見出し画像

業務フローを描くだけでは、顧客はまだその中を歩いていない

こんにちはあるいはこんばんは

提案の場で、業務フローを説明した。

As-IsとTo-Beを並べて、どこが変わるのかを整理する。
現状の流れを見せて、導入後の流れを見せる。

顧客には理解いただけた。
納得もいただけた。

でも、場の空気が少し変わったのは、そこではなかった。

AIを導入した後、問い合わせ業務がどう変わるのか。
その一日の動きを話したときだった。

そのとき、顧客の中で少し景色が変わったように見えた。


1. 業務フローは、地図に近い

業務フローは大事だと思う。

現状の流れを整理できる。
誰が、どのタイミングで、何をしているのかが見える。
どこにムダがあり、どこに確認が多いのかも見えやすくなる。

提案に関わるSEとしては、ここを曖昧にしたまま話を進めるのは怖い。

業務フローがないと、顧客との会話が感覚論になりやすい。

「たぶんこうです」
「この辺りで確認しています」
「担当者によって違います」

そういう話を、いったん図に置き換える。
それだけでも意味はある。

ただ、業務フローは地図に近い。

地図を見れば、全体像は分かる。
道のつながりも分かる。
どこからどこへ行くのかも分かる。

でも、地図を見ただけでは、その道を歩いた感覚までは持てない。

実際に歩いてみると、思ったより坂がある。
迷いやすい交差点がある。
夜になると少し暗い場所がある。
途中で、誰かに聞きたくなる場所もある。

業務も同じなのかもしれない。

業務フローを描いただけでは、
顧客はまだ、その中を歩いていない。


2. 反応が変わったのは、問い合わせ業務が見えたとき

AIを導入すると、問い合わせ業務がどう変わるのか。

そこを話したとき、顧客の反応が少し変わった。

問い合わせが来る。
たとえば、AIが内容を分類する。
過去の回答やナレッジをもとに、回答候補を出す。
人がそれを確認する。
必要であれば、担当部署にエスカレーションする。
対応結果は履歴として残る。
次に似た問い合わせが来たとき、その履歴を参照できる。

