『日本茶のすべてがわかる本』読み合わせノート 第1章 「お茶の成分」
『改訂版 日本茶のすべてがわかる本 ── 日本茶検定公式テキスト』(日本茶インストラクター協会)第1章「お茶の成分」を読み合わせ。甘味・苦味・旨味・渋味の4要素、カテキンの温度による溶出差、テアニンとカフェインの関係、水色や香りの科学まで、お茶の味と成分のしくみを対話形式で解説します。
なみ: しずくくん、今回は第1章「お茶の成分」だよ! お茶の味って何で決まるのか、いよいよ科学の世界に踏み込んでいくよ。
しずく: 序章では歴史や種類を見てきたけど、今回はその裏側にある「なぜそういう味になるのか」が全部つながってくる章だよね。けっこう奥が深いよ。
なみ: さっそくいってみよう!
📚 今回読む本
『改訂版 日本茶のすべてがわかる本 ── 日本茶検定公式テキスト』
▼ 全10章構成
序章 お茶のプロフィール
第1章 お茶の成分 ← 今回はここ!
第2章 お茶の健康効果
第3章 お茶のおいしい淹れ方
第4章 チャの育て方
第5章 お茶ができるまで
第6章 お茶の審査
第7章 お茶の生産・流通・消費
第8章 お茶の歴史と文化
第9章 お茶の話あれこれ
1. お茶の味を決める4つの要素って?
味の要素には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味、渋味などがあります。……
このように、苦味・渋味・うま味・甘味という4つの成分の総合的なバランスによって、お茶の味は決まるのです。
なみ: お茶の味って、4つの要素で成り立ってるんだね。甘味・苦味・うま味・渋味。
しずく: そうなんだよ。「遊離還元糖」っていう聞き慣れない言葉が出てくるんだけど、これも糖の一つなんだね。
なみ: 遊離還元糖? なんだか化学っぽい。
しずく: お茶を飲んで感じる「甘み」の主役は、糖類よりもむしろアミノ酸のテアニンやペクチンの働きによる部分が大きいんだ。
なみ: お茶の甘味ってすごく繊細なんだね。
2. 水出しが渋くならない理由 ── 4種類のカテキン
お茶に含まれるカテキン類は、主にエピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)の4種類です。
……特にエステル型は低温では溶け出しにくいため、冷茶では苦味や渋味が少なくなります。
なみ: カテキンって1種類だと思ってたんだけど、緑茶には4種類もあるの? 似たのがたくさんあるんだね(笑)
しずく: しかもこの4つは大きく「遊離型」と「ガレート型(エステル型)」の2グループに分かれるらしい。「エピ」は立体構造のエピマーから、「ガロ」は没食子酸の構造に由来してて、「ガレート」がついてるのは没食子酸とエステル結合してるってことらしいね。
なみ: 名前が長い……。味は違うの?
しずく: 全然違う。遊離型はおだやかな苦味で渋みがほとんどない。でもガレート型は舌を刺すような強い苦味と渋味があるんだ。しかもガレート型は冷たい水にはほとんど溶け出さない。
なみ: だから水出しだと渋くならないんだ! 逆に言うと、物足りない時はこの子たちが出てきてないだけかもしれないんだね。
3. 「いいお茶」って結局なに? ── 滋味とバランス
煎茶は苦味・渋味とうま味のバランスが良く、さっぱりとした後味があるものが良いとされています。
しずく: お茶で「滋味(じみ)」って表現があるんだけど、知ってる?
なみ: なんとなく聞いたことはあるけど、具体的にどういう意味?
しずく: 甘味・苦味・うま味・渋味の4つが適度に調和していて、さっぱりした後味があること。何かひとつが突出してるんじゃなくて、バランスがいい状態を指すんだ。
なみ: 美味しさの基準が「バランス」っていうのが面白いね。何を美味しいと感じるかは人それぞれだと思うんだけど、茶の世界にはちゃんと言葉になっているんだね。
4. デカフェにすると何が失われる? ── カフェインの隠れた役割
カフェインはカテキン類ほど苦味が強くないため、コーヒーをカフェインレスにしても苦さはあまり変わりません。ところが、お茶からカフェインを除くと、お茶特有のさっぱりした心地良い苦味が失われることから、カフェインがお茶の重要な味成分であることがわかります。
なみ: コーヒーはデカフェをよく見かけるけど、カフェインを抜くとお茶の味ってどうなるの?
