「AIで何%削減できますか?」と聞かれたとき、SEがすぐ答えられない理由
こんにちはあるいはこんばんは
最近、提案の場で少し言葉に詰まる質問があります。
「AIを使うと、何%くらい工数を削減できますか?」
聞かれること自体は、よくわかります。
お客さんも社内で説明しないといけない。
上司も役員も、AI活用の効果を数字で見たい。
提案する側としても、何かしら答えたい。
でも、その場で簡単に「30%です」とは言いにくい。
AIで速くなる仕事はあります。
これは間違いありません。
ただ、作業が速くなることと、コストが下がることは同じではない。
最近、現場にいて強く感じるのはここです。
AIで速くなる作業は、確かにある
提案の場で、こちらが機能や構成の説明をしているときに、ふと聞かれることがあります。
「ちなみにAIを使うと、どれくらい工数は下がりますか?」
その瞬間、少しだけ言葉を選びます。
AIで速くなる作業はあります。
これは間違いありません。
たとえば、こういう作業です。
資料のたたき台
提案時の目的や背景整理
顧客業界の下調べ
会議前の論点整理
コードのサンプル確認
文章の言い回しの整理
こういう部分は、かなり助かっています。
何もないところから自分の頭だけで考え始めるより、AIにまず壁打ちしてもらうほうが早い。
自分では見落としていた観点に気づくこともあります。
営業同行の準備でも、以前なら時間をかけて調べていたことを、短い時間でざっと整理できるようになりました。
この意味では、AIを使わない選択肢はもうないと思っています。
使えるものは使ったほうがいい。
使わないと、たぶん遅れていく。
それくらいの変化は起きています。
ただ、AIで作業が速くなることと、すぐにコストが下がることは同じではありません。
ここを雑に扱うと、あとで現場が苦しくなる気がしています。
「AIで何%削減できますか?」は簡単に答えられない
AI活用による生産性向上を説明してほしい。
コスト削減率を教えてほしい。
提案時に、そう言われることがあります。
もちろん、気持ちはわかります。
顧客側の担当者も、たぶん好きで厳しい質問をしているわけではないと思います。
その人も社内で説明を求められている。
役員から「AI活用はどうなっている」と聞かれる。
投資するなら効果を数字で示せと言われる。
だから、提案する側に削減率や生産性向上の説明を求める。
そう考えると、これは顧客のわがままというより、顧客側の担当者もAI時代の期待値に挟まれている話なのだと思います。
ただ、現場目線では少し怖さもあります。
AIを入れれば、すぐにコストが下がる。
AIツールを導入すれば、すぐに生産性が上がる。
そう単純に言えるものではないからです。
AIでコストが下がるかどうかは、ツールだけでは決まりません。
そもそも、何のコストを下げたいのか。
作業時間なのか
人件費なのか
外注費なのか
残業時間なのか
問い合わせ対応なのか
資料作成時間なのか
ここが曖昧なまま、
「AIで何%削減できますか?」
と聞かれると、現場はかなり答えにくい。
数字を出すこと自体はできます。
でも、その数字にどこまで責任を持てるのか。
たとえば私なら、いきなり
「30%削減できます」
とは言わないと思います。
たぶん、こう答えます。
「対象業務を分けて見たいです。資料作成や調査のように短縮しやすい部分はあります。ただし、確認、承認、顧客説明、例外処理まで含めると、削減率は業務ごとに変わります。まずは作業時間、確認時間、説明時間を分けて測るのが安全です」
少し回りくどいかもしれません。
でも、現場で責任を持って言えるのは、たぶんこういう答え方です。
顧客の現場で本当に実現できるのか。
前提条件が変わったときに、どう説明するのか。
そこまで考えると、簡単に言い切れない部分があります。
削減率を出す前に、見ないといけないものがある
もし削減率を出すなら、先に見ないといけないものがあります。
対象業務は何か
今どれくらい時間がかかっているのか
AIに任せられる部分はどこか
人間の確認が必要な部分はどこか
例外処理はどれくらいあるのか
使う人がどこまで慣れているのか
削減した時間を、本当にコスト削減と見るのか
つまり、削減率を聞かれたときに最初に見るべきなのは、AIツールではなく、業務の内訳です。
この前提がないまま数字だけを出すと、あとで苦しくなります。
たとえば、資料作成時間が半分になったとしても、その分すぐに人件費が半分になるわけではありません。
空いた時間で、別の資料を作るかもしれません。
確認の時間が増えるかもしれません。
顧客説明の準備に時間を使うかもしれません。
AIが出した内容の裏取りに時間を使うかもしれません。
つまり、作業時間が減ることと、実際のコストが減ることは別の話です。
ここを分けて考えないと、
「AIを入れたのに、思ったほど効果が出ない」
という話になりやすい。
AIの効果を語るには、ツールの性能だけでなく、業務の流れや確認の仕方まで見ないといけないのだと思います。
このあたりを図にすると、AIで速くなる作業と、むしろ残る仕事の違いが少し見えやすくなります。

AI活用は、ツールの話だけではない
AI活用の話は、どうしてもツールの話に見えます。
どのAIを使うか。
どの機能を使うか。
どこまで自動化できるか。
もちろん、それも大事です。
でも実際には、業務整理の話でもあります。
業務の流れが整理されていない。
判断基準が人によって違う。
データが揃っていない。
例外処理が多い。
承認フローが複雑。
セキュリティや運用ルールが決まっていない。
こういう状態のままAIだけを入れても、期待したほど効果は出にくい。
むしろ、AIを使うための準備や説明が増えることもあります。
AIツールを入れることと、現場の生産性が上がることは同じではありません。
この間には、かなり地味な整理があります。
