テストプレイを鵜呑みにしないこと――キメラアートが世に出なかったかもしれない話

「難しすぎる」
「やりたくない」

そんな反応をもらい、
「このゲーム、世に出さない方がいいのかもしれない」
と悩んでいた時期がありました。

人生で5本の指に入るくらい笑ってもらえたこともあれば、酷評をいただいたこともあったキメラアート。

初回作であり前作でもある「扇舞」は、メインがソロゲームだったこともあり、周りにどう言われても「自分は楽しい」と確信できる作品でした。

でも、パーティゲームは違います。
周りが楽しんでいないと、自分も楽しくない。

だから私は、この2作目が本当に面白いのか、だんだん分からなくなっていきました。

ちなみに扇舞の頃は、テストプレイで酷評を受けるたびに本気で傷ついていました。
ただ、ゲムマ当日になってみればかなり好評で、ゲームマーケット当日の試遊後購入率は8〜9割ほどでした。

その経験から、
「テストプレイの感想は、あくまで一部の人の感想なんだ」
と思えるようにはなっていました。

それでも、相手の反応を真に受けすぎる性分は残っていました。

幸い、キメラアートはルール説明をしただけで笑顔になり、
「絶対面白いじゃん」
と言ってくれる方が複数名いました。

さらに、普段イラストゲームを好まない夫が珍しく
「これは出した方がいいと思う」
と言ってくれたので、販売を決意しました。

とはいえ、酷評があったのも事実。
なので、打率を上げるためにかなり調整を重ねました。

キメラアートで問題になっていたこと

まず、このゲームを知らない方に向けて、ルールが簡単にわかる4コマ漫画を貼り付けておきます。

キメラアート 基本ルールの遊び方

本ゲームが、テストプレイ段階で挙がっていた問題点はこちらです。

  • お題が難しすぎる

  • 親がお題を知らない

  • パーツによって暇な人が出る

  • 親の待ち時間が長いわりに活躍時間が短い

製品版では、これらを改善するためにルールを追加し、今の形になっています。

お題が難しすぎる

最初は、1枚のカードに幅広いジャンルや難易度を混ぜていました。

理由は単純で、似たお題をまとめたくなかったからです。

同じジャンルのものを1枚のカードに集めてしまうと、一度カード内容を覚えられると、そのカード全体が暗記されやすい構造があります。

有名なイン●イダーゲーム(赤)も、ゲーム自体は本当に面白い神ゲーなのですが、カード1枚に書かれている6個の内容が酷似しているため、たとえ6個×42枚=252個のお題があっても、42ジャンルを覚えれば丸暗記も同然で、2~3卓ほど遊ぶと、ほぼ全部のお題を覚えられてしまいます。

私はそういう状態を避けたくて、あえてカード内容をバラバラにしていましたが、これがかなり不評でした。

  • 「知らないキャラが混ざるのがモヤモヤする」

  • 「同人ゲームなら数回遊ばれれば十分では?」

という感想が多く、最終的に現在の「レベル・ジャンル別」に分ける形式になりました。

ただ、後から気づいたのですが、このゲームは「当てること」が本質ではなく、出来上がった怪物を見て笑うゲームです。だから、多少メタ読みできたとしても、何度でも笑えるゲームでした(※作者の自己評価)。

ちなみに「レベル3はいらない」という意見もありましたが、これはこのゲームを最大限楽しむためのネタパックとして入れているので、どうしても外せませんでした。
お題は498種類あるので、厳しい方はレベル2までで遊んでもらえればと思っています。
ネット民の皆さん、ネットミーム、お好きでしょう。

親がお題を知らない

このゲームでは、キャラクター名を完全一致で答える必要はありません。
「あの有名な鬼退治漫画で『穴があったら入りたい』って言ってた人」
みたいな説明でも、伝われば正解です。

ただ、親が「そもそも全然知らない」となると、一気に場が冷えてしまいます。
そこで追加したのが、目印台紙の「ジャンル一覧表」です。
親がこれを見て、事前に「このジャンルは苦手」と言うルールにしました。

このルールを入れてから、「知らなかった」はなくなりました。

もし遊んでいてそうなったら、
「このジャンル任せろって言ったじゃん!」
と親に責任転嫁するのも、一つの遊び方です(関係性次第ですが)。

パーツによって暇な人が出る

試作段階では、役割カードはもっと複雑でした。

例えば、

  • 子が2人なら「頭・鼻・輪郭・耳」

  • 子が3人なら「頭・口・輪郭」

のように、人数によって描く部位が細かく指定されていました。

ただ、文字量が多くて見づらかったことと、「キャラによって重要な部位が違う」(頭が特徴的なキャラもいれば、無個性なキャラもいる)という問題によって、これも根本的な解決策ではありませんでした。

