#17_ウォーターPPPで人手不足とインフラ最適化に挑む沖縄県流域下水道
前回は埼玉県におけるウォーターPPPについて書いた。今回は、導入可能性調査結果を公表した沖縄県に着目してみたい。人口は約106万人と埼玉県(約720万人)の7分の1。規模は比較的小さく、全県的には人口減少の顕在化は全国より遅めだが、離島や郡部ではすでに人口減少と高齢化が大きな制約になっている地域だ。沖縄県はそのなかで、4つある流域下水道の処理区の1つ西原処理区に対象を絞り、令和10年度からウォーターPPPを導入することを決めている。大きな狙いの一つは管路改築に係る国庫補助の確保だと思うが、それだけではないであろう。入札不調の増加やストックマネジメント実践の遅れ、本来必要な建設改良費の確保といった課題を解決し、人手不足とインフラ最適化の両面でPPPの有効性を検証したいという意図が読み取れる。
沖縄県流域下水道の概要
沖縄県には3つの流域下水道事業(中部流域下水道、中城湾流域下水道、中城湾南部流域下水道)がある。埼玉県のような大都市圏の流域下水道と比べると規模は小さいものの、複数の市町村から排水を集めて処理するというマクロな構造は同じだ。県全体の人口規模が小さいうえに地域差が大きく、離島や郡部では人口減少が進んでいる一方で、都市部では観光需要などによって一定の水使用が維持されている。こうした地域特性が、下水道の運営や更新計画にも色濃く反映される。沖縄県の流域下水道は以下沖縄県流域下水道計画図にある通り人口が密集する沖縄県の中部から南部に集中している。緑(中部流域下水道)、茶(中城湾流域下水道)、黄(中城湾南部流域下水道)で示されたところが流域下水道を利用している地域となる。

https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/012/490/01_r5hyoushi-gaiyouhen.pdf
導入可能性調査の結果
沖縄県が実施したウォーターPPP導入可能性調査では、全体の流域下水道のなかから西原処理区に焦点を絞り、令和10年度からの導入を目指す方針が示された。まずは最も規模が小さい処理施設・ポンプ場・管路を対象に、更新実施型という施設の更新も含む包括的な形でスモールスタートする構想だ。これは国庫補助要件を満たすうえでの現実的な対応であると同時に、PPPの有効性を検証する実験的な試みともいえる。

出典:ウォーターPPP 導入可能性調査の結果について 令和7年6月3日 沖縄県下水道事務所
https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/035/070/r6_feasibility_study_results.pdf


浮き彫りになった課題
ウォーターPPPで特に取り組みたい課題として、最重要(ランクA)とされたのは以下の3つだ。
①入札不調の増加
②維持管理情報を起点とした適切なストックマネジメントの実践
⇒ 点検・修繕の結果を反映したインフラ投資・維持管理計画の立案
③本来必要な建設改良費の確保が難しくなっていること
私は過去の記事で、日本の上下水道事業は更新需要のピークに突入していく中で「人口減少(顧客減少)と事業を支える民間人材の減少」という二重の制約を受けると書いた。だからこそ重要なのは、現状と将来を見据えながらインフラ投資・維持管理費を最適化すること。そして、その調整役=計画・設計を統括できる人材が最も早く不足するだろうとも述べてきた。
今回の沖縄県の結果は、まさにその懸念が現実の課題として表れた事例といえる。

https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/035/069/r6_wppp_survey_results_annex1.pdf
おわりに
沖縄県のウォーターPPP検討は、単なる補助金確保のための形式的対応ではなく、人手不足や入札不調といった切実な課題を背景にした挑戦といえる。まずは西原処理区という限定的な範囲でスモールスタートし、成功事例を積み重ねながら他の処理区や施設に広げていく狙いだろう。PPPの導入効果をどう検証し、インフラ最適化と人材不足対策をどう両立させていくのか。沖縄県の取り組みは、これから全国の流域下水道事業が直面する共通課題に対して、重要な示唆を与える事例になっていくと思う。
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