こう書くと、ただの流れに見える。

でも、提案の場で大事なのは、
この流れを顧客が自分たちの一日として想像できるかどうかだと思う。

朝、担当者が画面を開く。

未対応の問い合わせが並んでいる。
AIが一次分類している。
回答候補が出ている。

ただし、そのまま送るわけではない。

人が確認する。
判断が必要なものは止める。
担当部署へ回す。
回答後は履歴が残る。

ここまで見えたとき、
顧客は初めて「導入後の自分たちの仕事」を歩き始めるのかもしれない。


3. AI導入の価値は、自動化だけではない

AI導入というと、どうしても自動化の話になりやすい。

問い合わせを何件減らせるのか。
対応時間をどれくらい短縮できるのか。
人の作業をどこまで置き換えられるのか。

もちろん、それも大事だと思う。

ただ、提案の場では、
それだけでは少し足りない気がしている。

顧客が知りたいのは、
AIがどれだけ賢いかだけではない。

導入後に、担当者が何に迷わなくなるのか。

誰に聞けばいいのか。
過去の回答はどこにあるのか。
この回答を出していいのか。
どこから先は人が判断するのか。
誤回答を防ぐために、どこで止めるのか。

そこが見えたとき、AI導入は少し現実の業務に近づく。

AIが回答候補を出す。
でも、人が確認する。
危ないものは止める。
判断が必要なものは回す。
履歴として残す。

この「どこまで任せて、どこで止めるか」まで見えたとき、
顧客は少し安心するのだと思う。


4. 提案書に必要なのは、情報量だけではない

提案書を作っていると、つい情報量を増やしたくなる。

機能一覧を書く。
導入効果を書く。
システム構成を書く。
スケジュールを書く。
体制を書く。
リスクを書く。

もちろん、どれも必要だと思う。

ただ、情報が多いほど伝わるわけではない。

むしろ、情報が多すぎると、
顧客はどこを見ればいいのか分からなくなることがある。

提案で本当に大事なのは、
顧客が頭の中で業務を再生できるかどうか。

このシステムが入ったら、
朝いちばんに何を見るのか。

問い合わせが来たら、
誰が最初に気づくのか。

AIはどこまで手伝うのか。

人はどこで確認するのか。

判断に迷ったら、
どこで止めるのか。

過去の対応履歴は、
次回以降どう使われるのか。

問い合わせの流れが整理されるのか。
判断が楽になるのか。
説明責任を果たしやすくなるのか。

そこまで見えたとき、提案書はただの説明資料ではなくなる。

導入後の業務を、一度体験してもらうための資料になる。


5. 提案書にも、少しだけ没入感がいるのかもしれない

最近、「イマーシブ」という言葉を耳にすることが増えた。

没入感とか、
体験の中に入り込むような意味で使われることが多い。

この言葉をそのまま提案書に持ち込むのは、少し大げさかもしれない。

でも、顧客に導入後の業務を頭の中で一度歩いてもらうという意味では、
提案書にも少しだけ没入感が必要なのだと思う。

派手な演出ではない。
見た目を凝ることでもない。
流行りの言葉を並べることでもない。

問い合わせが来たとき、
どの画面を見るのか。

判断に迷ったとき、
どこで止まるのか。

誰に引き継ぐのか。

回答した結果が、
次の業務にどう残るのか。

そういう導入後の一場面を、
顧客が自然に想像できる状態。

少し大げさに言えば、
それが提案書におけるイマーシブさなのかもしれない。


6. 提案がうまいSEは、概念化がうまい

提案がうまい人は、説明が長い人ではない気がする。

むしろ、文字が少なくても伝わる形にするのがうまい。

複雑な業務を、図にする。
言葉になっていない不安を、構造にする。
顧客がぼんやり感じている不便さを、一枚のイメージに置き換える。

「ああ、そういうことです」
「まさにそこが困っていました」
「これなら導入後の動きが分かります」

そう言ってもらえる提案は、
単に資料がきれいなのではない。

顧客の頭の中にあるものを、先に形にしている。
まだ言葉になっていない業務の景色を、見える形にしている。

だから、文字が少なくても伝わる。

これは、提案に関わるSEにとってかなり大事な力だと思う。

機能を知っているだけでは足りない。
業務フローを描けるだけでも、まだ足りない。

その業務の中で、
誰が迷うのか。
誰が判断するのか。
どこで止まるのか。
どこが楽になるのか。
どこに不安が残るのか。

そこまで考えて、顧客が想像できる形に置き換える。

それが、提案における概念化なのかもしれない。


7. 地図を渡すだけで終わらせない

業務フローを描くことは大事だ。

ただ、それだけで終わると、
提案はまだ地図を渡したところで止まっているのかもしれない。

顧客に必要なのは、
地図だけではない。

その道を歩いたときに、
どこで迷うのか。
どこで安心できるのか。
どこで立ち止まるべきなのか。
どこから先は人が判断するのか。

そこまで一度、頭の中で歩いてもらうこと。

業務フローは、顧客に地図を渡すことに近い。
導入後シナリオは、その地図の中を一度歩いてもらうことに近い。

提案書は、顧客に説明するためだけのものではない。
顧客が導入後の業務を想像するためのものでもある。

業務フローを描くだけでは、
顧客はまだその中を歩いていない。

提案に関わるSEとしては、
きれいな地図を描くことだけでなく、
顧客がその地図の中を一度歩けるようにすること。

そこまでできたとき、
提案は少しだけ、導入後の現実に近づくのだと思う。

あなたの提案書は、
業務フローを見せているでしょうか。

それとも、顧客が導入後の一日を歩けるようになっているでしょうか。


関連して書いた記事

AI時代のSEの仕事については、こちらでも書いています。

「自分がやった方が早い」と思っていた頃の話も、提案や任せ方に少しつながるところがあります。


#システムエンジニア
#提案書
#業務改善
#AI活用
#DX
#SE
#仕事術

いいなと思ったら応援しよう!