PCPS(V-A ECMO)管理で見逃してはいけない事
PCPSは心原性ショックや心停止後の患者さんに対して、生命を繋ぐ極めて重要な治療手段です。
しかし、その管理には高度な知識と継続的な観察力が求められます。
今回は 「PCPS管理中に見逃してはいけない観察項目」 を5つに絞って整理しました。
日々の臨床で押さえるべきポイントとして、ぜひ参考にしてください。
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1. 循環動態の詳細な観察
〜人工心肺の効果と自己心機能の評価〜
PCPS導入後は、動脈圧波形や血圧値に特徴的な変化が現れます。自己心拍による拍動成分とPCPSによる持続的流量が重なるため、解釈を誤らないことが大切です。
波形の変化ポイント
・脈圧が狭くなるのはPCPS波形の特徴
・自己心機能が回復してくると拍動成分が大きくなる
・流量不足では平均動脈圧や拡張期圧が低下する
目安となる数値
・平均動脈圧:65mmHg以上
・収縮期血圧:100〜140mmHg
・脈圧:20mmHg以上あれば自己心機能あり
CVP(中心静脈圧)の活用
・正常:6〜12mmHg
・高値(15mmHg以上):右心不全、体液過剰など
・低値(5mmHg以下):循環血液量不足や脱血不良
実践のコツ
モニター数値だけでなく、波形の変化を毎時観察しましょう。
特に自己心拍の回復は、PCPS離脱を検討する大切なサインになります。
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2. PCPS回路の機械的監視
〜トラブルをいち早く見抜く〜
回路の圧や流量、人工肺の状態は常に観察が必要です。
脱血側圧力(Venous Pressure)
・正常:-20〜-80mmHg
・-100mmHg以下:脱血不良の疑い
(原因:循環血液量不足、カニューレ位置不良、血栓など)
送血側圧力(Arterial Pressure)
・正常:200〜400mmHg
・500mmHg以上:送血抵抗増加
(原因:カニューレ屈曲、人工肺内血栓、末梢血管抵抗上昇)
流量(Flow)の管理
・成人目標:2.2〜2.8L/min/m²(体表面積あたり)
・絶対的最低:3.0L/min以上
・低下すると組織酸素化不良や血栓リスク増加
人工肺の評価
・血液ガス分析でガス交換能を確認
・内圧上昇や暗赤色変化は血栓形成のサイン
アラーム時の対応手順
1.体位・カニューレ固定を確認
2.回路の屈曲や捻れを確認
3.人工肺の外観を確認
4.速やかに医師へ報告
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3. 抗凝固療法と出血リスク管理
PCPSでは血液が人工物に触れるため、抗凝固管理が必須です。
ACT(活性化凝固時間)
・目標:150〜180秒(施設基準に従う)
・測定頻度:導入直後は2時間ごと、安定後は4〜6時間ごと
出血傾向のチェック
・Hb:8〜10g/dL以上
・血小板:5万/μL以上(理想は10万/μL以上)
・フィブリノーゲン:150mg/dL以上
・PT-INRやAPTTの変化
観察すべき部位
・カニューレ部:ガーゼ交換頻度や滲出血
・消化管:便の色調、胃液に血性成分
・頭蓋内:意識変化、瞳孔、神経症状
・後腹膜:腰背部痛、腹部膨満、血圧低下
血小板減少の対応
・日内変動を追跡
・HITの可能性も考慮
・適切な輸血判断が必要
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4. 組織灌流と酸素化の評価
中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)
・目標:70%以上
・低値:組織酸素化不良
・高値:敗血症や酸素利用不全
乳酸値
・目標:2mmol/L未満
・上昇:組織灌流不良
・改善:治療効果良好のサイン
尿量
・目標:0.5〜1.0mL/kg/hr
・乏尿:腎血流不足
・多尿:利尿薬や浸透圧性利尿
末梢循環の視診・触診
・皮膚色、温度、CRT(2秒以内が正常)
・足背動脈や後脛骨動脈の触知
総合評価の重要性
指標は単独ではなく、組み合わせて解釈します。乳酸改善しても尿量が低下していれば腎灌流障害を疑うなど、多角的に見ましょう。
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5. 下肢虚血と神経学的合併症
下肢虚血
大腿動脈カニューレで最も多い合併症の一つです。
5P徴候で評価
・Pain(疼痛)
・Pallor(蒼白)
・Pulselessness(脈拍消失)
・Paresthesia(異常感覚)
・Paralysis(麻痺)
観察の実際
・2〜4時間ごとに観察
・健側と比較
・ドプラで血流評価
・足趾の色・温度・感覚をチェック
神経学的評価
PCPS導入患者は脳機能評価が予後を左右します。
・GCSで定量評価
・鎮静薬の影響も考慮
・瞳孔の大きさ、左右差、対光反射
頭蓋内圧亢進のサイン
・意識低下
・瞳孔不同、反射消失
・異常呼吸
・血圧上昇+徐脈(Cushing反応)
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まとめ:総合的な管理がカギ
PCPS管理では以下の5点を必ず意識しましょう。
1.循環動態と自己心機能の回復兆候
2.回路や人工肺の機械的安定性
3.抗凝固と出血リスクのバランス
4.組織灌流と酸素化の状態
5.下肢虚血や神経学的合併症
情報共有のポイント
医師・看護師・臨床工学技士・リハビリなど多職種で、これらの観察所見を系統立てて伝えることで、変化を早期に察知し、適切な対応に繋げられます。
PCPS管理は難易度が高いですが、的確な観察とチームでの連携により、患者さんの救命と社会復帰に大きく貢献できます。
日々の実践を通して、理解をさらに深めていきましょう。
