永遠の自惚れ
昔好きだった人と飲む機会があった。マッチングアプリで知り合い、月に1〜2度飲みに行く関係が2年ほど続いていた人だ。私に恋人ができてからは会っていなかったが、SNSでのやりとりは続いていた。
私は人を誘うことが得意な方ではなく、それが好きな人であれば尚更で、相手から連絡が来れば大きくガッツポーズをし、来なければ「今週は誘われなかったか…」と週末ごとに一喜一憂していた。
お互いの居住地の中間地点の駅で待ち合わせをし、目についたお店へ入る。赤提灯の日もあれば多国籍料理の日もあったし、イタリアンや創作和食の日もあった。彼はよく飲み、よく食べ、よく笑った。屈託のない笑顔が良かった。
店を後にしてからは、あてもなく歩く。話しながら平気で2、3駅分歩いたこともある。井の頭公園に至っては何周したか分からない。私は歩くことが好きで、彼が好きで、彼との会話が好きだったから、ただひたすらに楽しい時間だった。アルコールで火照った体に夜風が気持ち良かった。
付き合うことのないまま、空白の数年間を経て彼と再会した。待ち合わせ場所に現れたのが、私の記憶そのままの姿でホッとする。私は太ったかもしれないし痩せたかもしれない。週末のエスニック料理屋は意外と空いていた。
2軒目に入った大衆居酒屋。正面の席に座る彼に「あの頃私はあなたのことがとても好きだった」と告げる。ぶっちゃけ私のことどう思ってた?と尋ねる声はわずかに震えていた(気がする)。彼は一瞬間を置いて「好きだったけど、同じような好きではなかったと思う」と答える。
マジかよと言いかけた。正直、両思いだと思っていたから。毎月会って、飲酒して、あんなに歩いて、あんなに語らったのに恋じゃないわけ?ならば何が恋だ。何が恋だよー!
自分の長きにわたる勘違いに笑ってしまう。恥ずかしいし、情けない。でも、とふと思い直す。付き合って別れたら誰よりも遠い他人になってしまうけど、くっつかなければ離れることもない。ほどよい距離で生きていく選択肢がある(相手がどうしたいかが何より大事だけど)。友情、素晴らしいね。
いま私が大切に思っている人、私を大切に思ってくれている人を幸せにしたい。余裕があればその周りも幸せにしたい。一丁前の屁理屈と永遠の自惚れと共に。
