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老舗がスタートアップに変身。123年企業が挑むサーキュラー・エコノミーの実装現場

カーボンニュートラルが現実的な経営課題となる中、廃棄物業界にも技術革新と事業再編の波が押し寄せています。東港金属は再資源化を起点にした新規事業やM&Aを通じ、業界の構造改革をリード。BtoB資源アプリ「ReSACO(リサコ)」の開発をはじめ、トレーサビリティの可視化やデータ活用にも挑む123年企業が「スタートアップ思考」で臨む、循環経済の実装と変革の現場に迫りました。


【第1章】産業廃棄物業界、再資源化へのパラダイムシフト

― まず、産業廃棄物業界の概要や動向について教えてください。

産業廃棄物業界とは、企業から出る廃棄物を適切に処理して可能なかぎりリサイクルや再利用を行う、いわば社会の資源循環を支える業界です。廃棄物処理業として見た場合、マーケット規模は5兆円未満とされていますが、近年注目されている「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」まで視野を広げると、その市場規模は50兆円以上に達すると言われています。再生材を活用した製品開発や省エネ設計、CO2排出量の可視化、カーボンクレジットのような新たな経済指標も含まれます。

ヨーロッパでは自動車の廃棄段階における環境負荷の低減を目的として、2000年に「ELV指令(End-of-Life Vehicles Directive)」が制定されました。これによって自動車メーカーは一定比率の再生材を製品に使用する義務が生じ、製造段階から廃棄物との向き合い方が変化しています。

国内でもこのような国際潮流に対応する動きが加速しています。きっかけは2020年に菅政権が掲げた「2050年カーボンニュートラル宣言」。大手企業を中心に「再生材を調達・活用しなければ製品が売れなくなる時代」が到来しつつあります。

サーキュラーエコノミーの概念図

さらに、2025年に政府が示した「骨太方針」にもサーキュラー・エコノミー推進が明記されました。骨太方針とは、毎年6月に閣議決定される経済・財政運営の基本指針ですが、ここに「資源循環」が成長戦略として挙がったことは私たちの業界にとって大きな追い風です。

現在(2025年8月)、廃棄物処理業は「コスト」ではなく「未来の競争力」に変わってきています。私たちはこの流れを「1995年のインターネット前夜」のような大転換期だと捉え、先頭に立って波に乗る覚悟でいます。

― 産業廃棄物業界の社会的役割はどのように変わっていますか。

これまでは企業活動で生じたゴミを法令どおりに処理する、つまり、廃棄=リスクやコストという発想がありました。しかし、現在は廃棄物そのものが資源になるという考え方が一般化しつつあります。CO2排出量の少ないリサイクル方法や、環境負荷の少ない処理プロセスの選定といった「質の高い廃棄」を選ぶ時代へと進化しているんです。

近赤外線を使った選別機「Black Eye」

このような変化に、業界内のプレイヤーたちがまだ対応しきれていない現実もあります。そこで、今年に「再資源化事業等高度化法」が制定されました。この法律は再生材の質と量の確保、資源循環産業の競争力強化、資源自給率の向上などを目的とし、技術開発や設備投資を促進するものです。

また、この法整備によって接点のなかった製造業やサービス業も業界に参入しやすくなりました。私たちにとっても、業界を抜本的にアップデートする大きなチャンス。廃棄物処理の現場では、従来の業者だけでは高度化が難しくなっており、異業種のプロ人材やテックプレイヤーが連携する動きも出てきています。

― 産業廃棄物業界に新しい視点を持った人材が参入する一方、長年業務に携わってきたベテランの方々が高齢化によって引退します。どのように彼らの勘や経験を継承して業務効率化を図るのでしょうか。

東港金属では、トヨタ自動車が提供する廃棄物処理の高度化支援ツール「Domatics」を導入しています。これは作業員の動きを映像解析し、姿勢や移動などを数値化することで「現場の暗黙知」を可視化する仕組みです。

例えば「Aさんは全体作業時間のうち25%をしゃがんでいる」「Bさんは鉄くずよりも段ボールを回収している」など、個人の作業傾向が定量的に把握できる。こうして得られた現場のデータをもとにAIの活用や設備の見直し、また、省人化による作業設計の高度化を実施しています。トヨタ自動車側も「どこにボトルネックがあるのか」と現場と一緒に考えるスタンスを持っていらっしゃるため、私たちも多くの業務革新を学ばせていただいています。

トヨタ自動車による「Domatics」で行った動作検証

【第2章】老舗をスタートアップに。「循環の次のステージ」

東港金属では産業廃棄物をどのように扱い、どの工程まで担っていらっしゃいますか。

私たちは東京に立地する総合リサイクル企業として、オフィスや自治体から生じるあらゆる廃棄物を回収・分別し、再資源化までを行っています。例えば、オフィスチェアやパーティション、OA機器、小型家電などから銅や鉄、アルミといった素材を取り出してリサイクルしています。最近ではプラスチックにも力を入れ、近赤外線を活用してポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂を識別し、それぞれを分離・再生しています。

