#9_八潮市陥没事故から下水道の全体像を考える - 種類は色々、、、

7月に発生した八潮市の道路陥没事故は、埼玉県流域下水道事業が保有する大口径の下水道管が腐食したことによって起きたもの。これまで、この事故をきっかけに生活排水とそれを支える下水道インフラについて記事を書いてきた。今回は、八潮市の管路から一歩下がって、私たちの生活排水を処理するために全国各地で整備されてきた施設の「全体像」について整理してみたい。


下水道と他の汚水処理施設

国土交通省の資料では、生活排水を処理する仕組みを「下水道」と「その他の汚水処理施設」に分けている。

・下水道:公共下水道、流域下水道、都市下水路、農業集落排水施設など
・その他の施設:合併処理浄化槽、コミュニティプラントなど。

いずれも目的は同じだが、監督官庁、整備地区や規模などが異なる。以下は、国土交通省の分類に基づいて整理した、生活排水を処理する施設の全体像。

出典:下水道事業の実務 を元に筆者作成

以下の図に示されるように、都市部では広域的に整備された下水道が中心である一方、農村部では農業集落排水施設や浄化槽が中心となって普及してきた。

出典:国土交通省HP
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000418.html

普及率の地域差

8月22日に国土交通省が公表したデータによると、全国的な汚水処理人口普及率(※)は約94%に達している。その内訳を見ると、下水道の普及率は8割を超えており、日本の生活排水処理の大部分を下水道が担っていることが分かる。

※国土交通省・農林水産省・環境省は、毎年合同で下水道、農業集落排水施設、浄化槽などの処理人口を調査し、総人口に対する割合を「汚水処理人口普及率」として公表している。

出典:国土交通省HP
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001906145.pdf

ただし、都市部と地方では処理施設の構成に大きな違いがある。たとえば都市部では広域的に整備された下水道が主流だが、徳島県のように下水道普及率が低い地域では、浄化槽が生活排水処理の中心的役割を果たしている。

出典:国土交通省HP
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001906145.pdf

八潮市の事故で問題となったのは流域下水道が保有する大口径管であり、今回国交省が重点点検を要請している対象も、基本的にはこうした都市部の下水道管が中心となる。

埼玉県の全体像と八潮市

埼玉県は「生活排水処理施設整備構想」に基づき、下水道・農業集落排水・浄化槽を組み合わせて整備してきた。現在の整備状況は以下の図に示す通りで、人口が密集している東京に近いエリアでは下水道が中心となり、都心から離れるにつれて農業集落排水施設や浄化槽が主流となっていることがわかる。

出典:埼玉県HP
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/196816/r0303seihai-7matome2zeniki.pdf

その中で、八潮市は東京都に隣接する典型的な都市部であり、下水道(公共下水道と流域下水道)に大きく依存している。

ちなみに陥没事故は八潮市内で発生しているが、陥没事故の原因となった下水管を保有しているのは八潮市ではなく埼玉県。ここ間違って理解されがち。以下は八潮市が公開している八潮市公共下水道平面図だが、その中で水色で書かれている流域下水道幹線が原因となった下水管で、これは県の保有物。

出典:八潮市HP
https://www.city.yashio.lg.jp/kurashi/jogesuido/gesuido/gesuidounituite/gesui-heimenzu.files/kyouyoukaishizu20250401.pdf

まとめ

今回たまたま八潮市の事故がクローズアップされている。確かに大口径の下水道管は被害範囲が広いため、真っ先に点検・更新に取り組むべき課題であることは間違いない。

しかし、私たちが考えるべきは「下水道管だけ」ではなく、生活排水を処理するすべての施設。高度経済成長期から40~50年を経て、全国のあらゆる施設が更新時期を迎えつつある。課題は一部ではなく全体像を意識して捉え、優先順位をどう設計するかにかかっていると思う。

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