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『京都沼り人の勝手な考察』#08 京都「天神市」瑠璃碗と色恋沙汰 (中編)


時は十一月

あれから、一月以上が経っただろうか、デスクの卓上カレンダーは【Novemver】に変わっていた。

めっきりと秋も深まり、夕方四時を過ぎると陽は濃い緋色になってつるべ落としが如く西の地平線へと消えていく。

 ____オヤジ、今頃どこら走ってるんやろう

 西陽に光る部長の禿げ頭をぼんやり眺めつ、オヤジの”消息”に思いを馳せていた。

 オヤジ、そう、あの禿げオヤジのことだ。
オヤジの素性についてはあまり深くは知らない。若い頃から骨董にハマって世帯(しょたい)を持ってからも給料の大半を骨董集めにつぎ込んで、三年も経たず奥さんに逃げられた___ということぐらいだ。

 ____にいちゃんも、骨董はたいがいエエ加減にしとかんとあかんで

   (大きなお世話だ、俺はあんたとは違うわい)

 とは吐き捨ててみるも、確かに月末になると「吉野家」さん連チャンとなる自分がちょっと怖かった。

 オヤジはお宝の骨董の品を詰め込んだみかん箱をてんこ盛り軽バンの荷台に積みこんで日本全国の縁日や蚤の市を転々としている。
 凡そ、骨董屋というのは二種類あって、ちゃんと自分の店を構え、月に何度かだけ蚤の市に出店してくるという人らと、オヤジのように全国を駆け巡りながら途中どこかの古い土蔵の中の品を物色しては買い取って、それをまた転売していくという商いのパターン。

 オヤジは見たところ七十の齢を数えているだろうか。ツルッパゲの頭をぐわつい手でぐるぐると撫でながら人と話す癖がある。ニヤッと笑った額に浮かぶ深い皺の数々がオヤジの人生を物語っている気がした。
 それでも、ちゃんと生業を続けられているのは、オヤジの扱う品物は間違いない___という「信用」があったからだろう。小生も含めオヤジのファンは結構居た気がする。

おやじ

____オヤジは、今頃、、、、、、、、、、

ではなくて

____「瑠璃」、元気やろか、今、何したはるんやろか

 ”あの日”から小生は、オヤジの言う「別嬪のお嬢さん」のことを「瑠璃」と推し活よろしく、そう呼んでいた。

 デスクの卓上カレンダーの”25”の枠には、こっそり赤いボールペンで書き込まれている

       『瑠璃』_______。

__________________________


毎月二十五日開催の「天神市」

 京都、北野天満宮の「天神市」は毎月二十五日に開催される。よほどの豪雨でも無い限り決行されているみたいだ。
 小生、もとより京都沼り人故に、骨董にハマる前から天神さんにはよく訪れていた。
 二月から三月にかけての梅の季節、十一月錦秋の頃は「御土居」の紅葉。

 オヤジと約束の十時より二時間も早く着いてしまった小生は、「御土居紅葉」をはく息が少し白くなるような寒い朝に愛でて回った。

紙屋川と御土居紅葉



___夜間のライトアップでは「鶯橋」から眺める紙屋川とのリフレクションの幻想的な美しさは、京都の治安を守るためにと太閤秀吉が作らせた「御土居」の歴史への好奇心と相まってなんとも別世界な空間である____。


____おはようさん

骨董の店先

 さて、「骨董屋」の店番アルバイトの始まりである。もちろん会社には内緒だ、今と違って副業は御法度な時代だった。
 オヤジは赤いニット帽を被りアーミーカラーの厚手のジャンパーに身を包んで、少しばかり背中を曲げて出店の奥に座っていた。
 傍には石油ストーブを置いている。

____今日は、冷えるなー

 そんな言葉をオヤジに投げつつオヤジの今日の「出し物」に目をやる。

____この、なます皿、ええな

____にいちゃん、仕事せんのやったら帰って呉れんかいのぉ

 意地悪そうに、笑ってよこすオヤジの顔が愛おしい。

____で、瑠璃は?

 小生も店主の横に魚釣りの時にでも使うような折りたたみの椅子に腰掛けて座った。

____瑠璃?、どっちの?、茶碗か、別嬪さんか?

(嫌な男だ)_________

____どっちもや!

 「情報入手」が最優先だとばかりに開き直る小生。

____十二時前後になるて、言うてたな。

 そっと横目で時計を覗く小生________

10:40

 それからの時間の長いこと、長いこと。それでも昼時が近づくと年甲斐もなく胸の奥がチクチクしはじめ、心拍数も間違いなく上がっていくのがわかった、、、。

12:15

____わし、先に飯行くわ、なんかあったら車に居るし。

そう言ってオヤジは、境内の駐車場に停めている古ぼけた軽バンを指差した。

____ っ、えぇー??、るり来やはったら、どうするん?

 見苦しく狼狽する小生

____それ、渡して残りの三万もろてくれたらエエだけやがな
あとはにいちゃんしだいやがな、ひっひひひ

 ニット帽剥ぎ取って、あの禿げ頭シバきたくなるのをグッと堪えた小生であった。
 昼時とあって、客の流れも少し止んで、冷たい秋風が店先から吹き込んできていた。
 冷たい両の手を擦りながらストーブの火にかざし秋風に背を向けていた時だった________。

____あのぉ、すみません、、、店主さんは??

 小生の丸めた背中から細く高い女性の声がした。

 (スローモーション仕立てに)、、、ゆっくり、振り返る、オレ

 低い位置の陽の光の向こうに立っていたのは「瑠璃」?だよね?

 (ドラマとかであるでしょ?ほら、あのカメラワーク)

顔が良く見えない_____
              多分、おれ、心拍数150はいってた思う。

 小生は、ゆっくり、視線をあげていった。

                  __________ つづく

 「瑠璃」は、どんな女性(ひと)?
     で、小生は、どうしたの? 何って言ったの?
 瑠璃碗は?手に入ったの?(もはやどうでも良くなってる感あり)

   「後編」乞うご期待

     (読み返すと、まさに三文小説の風味で、草)

いっそ、三文作家の風味で 草 な小生

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