そこで、テストプレイでいただいたアドバイスもあって、役割を増加しました。もともと輪郭から上しかなかったのに対し、身体や腕を付け足したり、右目と左目を分けました。
また、最終的には役割カードは1枚1パーツで、シンプルなランダム配布に変更。ルールがぐっとシンプルになりました。
その代わり、カードの引きによって暇になってしまった人は「背景を描いてよい」というルールにしました。

親の待ち時間が長いわりに活躍が少ない

これもテストプレイで指摘された部分でした。

一度「親の活躍を増やす方向」の改善案が出て、試しました。
それも楽しく、一時期、どんどんルールをゲーマーチックに寄せてしまったのですが、それを元々応援してくれていた人に見せたところ
「前のルールの方が好き」と言われたことで、
「自分が届けたい相手はどっちなんだろう」
と目が覚めました。

結果、「親の活躍を増やす案」は基本ルールから外しました。
(ヴァリアントルール(協力)がそれです)

その代わり、「待ち時間」を減らす方向で調整しました。

  • お題決定は親の右隣が担当
    お題決定の代表者がいないと、「どうする?」「え、どうしよう」と、みんなで悩む時間がかかるからです。
    また、右である理由は、前のターンで親をやっている人になるので、前のターンで待っている間にお題を決めておくこともできます。
    ちなみに迷ったらカード自体にランダムで1~6の数字が書いてあるので、別のカードを1枚引いてその数字で決めるのが一番早いです。

  • 描画時間に制限時間を追加
    これはテストプレイをやって初めて気づいたのですが、ボードゲーム初心者で絵を描くのが苦手な人は、たった2~3本の線を描くのに悩むということです。なので制限時間を設けるようにしました。ちなみに1分はテレストレーションを参考にした制限時間ですが、もう少し短いとはちゃめちゃ感が増すので、このゲームが得意な猛者の方はやってみてください。

  • 重ねてから呼ぶのではなく、重ねる瞬間も親にも見せる
    重ねてから重ねてから呼んだ方が、「ゲーム」らしいのですが、「重ねる瞬間」が、このゲーム最大の盛り上がりイベントなので、どうせなら親も一緒に楽しい時間を共有したいよね、という考えからです。

完成したキメラアート

こうして細かいゲーム体験を改善していった結果、おかげさまでキメラアートは、名だたる試遊会「フォアシュピール」でランキング上位に選んでいただいたり(フォアシュピセレクション)、Xでも沢山ポストが投稿され、かなりの好評をいただいていると思います。

少しだけ後悔しているのは、ルールが簡単すぎるが故に、説明書を読まなくても遊べてしまうことを視野に入れられていなかったことです。

こうして頑張って追加した工夫が、大多数に読み飛ばされている気がします。

読み飛ばされても自然に機能する形まで落とし込むべきでした……そこは今後の課題ですね。

もちろん、オリジナルルールで自由に楽しんでもらうのは大歓迎です。

ただ、もし「なんか微妙だったな」と思った時は、一度説明書に戻ってもらえると嬉しいです。

結局何が言いたかったのか

結局伝えたかったのは、

「テストプレイの反応に、一喜一憂しすぎなくて大丈夫」

ということです。

  • テストプレイには、そもそも好みじゃない人も参加する

  • 酷評を受けた=ゲームがつまらない、ではない

  • テストプレイは「マイナス感情を減らす作業」でもある

これを理解してから、以前よりずっと気楽にテストプレイを受けられるようになりました。

酷評も、「傷つくもの」ではなく「改善材料」として見られるようになった気がします。


テストプレイで厳しい意見をいただけること自体は、今は本当にありがたいと思います。

その一方で、意見そのものは正しくても、「もう少し伝え方が柔らかければ、もっと建設的な場になるのにな」と感じる場面を見かけることもあります。

新人制作者側は、思っている以上に言葉を真に受けてしまい、場が凍ったり委縮して、肝心のゲーム改善に繋げられないこともあるので……。

――と、未だ人様にろくなアドバイスもできない立場ですが、それでも新人さんたちの感想だけはたくさん聞いてきた人間からの一言でした。



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Table Games in the Worldさん
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