『日本茶のすべてがわかる本』 読み合わせノート#0 序章「お茶のプロフィール」
『日本茶のすべてがわかる本』を読んでみた ── お茶の"序章"だけでこんなに面白い
お茶好きの二人、しずくとなみ。いろんなお茶屋さんに足を運ぶうちに、もっとお茶のことを知りたくなってきた。そこで日本茶検定の参考書の『日本茶のすべてがわかる本』を一緒に読み合わせてみることに。二人が気になったところを語り合う、そんなゆるい読書記録です。
しずく: 今日は序章、「お茶のプロフィール」を読んでいきます。
なみ: 19ページまでだし、そんなに多くないよね。
しずく: さっそく最初から。神農っていう神話の人物が、毒に当たった時に茶の葉を噛んで解毒したって話。
今日の本草学の始祖といわれる中国の神農は、山野を駆けめぐって野草を試食し、食べられる植物を人々に教えていました。時には毒草にあたって苦しみますが、そんな時、神農は茶の葉を噛んで解毒したと伝えられています。1日に72もの毒にあたったそうで、そのたびに茶の葉を用いて解毒したというのは有名な逸話です。茶に含まれるカテキン類は、植物の毒素に多いアルカロイドと結合しやすく、毒を消す性質があります。伝承とはいえ、茶を解毒に使用したことは理にかなっているわけです。
なみ: 1日に72回毒に当たるって何者なの(笑)。でも伝説にちゃんと科学的な裏付けがあるのがすごい。
しずく: アルカロイドってカフェインやニコチン、モルヒネなんかも仲間なんだよ。強い生理活性を持つ有機化合物の総称。
なみ: カフェインもアルカロイドの一種ってことは、やっぱり摂りすぎるとよくないってそういうこと?
しずく: だね。ちょっと化学の話になっちゃったけど、この辺はお茶と関係してるってことだね。
「チャ」と「ティー」──世界のお茶の呼び方は2通り
"チャ"は「茶」の広東語の発音である「cha」 に由来しています。茶は文化交流があった日本・韓国・モンゴルにはもちろん、陸路すなわちシルクロードを通じた交易ルートに乗り、西域に広がりました。
"テ"は「茶」を表す古い文字の「荼」に由来し、福建省では"te"と呼んでいます。福建省アモイからの茶の海上輸出ルートに乗って欧州に広がり、"te"に類似した"the・they・thee・tea・tee" などと呼んでいます。
その中で、ポルトガルだけは"cha" と呼んでいます。これは茶を植民地だったマカオから輸入していたので、"te"ではなく広東語発音の"cha" と呼ぶようになっています。
なみ: 呼び方ひとつで貿易の歴史が見えてくるのが面白い。陸路か海路かで分かれるんだね。
しずく: トルコの「チャイ」もチャ系統だし、ロシアもそう。シルクロードの交易ルートがそのまま言葉に残ってる。
なみ: ポルトガルだけヨーロッパなのに「チャ」なの、例外感がすごい!
しずく: いやぁ、面白いね、こういうの。
若い芽のふわふわ──「毛茸」って知ってる?
訪問先で出されたお茶の表面に、ホコリのようなものが浮いていることがあります。これは毛茸が浮いているもので、出されたお茶が若い新芽を使った上質なお茶であることの証拠です。
しずく: お茶の若い葉の裏面には「毛茸(もうじ)」っていう細かい白い毛が生えてるけど、成長するとなくなるんだって。
なみ: この前スマホで拡大してみたらすごかったよね。白茶のやつ。犬か猫かっていうぐらいの毛並み(笑)。
しずく: ホコリだと思って嫌がる人もいそうだけど、実は上等な証拠っていうのがいいよね。
荒茶を飲んだことある? ──お茶屋さんのすごさ
お茶は茶園から摘み採った生葉を、製茶工場で揉みながら乾燥することで作られます。この段階でできたものを「荒茶」といいます。荒茶には茎や棒、粉、大きな葉、長い葉などが混在し、水分も5%くらいとやや多く、長期の保存には適しません。そこで消費者がいつでもおいしくお茶を飲むことができるように、一般には、お茶屋さんがこの荒茶を買い、「仕上げ加工」をして長期保存ができる見映えの良い、おいしいお茶に仕上げます。いうならば、荒茶はお茶の一次原料なのです。
なみ: 荒茶の状態って、正直飲めたもんじゃなかったよね。
しずく: 美味しくないよね。なんだろう、めちゃくちゃ青い。味もよくわからない。