東港金属千葉工場の金属スクラップリサイクル。高度な技術で金属を選別する

― 分別した再生材を使い、貴社でプロダクトを作ることもありますか。

私たちはあくまで中間処理のプロです。最終的なプロダクトを作るのは素材メーカーの役割で、私たちはそちらに向けて再生材の素を届けています。どのように素材を整えて渡すのかによって製品の品質や安全性が大きく変わるため、この工程は非常に重要なんです。

― 東港金属は創業123年の老舗企業でありながら、スタートアップのような挑戦もしていらっしゃいます。2018年にトライシクルを立ち上げた背景を教えてください。

きっかけはメルカリの存在でした。あれはまさに、ダイレクトリユースの完成形ですよね。私たちがやるべきことはこれだったんじゃないか。企業が使わなくなったモノを、必要としている方に直接繋げる。「東京でリサイクルを生業とする私たちこそ実現できる」とBtoBマッチングプラットフォームを開発しました。

しかし、そう上手くはいかず「こんなにすばらしいプロダクトなのに、なぜ使われないのか」とユーザーにヒアリングすると「会社で不要品を捨てたい時にわざわざスマホで撮って登録しないでしょ」と。そこで、片側だけが使う「買い取り専用アプリ」にピボットし、現在は「ReSACO」というサービスとして展開しています。マッチング機能だけでなく、資源リサイクルや廃棄物処理を効率化する機能も持っています。

BtoBリユースプラットフォーム「ReSACO」のホームページ

― 「ReSACO」に対し、お客様からどのような声が集まっていますか。

リサイクル業者に買い取ってもらう、産廃業者に引き取ってもらう、粗大ゴミに出すといった従来のやり方では時間や費用がかかっていたところ、簡単に取引ができるようになった、積極的に使いたいというお声を続々と頂いています。

加えて、素材のトレーサビリティという視点での評価も高まりつつあります。例えば、中古オフィスチェアを出品する場合に商品名やメーカーが分かっていると何の素材が使われているのかが特定できるため、再生材としての品質保証がしやすいんです。

従来の廃棄物業界では「これは何でできているのか分からない」というケースが多く、素材として再利用されづらかった。ReSACOを経由すれば、それらが一目瞭然。大手家電メーカーや自動車メーカーのお客様にとっても大きな安心材料になるとおっしゃっていただいています。

廃棄予定の家具がデザインの力で蘇る。リメイク家具ブランド「enloop」

― 素材情報の可視化やトレーサビリティは今後、どのように制度化されていくとお考えですか。

ヨーロッパではすでに「DPP(Digital Product Passport)」という構想が進んでいます。モノを販売する時、どんな素材がどんな構成で使われているのかをデジタルで記録・共有するという考え方です。日本でも経済産業省が中心になって検討し始めているため、将来的にはDPPが一般的な仕組みになる可能性があります。食品でいう「原材料表示」のように、資源の流通においても透明性が求められる時代が来るのではないか、と。

― その変化はいつ頃から本格化していくと予想していらっしゃいますか。

日本では2050年カーボンニュートラル、2030年でCO2排出46%削減を目標に掲げています。つまり、2028年くらいまでには、サーキュラーエコノミーや素材トレーサビリティに関する制度や技術が具体化していないと間に合いません。今はまさに、企業も行政も「動き始めなければ」というタイミングに来ていると思います。

【第3章】再開したロードバイクで高いQOLをキープ

― 福田さんの健康習慣を伺います。ロードバイクやシクロクロスに取り組んでいらっしゃいますが、シクロクロスとはどのような競技でしょうか。

冬限定で行う競技で、ロードバイクでオフロードを走るようなものですね。泥や砂、芝の上を走り、坂道は自転車を担いで駆け上がる。特にベルギーやオランダで盛んで、日本でも冬になると各地でレースが開催されます。私は春夏秋はロードバイク、冬はシクロクロスを楽しんでいます。

週末はロードバイクで100〜120Km乗っていると話す福田さん

― なぜロードバイクに乗るようになったのですか。

20年前に外資系企業に勤めていた頃、先輩に誘われたのが最初です。当時はあまり楽しく感じられず、2年ほどでやめました。その後、コロナになる前に電動自転車で会社に行ってみようと思って、ドコモのシェアバイクに乗ったんです。そうしたらいろんな場所に楽に行けて、楽しくて。ちょうどコロナになって公共交通機関を避ける人が増え、シェアバイクが借りづらくなったので、昔のロードバイクを引っ張り出して乗り始めました。それ以来、毎週末100〜120kmは乗っていますね。

