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英語ゼロでグローバル企業へ、価値観のズレに気づいて会社を飛び出し――「人を引き出す力」で会議を変える男の軌跡「経営者の素顔vol.5」



会議が変われば、会社が変わる。

そんな信念を掲げて組織開発に挑む経営者がいる。株式会社コーチングフォワード代表、相川貴志さん(以下、相川さん)だ。「会議変革コーチ」と名乗る相川さんの事業は、一見すると地味に映るかもしれない。しかし、その背景には、高校中退、4社を渡り歩いたキャリア、英語ゼロでのグローバル業務という修羅場、そして前職での仲間の裏切り。
失敗から逃げず、外の世界へ飛び込み続けた男が語る「人の潜在能力を引き出すこと」の本質とは何か。

負けず嫌いの末っ子が、「もっと違う世界」を求めて中学受験へ

相川さんは3人兄弟の末っ子として育った。田舎に暮らした幼少期、兄2人に負けじとついていくなかで、めちゃくちゃな負けず嫌いが育まれていったという。
転機は、都会へ引っ越したことだった。田舎と都会では世界がまるで違う。その衝撃は小学生の相川さんに、「同じメンバーで中学へ進むより、もっと違う世界へ行きたい」という感覚を芽生えさせた。親を説得し、中学受験へ。負けず嫌いと好奇心が、初めて外の世界へ向かうエンジンになった。

中高一貫を中退――成績より「コミュニティ」に取り憑かれた高校時代

せっかく入った中高一貫校だったが、高校に上がると事態は一変する。他校との交流が広がり、バイトや学祭を通じて出会った外部の人たちに夢中になった相川さんは、いつしか仲間たちでサークルを立ち上げる。

「みんなが集まってひとつのことをやる。あの感覚がたまらなかった」

気づけば成績は50位ずつ落ち続け、ついに留年が確定。「これ以上迷惑をかけられない」と判断し、中退を選ぶ。しかし引きこもりはしなかった。高卒認定資格を1年で取得し、大学進学という形で自分の道を切り開いた。

スプレー黒髪と借り物眼鏡。友達との悪ノリ勝負の末、担任に激怒された生徒手帳写真

「コンサルに行く」と決めた就活攻略。NECからリクルート、レノバへ

大学入学後、相川さんは就活という「ゲーム」を戦略的に攻略しようとした。SNSも何もない時代に就活生のコミュニティを作り、情報交換で仲間と切磋琢磨する。ピカピカとは言えない大学から、トップ企業を目指して。
自分なりに導き出した答えは「これからはコンサルの時代。まずSIerに入ってコンサルファームへ」というルートだった。その読みをもとに入社したのがNEC。6年勤めた後、リクルートへ3年、そして再生可能エネルギーの「レノバ」へと転職する。

英語ゼロで海外拠点の立ち上げへ。今でも「一番のピンチ」と語る修羅場

レノバはグローバル企業だった。英語が話せないまま入社した相川さんだが、最初は社内会議をジェスチャーで乗り切っていた。ところが程なく、海外拠点の立ち上げと制度設計を任されることになる。
現地法人とのやり取り、外国籍メンバーとの仕事。「あれが今まで一番のピンチだった」と相川さんは振り返る。英会話スクールに通いながら、その日使いそうなプレゼン内容をほぼ暗記して乗り切る日々。「話せないキャラ」がいじられるほど浸透し、最終的にはそれが定着した。笑いに変えながらも、必死で食らいついた経験が、今の「人を引き出す」仕事の土台になっている。

会議に臨む相川さん(写真左)

引き抜かれて入った最後のスタートアップで、「これ以上いられない」と悟った日

レノバに骨を埋めるつもりだった相川さんだが、知人から声をかけられ、葛藤の末にスタートアップへ移る。そこで掲げたのが、「コミュニティ」を事業の軸にするというビジョンだった。最初は受け入れられたが、短期利益を求めるトップとの溝は埋まらなかった。

そして、信じられないことが起きる。

「目先の利益を追うあまり、自分には到底受け入れられないやり方が、会社の中で当たり前になっていった」
これ以上ここにいたら、自分が壊れる。そう悟った瞬間、起業という選択が固まった。引き抜かれ、価値観の違いに直面し、怒りと決意を胸に、相川さんは会社を飛び出した。

「本業以外に何かやり続けること」が、独立への一番の準備だった

起業に踏み切れた理由を問うと、相川さんはこう答えた。
「副業も、グロービスも、自分でコミュニティを立ち上げることも、気づいたら社会人人生の隙間にずっとやってた。だから出る時に、そんなに不安がなかった」
本業以外のネットワークと経験があれば、視野が広がり、独立への恐怖は薄れていく。狙っていたわけではなく、好奇心と負けず嫌いが自然とそう動かしていた。
「出るって決めちゃえば出れる時代」と相川さんは言う。
ただし、その前提として「外の世界にアンテナを立て続けること」が必要だとも語る。

補助金の失敗が教えてくれたこと――「合わないものに手を出すな」

独立後の失敗として相川さんが挙げたのは、補助金の話だった。採択まで漕ぎつけたものの、計画通りに使わなかったことで結局失効してしまったという。

「目先の資金繰りのために補助金に手を出したけど、本当にやりたいことと合わなかった。合わないものに乗っかるから、余計なリソースが取られる」

派手な失敗ではない。しかしこの小さな体験が、「長期でやりたいことに全振りすること」の大切さを改めて教えてくれたと話す。

「会議の生産性に100点と言える会社は、ほとんどない」

現在の事業「会議変革」について語る相川さんの目は真剣だ。どんな企業にも会議は存在する。しかし多くの場合、社員は形式的に参加し、発言も遅刻も構わず流れていく。

「会議に参加する人の態度や発言を見ると、その組織の課題がそのまま見える。だから、会議を変えることで会社を変えられる」

そこに「コミュニティ」の力を掛け合わせているのが、コーチングフォワードならではの手法だ。組織も、コミュニティも、突き詰めれば「人が集まって何かをなし遂げる場」。AIが普及しても、「人が人を引き出す力」だけは代替できない――そう相川さんは確信している。

取引先すらエンパワーメントする。「業者扱い」が一番もったいない

相川さんが特に力を込めて語ったのが、「エンパワーメント」の話だった。従業員にコーチングを施すのはよくある話だが、相川さんが着目するのはその先だ。

「取引先や外注先って、どうしても業者扱いになりがちでしょう。でも、その人たちをエンパワーメントするだけで、パフォーマンスが全然変わる」

人を大事にして引き上げていく。それはAI時代だからこそ、差別化の源泉になる。外の世界への好奇心から始まった相川さんの旅は、いつしか「人の潜在能力を解き放つ」という使命へと結実していた。

「1歩外に出て、繋がりを広げてみてほしい」

最後に、若者へのメッセージをお願いした。

「いつメン、いつもの場所も悪くないけど、1歩外に出て繋がりを広げてみてほしい。それが意外なきっかけになっていく」

高校中退、英語ゼロ、価値観の違いで飛び出した転職先。どれも「外に出ること」が次の扉を開いてきた。コミュニティへの偏愛と負けず嫌いを燃料に走り続ける相川さんの言葉は、具体的な体験から滲み出る説得力を持っていた。

・相川さんX

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