デザインを直す前に「設計」を疑え。Webデザイン歴20年のプロが教える、UIとコンテンツを仕分ける「実務の判断軸」
「なんか使いにくい気がする」
「もっと分かりやすく、ボタンを大きくしたい」
「回遊率を上げるためにUIを改善しましょう」
クライアントやチームからこう言われたとき、あなたはすぐにFigmaやPhotoshopを立ち上げていませんか?
実は、実務で起きる「改善の失敗」の多くは、スキル不足ではなく “問題の履き違え” から始まります。
UIを直したのに、成果が出ない。
デザインを変えたのに、内容が伝わらない。
見た目は良くなったのに、ユーザーが動かない。
こうした悲劇が起きる原因はシンプルです。
「UI(器)」の問題と、「コンテンツ(中身)」の問題を混同しているからです。
UIは「どう操作するか」を司り、
コンテンツは「何を理解するか」を司ります。
この役割の違いを正しく見極められない限り、どれだけ見た目を磨いても、結果は変わりません。
この記事では、プロが現場で何を基準に「UIで解くべきか、コンテンツで解くべきか」を判断しているのか。
その具体的な思考法と見極め術を、事例を交えて解説します。
この記事で得られること
◉ UIとコンテンツの役割の「決定的な違い」が整理できる
◉ なぜ、ボタンを大きくしても回遊率が上がらないのかが分かる
◉ データから「問題の本質」を見抜くプロの判断軸が手に入る
◉ 作業量ではなく「提案の精度」で信頼を勝ち取る思考法が分かる
なぜ「UI改善」という名の迷走が始まるのか
UIは目に見えて、触れて、変えれば “やった感” が出ます。だからこそ、問題が起きたとき、真っ先にUIが改善対象になりやすい。
でも、UIをいじっても解決しない問題が、現場には山ほどあります。多くの場合、そこに潜んでいるのは、UIではなく「情報の不備」 です。
以前、とあるBtoBの人材派遣会社のコーポレートサイトで「サイト内の回遊率を上げたい」という相談を受けました。
GA4を見ると、確かにセッション数に対してPV(ページビュー)が極端に少ない。そこでクライアントはこう考えました。
「メニューが使いにくいのでは?」
「文字が小さくて読みづらいのでは?」
これらは典型的な “UIの仮説” です。しかし、実態を深掘りしていくと、本当の原因はデザイン以前の場所にありました。
初心者が混同しがちな「器」と「中身」の関係
UIとコンテンツは、よく「器と料理」に例えられます。
UI:操作のしやすさ、視認性、情報の “器”
コンテンツ:意味、価値、情報の “中身”
器だけを豪華にしても、料理が食べにくかったり、味が分からなかったりすれば、客(ユーザー)は満足しません。
先ほどの人材派遣会社の事例にも、まさにこの “混同” がありました。ここからは、2つのズレを見ていきます。
ズレ①:伝わらない = UIの問題という勘違い
「分かりにくい」「見づらい」と言われたとき、すぐにフォントサイズや配色を変えるのは早計です。
その不満の本質が「意味が伝わっていない」ことにある場合、問題はUIではなく 言葉の設計(コンテンツ) にあります。
事例のサイトでは「メニューの文字が小さい」ことが問題視されていました。しかし、小さくせざるを得なかった理由はデザインではありません。
原因はメニュー名の異常な長さでした。
「株式会社○○○○の誇る5つのメリット」
これでは、文字を小さくしないと収まりません。
そこで、メニュー名を「特長・メリット」など、短く直感的な言葉に変更しました。
結果として起きたのは、UIの改善 “だけ” ではありません。
文字サイズを大きくできた(UIの向上)
意味が一瞬で理解できるようになった(コンテンツの向上)
視認性が劇的に高まった
つまり、UI(デザインツール)はほぼ触らず、コンテンツ(言葉)を整理しただけで、体験の質が改善したのです。
ズレ②:成果が出ない = 見た目の問題という誤解
クリックされない、回遊されない。
こうした現象もUIの不備に思えます。
でも実際は、UIではなく 情報の構造(コンテンツ配置) が原因であるケースが多々あります。
事例のサイトのトップページは、1枚のLPのように情報が詰め込まれていました。
強み → メリット → 実績数字 → 主要取引先 → 会社概要 → 事例紹介 → お客様の声 → お問い合わせ
「全部ここに載せておけば安心」という発想です。
GA4を確認すると、興味深い結果が出ていました。
トップページの滞在時間が非常に長い
スクロール率も高い
他ページへの遷移がほとんどない
直帰率、離脱率が高い
つまり、ユーザーはトップページを読み切ったところで満足して完結してしまったのです。
回遊率が低いのは、メニューが使いにくいからではありません。他のページへ移動する理由が、設計されていなかったからです。
まとめ:UIは万能ではない。正しい解決策を導く「構造的思考」
この事例から見えてくることは、かなり重要です。
メニュー問題:デザイン(UI)ではなく、言葉(コンテンツ)の問題
回遊率問題:UIではなく、情報の詰め込みすぎ(構造)の問題
UIは重要です。
しかし万能ではありません。
問題の種類を見誤ると、どれだけ改善しても成果には辿り着けません。そして最悪なのは「頑張ったのに報われない」状態です。
ここから先の有料パートでは、プロが現場で行っている「UIで解くべき問題」と「コンテンツで解くべき問題」の仕分け基準を具体的に解説します。
作業者から一歩抜け出し、「本質を突いた提案ができる人」になるための判断軸を手に入れてください。
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