しずく: コーヒーはカフェインを抜いてもあんまり苦さは変わらないんだね。コーヒーの苦味はカフェイン以外の成分が主役だからなのかな。
なみ: カテキンの方が苦味は強いのに、カフェインがいなくなるとお茶らしさがなくなるんだね。
しずく: カフェインの苦味って主役じゃないけど、味全体をまとめてる大事なピースだったのか。
5. 味は弱いのに30倍!? ── グルタミン酸とumami
うま味が強い成分といえば、グルタミン酸です。グルタミン酸は昆布に含まれるうま味成分としてよく知られていますが、うま味調味料の主成分になるもので、テアニンの30倍もの味の強さがあります。
うま味は欧米人には馴染みのない味のようで、英語などの外国語にも相当する言葉がなく、「umami」という言葉が国際語になっています。
しずく: お茶のアミノ酸で一番多いのはテアニンなんだけど、味の強さでいうとグルタミン酸がテアニンの30倍もあるんだって。
なみ: 30倍!? 含有量は少ないのに、味としてはめちゃくちゃ存在感があるんだ。
しずく: だしの素と同じ成分だからかな。しかもこの「うま味」って、英語に対応する言葉がなくて、日本語の「umami」がそのまま国際語になってるんだよ。
なみ: かっこいい! でも海外の人に「umamiってどんな味?」って聞かれたら、説明するの難しそう。
しずく: まさに言葉だけじゃ伝わらないから、実際にうま味の強い上級緑茶を飲んでもらうのが一番の近道だよね。日本人でも旨味を意識してない人はいっぱいいるから、飲んでもらう機会を増やしていきたいね。
6. 味がないのに味を変える ── ペクチンは渋味のフィルター
未熟で渋い果物が熟すと甘くなるのは、ペクチンが増えて渋味を抑えるからです。同じように、お茶の渋味をペクチンが抑えることで、うま味と甘味が強く感じられます。
水溶性ペクチンの量が多いのは玉露で、次いで煎茶、番茶となり、玉露の濃厚なうま味や甘みにはペクチンが一役買っているのです。
なみ: ペクチンって味がないのに、お茶の味に影響するってほんと?
しずく: ペクチン自体には味がないんだけど、渋味を抑える「フィルター」みたいな働きをするんだね。渋味が引っ込むと、甘味や旨味が相対的に前に出てくる。引き算のイメージ。
なみ: 未熟な果物が熟すと甘くなるのと同じ原理なんだね。果物だけじゃなくてお茶にも効いてるんだ。
しずく: しかもペクチンは水に溶けるとゼリー状になるから、上質な緑茶のとろりとした口当たりにも効いてると言われている。玉露を飲んだ時のあのとろみ、あれは気のせいじゃなくてペクチンのおかげなのかも。
なみ: 含有量も玉露が一番多いんだよね。渋みを抑えて、とろみも出して。縁の下の力持ちだね。
7. 殺青・水色・香り ── 色と香りの変化
お茶を作る時に、生葉を蒸したり、釜で炒ったりして加熱することによって酸化酵素が失活し、酸化が止まります。これを「殺青」といい、殺青により出来上がったお茶には緑茶特有の緑色が残ります。
……クロロフィルの一部は酸化して褐色のフェオフィチンに変化します。
しずく: 「殺青」で殺してるのは「酸化酵素」なんだね。
なみ: 酸化酵素の働きを止めることで緑色が守られるんだね。でも完全には防げないの?
しずく: そうみたい。製造や保存の過程でクロロフィルは少しずつ「フェオフィチン」っていう褐色の物質に変わっていく。
なみ: クロロフィルが反応しないように保存条件が大事なんだね。それと香りの話も面白かったよね。
しずく: そうだね。新茶の清々しさは「青葉アルコール」、ほうじ茶の香ばしさは加熱で生まれる「ピラジン類」、そして玉露の覆い香は「ジメチルスルフィド」。全部別の化学物質らしい。
なみ: ジメチルスルフィドって、青のりみたいな深い香りなんだよね。新茶にはアルコールがあるんだ!
しずく: 秋にお茶がまろやかに感じるのは、青葉アルコールやカフェインが時間とともに飛ぶからじゃないかって話も聞いたことがあるね。
なみ: 新茶の青々しさが苦手な人も、秋になるとちょうどよくなるってことも聞いたことがある。秋に販売される蔵出し茶がそれなのかも。成分って時間経過でも変わるんだね。
次回は第2章「お茶の健康効果」。成分の知識を活かして、健康との関わりに踏み込んでいくよ!
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