見出し画像

高野秀敏が語る。成長組織で成果を出す人は、何をしているのか

採用支援1万件超、投資先80社、上場支援180社―。転職支援とベンチャー投資の両輪でスタートアップ業界を支えるキープレイヤーズ代表取締役の高野秀敏さんに成果を出す人材の共通点や経営者の器、キャリアの選び方を伺いました。他では語られない高野さんの健康習慣も少し、お届けします。



【第1章】採用のプロが歩んだ「人を活かすキャリア」

― 高野さんの現在のご活動を教えてください。

現在(2025年9月)ベンチャーやスタートアップ専門の転職エージェントである株式会社キープレイヤーズや、小さいグループを3社経営しています。これまでに1万1000人以上の方への転職支援や4000社以上の採用支援を行い、採用される側・する側の両輪で推進してきました。個人としてもエンジェル投資家として約80社に投資し、そのうち9社が上場。180社近くの上場支援や社外役員、顧問を務めてきました。

東北大学特任教授としてのスタートアップ支援に加え、文部科学省「アントレプレナーシップ推進大使」としても学生向けに教育を行っています。さまざまな困難や変化が起こる社会において自ら社会的課題を見つけて行動を起こし、新たな価値を生み出していく知識や考え方を提供しています。

2024年には書籍「ベンチャーの作法 結果が全ての世界で速さと成果を両取りする仕事術(ダイヤモンド社)」を刊行し、5万部突破のベストセラーになりました。私が監修したベンチャー企業の適性を短時間でチェックできる診断ツール「簡単1分でわかる、ベンチャー適性診断」も、おかげさまで沢山の方々にご利用いただいています。

―現在の顕著なお取り組みについてもお聞かせください。

現在注力しているのはヘッドハンティングや採用代行です。弊社のヘッドハンティングでは仕組みややり方が特殊のため公開できませんが、経営者の方とお会いした時に詳細をお話ししています。採用代行ではさまざまな会社から引き継ぎ、前任者が苦戦した業務でも結果が出ていると高くご評価いただいています。実際には求職者にスカウトメールの形式的な運用では成果が出ずに悩んでいるケースも多く見受けられます。そういった現場の何気ない課題も全て抽出・改善しながら実効性のある支援を行っています。

【第2章】上司よりもお客様を優先していた、若手時代

― 高野さんは新卒でインテリジェンス(現在のパーソル)に入社しました。どのような社員でしたか。

インテリジェンスはU-NEXTの宇野康秀さんが創業した国内大手人材企業で、サイバーエージェントの藤田晋さんをはじめ、後に独立して上場した経営者を多く輩出しています。私が入社した1999年当時は創業10年ほどの若いベンチャー企業で、あらゆる新規事業に挑戦していました。

私は新規開拓の法人営業に配属され、常に結果を出して昇進・昇格も果たしました。ただ、会社の意向に従ってバランスよく動いていたというよりも「こうするのがいい」と自分で判断して動くタイプだったためプライドが高く、上司に楯突くことも多かった。結果を出していたことで評価はされていたものの不器用で、周囲との調整や連携を欠いていた面もありました。

著書にも書きましたが「ベンチャーにおける真の顧客は上司や経営者である」と後になってから痛感しましたね。当時の私は「お客様が全てだ」「社内営業なんて必要ない」と考えていたため、ずいぶんと遠回りしました。もっと素直に上司の意見を聞いていれば大きな仕事を任され、より多くのお客様に貢献できただろうと思います。

― 高野さんが就職活動時に人材業界を選んだのはなぜですか。

人材業界が成長産業になると確信していたからです。日本は少子化によって労働人口が減っていく中で「人」の価値が高まり、それが経済にも大きな影響を与えるし、その周辺にある産業も繁栄するだろう、と。

また、1999年卒ではまだめずらしかったインターンとしてリクルートに参加し、後にリンクアンドモチベーションを創業する小笹芳央さんが率いる組織人事コンサルティング室に所属させていただきました。その際に「インテリジェンスがリクルートの次に伸びる会社だ」と教わったことも入社の決め手になりました。