なみ: この段階のお茶を嗅いで、仕上がりを予測して買い付けるって、一般人からは想像もつかない世界で。お茶屋さんってすごいんだなって思ったよね。
しずく: 荒茶からどの部分を生かして、どう組み立てるか、合組の技術がすごいんだね。
なみ: それがやっぱりお茶屋さんのすごさなんだなと思って。各工程の技がすごすぎて。
深蒸し茶は"苦肉の策"から生まれた
深蒸し茶が生まれたのは、静岡県中部の牧之原台地とその周辺地域だといわれています。この地域のお茶は、山間地の茶に比べて葉肉が厚くて渋味が強いため、消費地の好みに合わず、市場の評価も低いものでした。そこで昭和30年代初め(1950年代後半)に、蒸し時間を長くすることによって渋味を抑えた深蒸し茶が作られたのです。
長く蒸すと渋味が抑えられて甘味が増しますが、新鮮な爽快感は少なくなり、香りは弱くなります。また、長く蒸すので、製造中に葉が細かくなりやすいために粉が多くなりますが、浸出液は濃い緑色になり、水道水でもおいしく飲めるお茶として関東周辺で好まれています。
なみ: 弱点だった渋みを逆手に取った発想だよね。水道水でもおいしく飲めるっていうのが関東で受けた理由なのかな。
しずく: 上水処理の関係もあるって聞いたことある。ただ爽快感は少なくなるし香りも弱くなるから、山のお茶とは良さが違う感じだよね。
なみ: それでも今や静岡の生産量の7割以上が深蒸し茶なんだって。
しずく: 7割! 大逆転だよね。
ラペソーって知ってる? ──漬物茶の世界
ラオスからタイの山間部に伝わるミアンは、生葉を蒸してから漬け込んで発酵させ、岩塩を添えたり、ナッツや肉などを包んだりしてガムのように噛んで食べます。
ミャンマー北部のラペ・ソーは、蒸した茶葉を漬け込んで発酵させたもので、水にさらしてごま油と塩で味付けし、ニンニク、干しエビなどを混ぜてお茶請けに食べます。
なみ: お茶を「飲む」んじゃなくて「噛む」とか「食べる」っていう文化があるんだね。
しずく: 歯磨き代わりに噛んだり、タバコ代わりに噛む嗜好品でもあるんだって。噛めば噛むほど苦くなるらしい。
なみ: こわい(笑)。食べるのは50〜60代の人が多くて、若い世代はほとんど食べないらしいよ。
しずく: 葉っぱ噛む風習はもう無くなってきたのかなぁ。今はガム食べてるしねぇ。
なみ: どっかで漬物茶食べられないかなー。作ってみればいいのかな。
玄米茶なのに実は「白米」だった
この場合の玄米とは、白米を蒸して乾燥した干飯を、焦げ色が付くまで炒ったものです。玄米ではなく白米を原料にしているのは、その方が香りが高いからです。
なみ: 言われてみれば玄米茶に入ってるお米、玄米の形とは違うよね。
しずく: 元々は京都の茶商が、鏡開きで割った後のお餅をなんとか使えないかってお茶にブレンドしたのが始まりらしい。もったいない精神から生まれたんだって。
なみ: 最初は本当に玄米を使ってたけど、白米の方が焦げにくくて香りがいいから切り替わった。でも名前だけはそのまま残ってるんだね。
「お茶にしませんか」──でもみんなコーヒー飲んでない?
日頃、私たちは何気なく「お茶にしませんか?」 と口にしますが、実際に飲んでいるものは「茶」とは限りません。
日本では、植物の葉を湯に入れて成分を浸出した飲み物を「茶」と呼ぶ習慣があります。その葉がヨモギであればヨモギ茶、カキの葉であれば柿の葉茶、杜仲の葉であれば杜仲茶と呼んでいます。しかし本来、茶とは、ツバキ科ツバキ属に属するチャの葉や芽を使用して製造されたものを指します。
なみ: 日本人は抽出したら何でも「茶」って言っちゃうもんね。
しずく: 喫茶店のお茶じゃない率(笑)。
なみ: 「喫茶店」って言ってるのに茶じゃないじゃんっていう。あと「なんとか茶や」って言った時のお茶じゃない率。大体居酒屋だったりお菓子屋だったり。
しずく: そこをもうちょっとお茶に戻していきたいよねー。
なみ: 序章だけで1時間半ぐらい読んだね。
しずく: めっちゃ時間かかった。もうちょっと雑な読み方でもいいかもしれない(笑)。
なみ: でもしっかり読んだからこそ面白かったよね。
次回は本編に入っていきます。お楽しみに!
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