そして、その地味な整理をしないと、数字だけが先に歩いてしまう。
AIで増えるのは、作業ではなく説明かもしれない
AIで資料を作る。
AIで文章を整える。
AIでコードを書く。
AIで要約する。
ここだけを見ると、仕事は軽くなります。
でも、その先には説明があります。
なぜこの案なのか。
なぜこの数字なのか。
なぜこの範囲なのか。
なぜこの業務から始めるのか。
なぜこのAI活用は効果が出やすいのか。
逆に、なぜここはAI化しにくいのか。
これを説明しないといけない。
しかも相手は、AIに詳しい人ばかりではありません。
顧客
営業
上司
役員
若手
現場担当者
それぞれ理解したいことが違います。
顧客は費用対効果を知りたい。
営業は提案としてどう見せるかを知りたい。
上司はリスクや妥当性を知りたい。
若手は何をどう進めればいいかを知りたい。
役員は投資判断として意味があるかを知りたい。
同じAI活用の話でも、相手によって説明を変えないと伝わりません。
ここは、AIが自動で全部やってくれるわけではない。
むしろSE(エスイー)の仕事は、作ることから、説明して、整理して、検証することに寄っていくのだと思います。
ただ今回感じているのは、単に「整理と検証が大事」という話だけではありません。
その先にある、
顧客にどう説明するか
数字をどこまで責任を持って言えるか
期待値をどう調整するか
ここが重くなっている、という感覚です。
上司への説明も、若手フォローも軽くならない
社内でも同じです。
上司に説明するときに、
「AIが作ったので早いです」
だけでは済みません。
この案で本当にいいのか。
リスクはどこにあるのか。
顧客にどう説明するのか。
社内として責任を持てるのか。
そこまで整理しないといけない。
若手フォローでも、似たようなことがあります。
若手がAIを使うこと自体は悪くありません。
むしろ使った方がいいと思っています。
ただ、AIが出した答えをそのまま持ってこられると、こちらは結局、前提から確認することになります。
なぜこの案なのか。
他の案は見たのか。
この前提は合っているのか。
顧客に説明できるのか。
AIで若手の作業は速くなる。
でも、育成する側の確認は減らない。
ここにも、AIで仕事が楽になると言い切れない理由があります。
期待値が上がると、仕事の終わりも見えにくくなる
AIは便利です。
でも、便利な道具を使えるようになると、周囲からの期待値も上がります。
もっと早くできるよね。
もっと調べられるよね。
もっと比較できるよね。
もっと提案できるよね。
もっと生産性を上げられるよね。
こうなる。
自分自身にも、それはあります。
AIを使わない選択肢はない。
もっとできるのではないか。
どこで活用できるだろうか。
そう考えて、つい調べてしまう。
これは前向きなことでもあります。
ただ、気をつけないと仕事の終わりが見えにくくなります。
AIで調べられる。
AIで比較できる。
AIで別案も出せる。
AIでもう少し深掘りできる。
だから、どこで止めるかが難しくなる。
AIは作業を速くしてくれます。
でも、仕事の線引きまで自動で決めてくれるわけではありません。
どこまでやるのか。
何を捨てるのか。
何を人間が確認するのか。
何を顧客に説明するのか。
どこから先は言い切らないのか。
この判断は、まだ人間側に残っています。
AIで仕事は楽になる。でも勝手には楽にならない
AIで仕事は楽になります。
これは否定しません。
ただし、勝手には楽にならない。
AIツールを入れたら、自然に生産性が上がるわけではない。
AIを使ったら、自動的にコストが下がるわけでもない。
AIで資料が速く作れるようになっても、顧客説明や社内調整や人間関係は残ります。
むしろ、AIでできることが増えた分、期待値も上がる。
だから最近は、AIで仕事が楽になるかどうかよりも、
AIで上がった期待値を、現場でどう扱うか。
そちらのほうが大事なのではないかと思っています。
「AIで何%削減できますか?」
そう聞かれたときに、ただ数字だけを出すのではなく、
どの業務なら効果が出やすいのか
どこは先に整理が必要なのか
どの数字なら責任を持って言えるのか
どこから先は期待値だけで語ると危ないのか
そこまで説明できること。
AI時代のSEには、そういう力が求められていくのかもしれません。
あなたの仕事ではどうでしょうか。
AIで減った作業時間は、何に置き換わっていますか。
確認でしょうか。
説明でしょうか。
別の作業でしょうか。
それとも、ちゃんと余白になっているでしょうか。
私はまだ、余白になっている場面は少ない気がしています。
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このnote全体で書いていることはこちらにまとめています。
はじめまして。40代SEの私がnoteで書いていきたいこと
用語集
AI(エーアイ)
人工知能のこと。ここでは文章作成、調査、要約、資料作成、コード生成などを支援する生成AIも含めて使っています。
生成AI
文章、画像、コード、要約、構成案などを作るAIのこと。ChatGPTやGeminiなどが代表例です。
SE(エスイー)
システムエンジニアのこと。技術説明だけでなく、要件整理、顧客説明、検証、運用影響の確認なども担います。
生産性向上
同じ時間でより多くの成果を出すこと。ただし、AIツールを入れただけで自動的に実現するものではなく、業務整理や使い方の設計も必要になります。
コスト削減率
AI活用などによって、作業時間や人件費、外注費、残業時間などをどれくらい減らせるかを示す割合のこと。ただし、何をコストとして見るかを先に決めないと、数字だけが一人歩きしやすくなります。
検証
AIが出した内容や提案が、本当に正しいか、現場で使えるか、責任を持って説明できるかを確認することです。