― ロードバイクを続けることで、どのような変化がありましたか。

まず、痩せました。有酸素運動ですから脂肪燃焼に効果的ですし、椅子に座って漕ぐから膝への負担も少ない。その上、大腿四頭筋やハムストリング、大殿筋といった大きな筋肉を使うので、効率的にカロリーを消費できる。ストレスの発散になるし、思考も整理できますよ。

― 福田さんはロードバイクの大会にも出場していらっしゃるんですよね。

はい。日本最大規模の「富士ヒルクライム」と呼ばれる、富士山を登る大会に2回出場しました。毎回約8000人が参加して五合目までの24kmを登るんですが、私はもう出場しなくてもいいかな(笑)。

― 体づくりのために、日々のお食事でも工夫していらっしゃいますか。

最近は糖質よりも脂質を多く摂るようにしています。糖質を摂ると血糖値が一気に上がって、その反動で眠くなってしまうから。その点、脂質はエネルギーの持続力が高いので、ロードバイクをするには向いているんです。以前は脂質を抑えてタンパク質やご飯中心の食事でしたが、今はとんかつや唐揚げ、天ぷらも普通に食べて、ご飯の量を減らしています。プロテインは朝に飲んでいますね。さすがに朝から肉は食べられませんから(笑)。

体を定期的に動かしていると、自然と食事や睡眠にも意識が向きますよね。今後、どんなに年齢を重ねても健康でいたい。医療水準が上がって健康寿命が延びる中で、QOLを高く保っていたいんです。60歳を過ぎてマチュピチュに行こうと思い立った時も、フットワーク軽く旅行に出かけたいですね。

【第4章】社会的要請と未来への挑戦。拠点拡大で描く先

― 現在、業界や社会的な潮流を受けて、どのようなことに取り組んでいらっしゃいますか。

実は当初、環境政策の転換が発表されてもピンと来なかったんです。しかし、カーボンニュートラルが国策として打ち出されてから1年ほど経った頃、突然、大手企業からのお問い合わせが急増しました。「なぜ、わざわざうちに?」と。石油化学や鉄鋼、自動車といった産業の方々がそれぞれの立場で脱炭素の打ち手を探す中で、私たちのようなリサイクル専門企業に白羽の矢が立ったのでしょうね。

ただ、当時は私一人で対応していたため、せっかくの相談案件も取りこぼしてしまう。初回の打ち合わせに社長の私が出て行くと、話は盛り上がるものの組織力に不安を持たれて受注に至らない。そんな状況が続きました。

この経験から、組織として厚みを持つ重要性に気づきました。会社としてより大きな役割を果たすためには資金力、採用力、そしてプロジェクトを推進する体制づくりが不可欠。現在はそれらのアップデートに勤しんでいます。

株式会社サナースの「サナース・ソーティング・ラボ」。高技術を搭載したヨーロッパ製選別機

また、2023〜2024年にM&Aへ積極的に取り組み、4社を買収しました。同業の産廃事業者、リサイクル業界向けのネットワークインフラを構築する企業、高度なリサイクル設備をヨーロッパから輸入販売する企業、そしてECを手掛ける企業です。ただ、買収すれば成功するわけではなく、現在も痛みを伴いながら試行錯誤を重ねて経験と知見を積み上げているところです。

― 東港金属は今年で創業123年、産業廃棄物業界では一二を争う老舗企業でいらっしゃいます。「ここだけは譲れない」というものはありますか。

やはり東京という都市でリサイクル業を営んでいるという立ち位置です。最近ではクレディセゾンと合弁して「リ・セゾン」という会社を立ち上げました。リースが満了した機器などを買い取って再販する取り組みです。すでに埼玉や、大阪、名古屋、九州などに拠点を展開しており、直近では佐賀県鳥栖にも新拠点を設けました。今後もこの水平展開は継続していきます。

「リ・セゾン」の倉庫の様子

― 長期的にはどのような会社像を描いていらっしゃいますか。

私たちのパーパスは「サーキュラー・エコノミーを追求し、持続可能で豊かな社会をつくること」です。循環型経済という言葉が定着しつつある今こそ、その本質を突き詰めて実践し続けます。日本国内はもちろん、アジア圏にも大きな可能性があると考えています。

― 最後に、こちらを読んでいるビジネスパーソンの皆さんへメッセージをお願いします。

皆さんは真面目すぎるのかもしれません。世の中が不安定でも、まずやってみる。失敗したら、それも一つの経験だし、いいじゃないですか。それに、その時々のバズワードに踊らされたっていいんですよ。私たちだってM&Aや新規事業で成功も失敗も繰り返しています。「なぜあんな愚かなことをしたんだろう」と悔やむこともある。でも、人間は完璧ではありません。いろんなことをやってみて、後からリカバリーすればいい。だから、もっと自由に挑戦してほしいですね。上手くいっても失敗しても、どちらも人生ですから。

― 福田さん、お話をお聞かせいただきありがとうございました。

(企画・取材・執筆:佐野 桃木  写真:東港金属  最高顧問:Z)

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