さらに、就職活動ではいかなる業界でも自分が上位に立てるかどうかを重視していました。一流の金融機関やコンサル企業などから内定を頂いても、同期たちと顔を合わせるとみんなレベルが高かった。その中でトップ層に入らなければ、やりがいのある仕事は任されないと痛感しました。そこで、今後市場が伸びそうで、みんながまだそのポテンシャルに気づいていない人材業界に飛び込みました。

― 高野さんは人の役に立つというマインドを強く持っていらっしゃいますが、それはなぜですか。

家族の影響が大きいです。特に祖父は保護司(犯罪や非行をした人が立ち直り、再犯を防ぐことを地域で支援するボランティア)として国から叙勲を受賞するほど熱心に活動していました。

ある日、祖父のもとに一組のカップルが結婚の報告に訪れたことがあったんです。男性はかつて罪を犯して刑務所に入りましたが執行猶予となり、祖父の助言に従って誠実に生き直しました。彼は就職して仕事を頑張っていたところ女性と出会って交際を始めたそうです。彼は交際中に自分の過去を正直に話し、女性は「それは過去の話。未来に同じことをしなければいい」と信じてくれた。

身寄りのなかった男性は、祖父に結婚を報告したんです。その姿を見て、子どもながらに「誰かの助言や関わりによって人生は大きく変わるんだ」と衝撃を受けました。誰か一人の人生を変えることが、社会全体を変える力になる。「将来は社会的インパクトのあることをやろう」と心に決めました。

インテリジェンス創業者の宇野さんが「社会に価値あるものを残す」と常に語っていたことも私の原動力になっています。「人はみんな自分の人生のキープレーヤー」と捉え、その可能性を見出すことが仕事の軸になっています。

【第3章】スタートアップが潰れないための実践的ヒント

― コロナ以降のスタートアップ市場の傾向・課題を教えてください。

経済活動が再開され、採用も回復してきました。コロナ禍ではフルリモートを導入する企業が増えましたが、現在は出社とのハイブリッド型や完全出社に戻す企業も出てきています。それに伴い「働き方の変化」に不安を感じ、転職活動を始める方や業務委託、フリーランスといった柔軟な働き方にシフトする方も増加しました。ただ、フリーランスを経験した方の中には収入の不安定さから正社員に戻るケースも見られます。

― 起業家からは資金調達が難しくなったという声も聞かれます。VCや投資家はどのようにご覧になっていますか。

2022年まではグロース市場が好調でしたが、2023年以降は株価の低迷が続いて投資回収が難しくなりました。しかし、私が創業期から役員を務めた株式会社メドレーが設立された2009年当時、日本のスタートアップ資金調達市場は約700億円でしたが、2024年には7,793億~1兆891億円と拡大。こうした厳しい外部環境下でも、タイミーのような優れた企業や2000億円規模の会社は上場しています。全体としては活発な投資が続いていますね。

― 起業で失敗しないためのコツはありますか。

30代以上なら、自分の経験領域で「ここに課題がある」と実感したテーマで起業するのが堅実です。逆に、若年層や未経験の業界でゼロから起業するのは難易度が高い。ソリッドベンチャーなどさまざまな言い方がありますが、まずは初期投資が少なく個人で始められる領域、例えばコンサル、営業代行、住宅仲介、M&A支援、コンテンツ編集などでスモールスタートし、自力で年間3000万円を稼げるようになれば事業化や資金調達に踏み切ってもいいと思います。

独立にハードルを感じるのであれば正社員として働きながら副業を始めたり、知人の事業を手伝ったりして足場を固めるのも一つの選択肢です。

― エンジェル投資家として、どのような起業家に魅力を感じますか。

「巻き込み力」のある方です。実際に投資家や社外役員、メディアを巻き込んでワクワクさせられる方がいらっしゃいます。合理的に考えると大企業が一般的に給料が高くて雇用も社会性も安定している一方、立ち上げたばかりの小さい会社には誘われてもジョインするのが不安ですよね。ところが、そんな不可能を可能にする方がいます。成功者に共通しているのは根拠のない自信やビジョン、突き抜けた信念があること。人は本質的に弱い生き物で、強い意志を持つ方に惹かれるんです。

