見出し画像

51歳で起業した元スイミングコーチが語る、「自分の健康は自分で守る」という哲学 28年勤めた職場を辞め、詐欺に遭い、それでも立ち上がった男の話「経営者の素顔 vol.3」


「失敗しないと成長しないから、どんどんいろんなこと経験したらいい。僕ら50代でもやれるんやったら、若い君たちはどんどんやってしまえばいい」


画面越しに現れた美川さん(51歳)の第一印象は、「何度倒れても、また立ち上がってきた人」だった。福岡県在住の出張整体師として活動する彼が歩んできた道は、決して平坦なものではなかった。
水泳コーチとして28年間勤め上げ、体を壊し、パワハラで職場を去り、消費者金融から200万円を借りてNFT詐欺に遭い、それでも「ALISE(立ち上がる)」という屋号を掲げて起業した。なぜ彼は何度でも立ち上がれるのか。そして今、なぜ「自分の健康は自分で守る」を伝え続けるのか。その人生に、いったい何があったのか。

水泳一筋の少年が、妹の死と向き合った日

「大学を中退して、家族のそばにいることにしました」――人生を変えた、大学1年の冬

小学校から水泳を始め、高校卒業まで泳ぎ続けた美川さん。大学に進学したものの、在学中に運命が大きく動く。
「大学1年生のとき、妹が白血病になってしまったんです。みるみる状態が悪くなって、名古屋の病院に転院しないといけない状況になって。僕も大学を休学して、家族のそばにいることにしました」
妹は若くして亡くなった。復学はしたものの、勉強に身が入らない日々が続いた。そんなとき、たまたまスイミングスクールのアルバイトを始めた。「水泳やってたので採用してもらえて、そこがすごく楽しくて。大学を中退してそのままそこに入社しちゃいました」。これが、28年間続くコーチ人生の始まりだった。

39歳、順調に見えた人生で体が壊れた

「レッスン1本終わったら、横にならないと起き上がれない」――部長職が突き落とされた谷底

スイミングスクールで経験を積み、部長職まで昇り詰めた美川さん。しかし39〜40歳の頃、突然体が悲鳴を上げた。
「半分鬱みたいな症状になって。レッスン1本終わったら、次のレッスンまで横にならないと起き上がれないくらいになってしまって。腰痛、肩こり、全身が痛くて」
整骨院、整形外科、精神科……1年以上あらゆる医療機関を回ったが、なかなか改善しなかった。転機は、たまたま訪れた整体院だった。「そこがスクールをやってたんです。体について学びましょう、と。そこで初めて自分の腰痛が良くなったんです」。これが、整体との出会いだった。
その後も様々なスクールで勉強を続け、テラヘルツ鉱石による施術に行き着く。「石で体を撫でるだけで動きが軽くなる」その感覚が、自身の回復に大きく役立った。

スイミングコーチ時代の美川さん

28年間勤めた職場を去る決断

「ここに固執しなくていいかと思って辞めました」――背中を押したのは、皮肉にも辛い出来事だった

体は回復しつつあった。スイミングスクールの高齢者クラスで体のケアについて教えると、反響は大きく、会員から「自分の通う病院に行くより先生のレッスンの方が効果がある。独立したら?」と言われ続けていた。
しかし美川さんはずっとはぐらかしていた。かわいい教え子達、安定した職場、部長職の給与。簡単には手放せなかった。背中を押したのは、皮肉にも辛い出来事だった。
「社長といろいろあって。パワハラを受けて、もうここに固執しなくていいかと思って辞めました」
28年勤めた職場に別れを告げ、次の仕事を探す日々。しかし現実は厳しかった。整骨院や治療院を中心に転職活動したが、国家資格がないとして採用が決まらない。半年就活して雇用保険が切れるタイミングで、大型免許を持っていたことからトラックドライバーへと転身した。

