設計プロセスを、具体例を交えて解説します。
この記事で得られること
◉ なぜ「色違い」の提案は、クライアントの決断を鈍らせるのか
◉ クライアントが「選ぶ」ために必要としている「比較材料」の正体
◉ 1案ボツになっても共倒れしない「リスク分散型」の3案設計術
◉【実務用】提出前に自問自答すべき「戦略的複数案チェックシート」
「デザイン複数案」への苦手意識とプレッシャーの正体
デザイン初心者の多くが、複数案という言葉に戸惑い、プレッシャーを感じます。「どこをどう変えれば “別案” として成立するのか?」と。
その答えが見つからないまま締め切りに追われ、とりあえず「色」や「写真」といった表面的な要素をいじって “別案” を作った気になってしまう。
根底にあるストーリー設計…。つまり「誰に、何を、どう伝えるか」が同じ設計であれば、色を変えたところで、それは「1案目のバリエーション」に過ぎません。
ここを誤解していると、複数案を求められるたびに疲弊します。逆に言えば、ここを理解した瞬間から複数案は怖くなくなります。
NG例:その「色違い」は複数案ではない
たとえば、次のような提案を見てみましょう。
A案:ベースカラーが「青」の誠実なデザイン
B案:ベースカラーが「赤」の情熱的なデザイン
C案:ベースカラーが「緑」の安心感あるデザイン
これは「複数案」ではありません。なぜなら、情報の優先順位も、ターゲットへのアプローチも、訴求の概要も同じだからです。
設計図(ワイヤーフレーム)が1つしかない状態で、表面のペンキの色だけ塗り替えて「3つとも別の家です」と言い張るようなもの。
これではクライアントの心には響きません。むしろクライアントは「何が違うのか分からない」と困惑し、結果的に意思決定が遅くなります。
クライアントが複数案を求める「本当の目的」
デザイン初心者の多くは、「クライアントが優柔不断で決められないから、数を出せと言っているんだ」と思いがちです。
でも実は少し違います。
クライアントが求めているのは「好みを選ぶこと」ではなく、「納得するための比較材料」です。
他の訴求軸も検討した上で、本当にこれが最適なのか?
別の方向性なら、もっと結果が出る可能性はないのか?
この不安を払拭し、自分たちが進むべき方向性に確信を持ちたい。だからこそ、表面的な違いしかない提案を見せられても、彼らの「比較したい」という欲求は満たされないのです。
プロの定義:訴求軸で分ける「戦略的複数案」
本当の複数案とは、見た目の違いではなく、ターゲットを動かすための「ストーリー設計」の違いです。
たとえば、「採用サイト」の場合であれば、切り分けるべきは “色” ではなく、何を武器にして人を動かすかです。
A案:事業の安定性や「実績」を前面に出し、理性に訴えかける案
B案:社風や「チームワーク」を強調し、感情に訴えかける案
C案:将来の「成長環境」やキャリアパスを提示し、野心に訴えかける案
このように、設計の意図が根本から違うものを並べる。これがプロの提案のスタートラインです。
まとめ:デザインを「設計図」から変える3箇条
ここまでで、以下の3点を整理しました。
色違いは「複数案」ではなく、ただのバリエーション
複数案の正体は、見た目の違いではなく「設計の違い」
クライアントが欲しいのは、決断するための「比較材料」
ここから先では、「具体的にどうやってその3案を、最小限の工数で、かつ戦略的な振り幅を持って組み上げるのか」という実務の核心部分を解説します。
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