また、市場の伸びだけに着目しすぎないことも大切です。例えば、日本では戸建て住宅市場が縮小傾向にありますが、オープンハウスは1兆3000億円(2024年9月期の売上高)を達成しています。いかなる市場でも勝てる起業家はいるんですよね。

― 仲間選びの観点では、どのような基準で人を見極めればいいでしょうか。

まずは自社の課題を明確にし、それを解決できる人材かを見極めることが大切です。スタートアップの初期段階では面接だけでスキルや人柄を把握するのは難しいため、信頼できる知人に声をかけて無償でも手伝ってくれる方を巻き込んでみる。もちろん、お金があれば少額でも支払うべきですが「対価がなくても協力してくれるかどうか」はその方のスタンスを知る上でヒントになります。

さらに、著書「ベンチャーの作法」にも書きましたが、大企業とスタートアップでは求められる働き方が異なります。まだ組織や仕組みが未整備な中で、自ら考えて行動して結果を出すかどうか。大きな裁量を求めるよりも、小さな仕事を誠実に積み重ねて信頼を得られるタイプかどうか。最初から完璧である必要はありませんが「ベンチャーだからこそ求められる姿勢」は存在します。

残念ながら、ほとんどのスタートアップは数年で姿を消します。採用の成否だけでなく、事業全体が上手くいかないことも多い。人を賭け事のように扱わない慎重さが必要ですね。

【第4章】AI・人口減少時代に求められる「人間性」

― これから新たに取り組みたい領域を教えてください。

医療や福祉、第一次産業など、社会生活を支えるエッセンシャルワーカーや実業、地方事業にはまだ大きな可能性があります。また、東北大学特任教授として、他大学とも連携しながらリアル産業や後継者問題に取り組みたい。社長の高齢化によって黒字廃業する会社が増えているため、外部から経営者をアサインするなど事業承継の仕組みをつくっていきます。

― 文科省アントレプレナーシップ推進大使としてもご活動になっている中、教育や支援を通じて今後の社会をどのように予想していらっしゃいますか。

ユヴァル・ノア・ハラリ氏が「ホモ・デウス」などで提唱しているように、テクノロジーによって人間の意思決定が最適化され、データとアルゴリズムが支配する社会になると考えています。現時点ではAIに指示を出す感覚が強いですが、やがて「AIから指示されて動く」時代になるでしょう。ホワイトカラーの仕事はゼロにはなりませんが、確実に減っていきます。

AIとの共生が進めば、人は知的労働や単純作業から解放されます。一方「個としての価値をいかに活かすか」が問われます。AIが当たり前になるとルーティン業務は全てAIに任されるようになりますが、ブルーカラーの仕事はロボット化にもう少し時間がかかるためしばらく残ると予想しています。日本では人口が毎年約90万人減少し、外国人労働者の年間増加は25万人程度。そのギャップを埋めるためにもAIの活用は不可欠です。

― 世代間でAIに対する受け入れ方も違いそうですね。

私よりも上の世代、特に50代以上の方々はAIを完全に受け入れるのは難しいかもしれません。私の親もようやくLINEを使い始めたくらいですから。その反面、若い世代の皆さんはAIネイティブとして抵抗が少ないはず。このあたりには受容度のグラデーションがあるでしょう。今後、AIが社会の中心になった時、人間は何をするのか―。私は人間性を磨くこと、徳を高めること、他者からの信頼や評判を得ること、人を応援することなど「人間らしさ」に重きを置く時代が来ると想像しています。

―いかなる時代でも人間性や業務パフォーマンスが求められますよね。

そのとおりです。結局、仕事の結果を出すことに尽きます。雇われているなら、目の前の仕事に全力でコミットして100%以上の評価を得る努力をする。それができていないうちから、先のことを考えて悲観しても仕方がない。今の仕事で結果が出ないなら、思いきって職業を変えてもいい。人生100年時代と考えたら、どうしても身につけたいことがあるならお金を払ってでも学び直せばいいんです。

― 新しいことを始めたいと考える皆さんへメッセージをお願いします。

何でもいいから人の役に立つことや結果に繋がることをやってみましょう。また、ビジネスパーソンは実名でSNSにプロフィールを書いたほうがいいですね。HRプラットフォームの売上や利益、時価総額が高いのは、多くの方が自分の仕事や実績をSNSで明示していないから。