200万円の詐欺、そして家族に言えない秘密

「家族には今も言えてないですね」――それでも折れなかった理由

ドライバーだけの収入では、以前の給与分には及ばず、副業にチャレンジすることに。勉強を始め、SNSで情報を集める中で、ある副業の話を見つけた。
「仮想通貨とNFTを買えば稼げるという話で。消費者金融から200万円借りて、買わされてしまったんです」
いわゆる投資詐欺だった。「家族には今も言えてないですね」。静かにそう語る美川さんの言葉に、重みがあった。
しかし彼はそこで折れなかった。ドライバーをしながらオンラインで整体や体の勉強を続け、ついに個人事業として起業した。屋号は「ALISE」――立ち上がる、という意味だ。

「整体院を卒業してほしい」という、異色の哲学

依存させない整体師――自分の健康は自分で守れるようになってほしい

美川さんの整体は、一般的な整体とは少し違う。出張で訪問し、テラヘルツ鉱石を使った施術を行いながら、日常のセルフケアまで指導する。
「整体って2〜3日したら元に戻るってよく言うじゃないですか。それは生活習慣のせいなんです。だから施術だけじゃなくて、自分でケアできる習慣をつけてもらわないといけない」
さらに驚くのは、そのビジネスモデルの思想だ。「整体院を卒業してほしいんですよ。ずっと通い続けるんじゃなくて、自分の健康は自分で守れるようになってほしい。他の人に依存するんじゃなくて、正しい知識を持って自分でケアしてください、というのが僕のスタンスです」
社会保険料を減らすには、国民一人一人が健康を自分で管理できるようになるべきだという信念がそこにある。

子どもたちへの危機感

「小学生がもう腰が痛いって言ってる」――社会の構造が腰痛患者を生み出している

施術を通じて気づいたことがある。体の不調を抱えた若者や子どもが、想像以上に多いということだ。
「スイミングで教えてた小学校高学年や中学生が、もう腰が痛いとか肩が痛いって言ってるんですよ。身体が固い子も多くて」
この状況を、美川さんは社会構造の問題と捉えている。「学校生活でずっと座りっぱなしで、運動する時間が減ってる。社会の構造が腰痛患者をどんどん生み出してると思う。少子高齢化が進む中で、体に不調を抱える若者が社会に出ていったら、この先の未来、この国はどうなるのかって。そして、そこに警鐘を鳴らす大人が少ない」
だからこそ今、セミナーを開きたいと考えている。「お母さんに正しいケアを教えれば、子どもにも広がっていく」という発想で、育児と家事に追われる母親たちにも届けようとしている。

80代の患者さんがスタスタ歩いた日

「人の役に立てた」という実感が、仕事を続ける原動力

仕事の喜びを聞くと、美川さんの表情が柔らかくなった。
「80代の方で、階段を1段1段、手すりにつかまりながら登るような患者さんがいたんです。施術したら、スタスタ歩けるようになって。片足立ちで靴が履けるようになったって。もう本当に喜んでもらえて」
「人の役に立てた」という実感。それが、美川さんが何度倒れても立ち上がり続ける原動力だ。

患者さんとの出会い

「失敗しないと成長しない」

最後に、くすぶっている人へメッセージをお願いした。
「51歳で起業した僕でも動けてる。若い人たちはどんどんやってしまえばいい。失敗していいんです。失敗しないと成長しないんだから」
ただ、そのためにも一つ伝えたいことがあると美川さんは続けた。「まず自分の体を整えてほしい。体が健康であれば、やる気ホルモンも出てくる。体が動けば、心も動く」

「ALISE」――起き上がる、立ち上がる。美川さんが選んだその屋号は、そのまま彼の人生そのものを表している。妹を失い、体を壊し、パワハラに遭い、詐欺に遭い、それでも立ち上がり続けた51歳が言う言葉には、リアルな重みがある。23歳の私には、その重さをまだ半分も理解できていないかもしれない。それでも、何度でも立ち上がれる人間がいるということを、今日確かに知った。

代理店仲間との一枚

・美川さんnote

・美川さんThreads

・経営者の素顔Instagram


いいなと思ったら応援しよう!