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【無駄は必要か②】考えすぎるな。走れば答えは見えてくる。#42.195キロ

42.195km走る。
そう決めたものの、正直に言おう。

ビビっていた。

本当に走り切れるのか?

途中で動けなくなったらどうする?

一人だぞ?

大会じゃない。

救護所もなければ、スタッフもいない。

誰も「あと少し!」なんて声をかけてくれない。

「……もう少し違うチャレンジでも良かったんじゃないか?」

そんな弱気なおれが、おれの頭の中でしゃべり始める。

さらに時期は12月末。

熱中症の心配はない。

でも今度は寒さだ。

何を着る?手袋はいる?水は何本持つ?
補給食は?

考え始めると、次から次へと不安が湧いてくる。

人間って面白い。

行動していないのに、考えるだけで疲れる。

そして、おれは気づいた。

ダメだ。

このまま考えていたら、一生スタートできない。

だから考えるのをやめた。

地図アプリを開く。

「ここから片道20kmくらいって、どこだ?」

画面を見ながら指を動かす。
すると、一つの場所で止まった。

熱田神宮。

ちょうどいい。

つまり、熱田神宮まで走って、帰ってくれば42kmくらいになる。

車なら40分くらいで着く場所だ。

そう考えた瞬間、おれの中の恐怖が少しだけ小さくなった。

なんだ。車で40分の距離か。

意外と近いじゃん。……いや、近くはない。

でも、人間って不思議だ。

漠然とした「42.195km」は恐ろしいのに、

「熱田神宮まで往復」と考えた瞬間、急に現実味が出る。行ったことがある場所ならばなおさらだ。

ゴールが見えた気がした。

おれは本当に単純だ。
単細胞、最高である。

そして、おれはもう一つ作戦を立てた。

逃げ道を消す。

職場の人。友達。家族。

会う人、会う人に言いまくった。

「1月3日に42.195km走る。」

言った。とにかく言った。

すると、面白いことが起きる。

「頑張って!」
「本当に大丈夫?」
「ケガするなよ!」

みんな、それぞれの言葉で応援してくれた。

中には本気で心配してくれる人もいた。

その言葉が、妙にうれしかった。

人っていい。

誰かに応援されるだけで、「やっぱりやろう」って思える。

そして、おれはもう引き返せなくなった。

言った以上、やるしかない。

練習?

していない。

42kmなんて人生で走ったこともない。

それでも、なぜか思った。
おれはできる。

根拠なんてない。

でも挑戦するときに必要なのは、根拠よりも覚悟なのかもしれない。

自分を信じる。自分に期待する。
周りも信じてくれる。

すると不思議なことに、「できる気」がどんどん大きくなっていく。

そして迎えた。

1月3日、午前4時。最寄りの駅。

外は真っ暗。

冬の空気が肺に刺さる。

スタートラインなんてない。

号砲も鳴らない。

観客もいない。

いるのは、おれ一人。

胸の中には、不安と恐怖。

そして、それを少しだけ上回る期待。

おれは今日、42.195kmを走る。

そしてもう一つ。

「無駄とは何か。」

その答えを探しに行く。

続く。

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