プロフィール欄に業務内容や成果を書いておけば、採用担当者が直接スカウトできます。逆に、何も書かれていなければスカウトしようがない。結果として採用コストが上がり、企業も人件費を抑えざるを得なくなります。「自分には書けることがない」と悩む方もいますが、それなら「SNSで書けることを作るために仕事を頑張る」がモチベーションになるのではないでしょうか。

【第5章】点滴、食、神社。経営者が整える健康ルーティン

― 最後の章では高野さんの健康習慣について伺います。普段、どのような運動をしていらっしゃいますか。

運動を週に何回やると決めず、頻繁に歩くようにしています。加えて、オンラインミーティングの前後にバックランジをしたり握力を鍛えたり。オフィスにもトレーニング用のボールやアブローラーを置いているので時間のある時は体を動かしています。

― お食事ではどのような点に気をつけていらっしゃいますか。

会食の機会もありますが、基本的には朝食を取らずオートファジーをしています。習慣的に飲んでいるのはリコピンリッチというトマトジュースに黒酢、リンゴ酢、炭酸を混ぜたドリンク。サプリメントやブルーベリーも必ず摂っていますね。これは経営者に多いですが、幹細胞上清液という点滴も打っています。日々の食事でも野菜やタンパク質を意識しつつ炭水化物は控えめにしています。

― 他にも、健康維持のために実践していらっしゃることはありますか。

定期的に鍼治療やマッサージ、予防医療に通って、その時の体調に合った漢方も処方していただいています。普段、どうしても多忙が続いたり悩んだりすると無理をして必ず体調を崩してしまう。予防にも気を配っていますね。

とはいえ、鉄人のような方もいらっしゃいます。例えば、堀江貴文さんは「REAL VALUE」の撮影時に「頭が痛くなったのって何年前だっけ」とおっしゃっていました。風邪すら引かない、と。経営者界隈には無限に体力のある方が沢山いらっしゃるんです(笑)。いつも元気で免疫力が高く、ポジティブで、我慢せずに発散できる。私は子どもの頃に入院したことがあるくらい体があまり強くないので、憧れますね。

小さなことですが、うがいや手洗いに加えて「鼻うがい」もしています。お香を焚いてリラックスしたり、月に数回氏神さまを訪ねたり、部屋に盛り塩を置いたりしています。玄関前には何も置かず、邪気を払う観葉植物を置くなどマインドの安定も意識しています。

― 人生100年時代、心身のメンテナンスはますます大切になっています。

そうですね。実は20年前からダンススタジオに通いたいと思っていますが、実現していないかも(笑)。ジムに行ってマシントレーニングやウエイトを頑張るモチベーションもまとまった時間もなくて。経営者を引退するまでこんな感じでいくのかな。週2回ヨガやピラティスをやったりFEEL CYCLEに通ったりした時期もありますが、毎日の隙間時間に少しずつやるほうが私には合っているのかもしれません。

― 高野さん、お話をお聞かせいただきありがとうございました。

(企画・取材・執筆:佐野桃木  写真提供:キープレイヤーズ  最高顧問:Z)

● プロフィール「株式会社キープレイヤーズ代表取締役 高野秀敏さん

💙 stand.fmで裏話を配信中「ももりんの『あの経営者の余談』RADIO

ご興味を持ってくださった方はnoteをフォローしてくださると嬉しいです。
※ 「静かな空間でゆっくり読まれること」を想定して構成しています。

● ご出演・ご意見はこちら「お問い合わせフォーム

● 関連記事「いちごから始まる農業維新―岩佐大輝が挑む、データドリブン経営と『ローカル・ルネッサンス』

● ご感想は #あの経営者の筋トレ でシェアしていただけたら嬉しいです

#あの経営者の筋トレ #あの経営者のオフレコ #経営者の素顔 #高野秀敏 #キープレイヤーズ #インテリジェンス #パーソル #東北大学 #メドレー #クラウドワークス #スタートアップ #文部科学省 #アントレプレナーシップ推進大使 #投資家 #ベンチャーの作法  

いいなと思ったら応援しよう!